ASDと挨拶
学校では浮いていた。友達も全然いなかったし、先生からの評判も良い方じゃなかった気がする。教室の隅で薄ら笑みを浮かべている変な生徒だった。
社会人になってからも変わらなかった。
職場では浮いていた。仲のいい同僚もいなければ、上司からの評判もあまり良くなかった。仕事もできないし、雑談もできない。ボロボロだった。
ASDの人はコミュニケーションが苦手だと言われている。私ももれなくそうだった。
同僚と雑談はおろか報連相ができなくて、孤立していた時期があった。
メンタルクリニックの先生からは、努力することを求められた。
最初は反発した。
私は特性のせいでコミュニケーションに難があるのに、頑張るなんてできない、と酷く傷ついた。
最近になって、とある縁でコーチングを受けた。
そこでも、コミュニケーションをもっと頑張りませんか?と言われてしまった。
また、コミュニケーションか・・・
落胆しそうになった。
コーチングの中で、先生から、信頼を得るためにもコミュニケーションは大事ですよ、といった話を聞いた。
浮いていたのは、周りの人から信頼を得られていなかったのは、自分のせいだったのかもしれない。
年末のやる気に満ちた日のためか、私は、コミュニケーションをこれから頑張りますと、コーチングの先生と約束をしていた。
その日から、意識してコミュニケーションを取ろうと努力した。
まずは挨拶だった。挨拶なんて幼稚園児でもできるよ、と言われそうだが、私にはハードルが高かった。
私なんかが挨拶なんてしたら、気持ち悪いと思われると思っていた。
最近になってようやく、その気持ちを脇に置いて、自発的な挨拶ができるようになった。
もちろん完全ではない。できない日もある。
挨拶が対人関係に今更効果があるかは分からない。でも、少し前のオフィスの隅で薄ら笑いを浮かべてただけの私とは違う。
次は何ができるだろうか。
ASDの私でも、少し成長できそうな2021年の始まりである。