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愛するひとの名前を呼ぶ、その声を ~劇場版おっさんずラブについての一考察~
8月23日、この日をずっと待っていた。
田中圭が主演する『劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』の公開日だ。
作品との出会い
何だよ何なのよこのタイトル!!
正直、単発も連ドラも、タイトルで敬遠していた。
「おっさんずラブ」って、ダサいな(笑)
そう思ってリアルタイムでは見ていなかった。
しかし、放送が進むにしたがって、
「おっさんずラブが面白い!」
「田中圭がかわいい!」
といった声がSNSで聞こえてくるようになった。
田中圭を『図書館戦争』で知ったわたしは、田中圭主演か、いい演技するんだよなあ。おすすめしている人も多いし、ご飯食べながら見てみるか。
ということで見逃し配信でドラマ視聴。
主人公は不動産会社に勤めるモテないポンコツサラリーマン(だがしかし究極の人誑し)・はるたんこと春田創一(田中圭)。
彼に密かに(グイグイと)想いを寄せるヒロイン部長・黒澤武蔵(吉田鋼太郎)。
ひょんなことから春田とルームシェアすることになる後輩のエリートイケメン・牧凌太(林遣都)。
ストーリーはこの「おっさん」3人を中心に繰り広げられる。
(田中圭も林遣都も「おっさん」にはくくられないと思うけれど!!)
そう。好きになった人が、たまたま男だっただけ。
繊細な心理描写とぶっとんだコメディの要素が絶妙なバランスで散りばめられている、まさしく王道ラブコメディなのだ。
そして見事にハマり、あれよあれよと「沼」に落ち、現在に至る訳である。
OL(Ossan's Love)≒BLなの?
わたしはいわゆる腐女子ではない。
友人の中にはBLを愛する人もいたし、そういう作品があることも知っている。
(『クマとインテリ』は友人におすすめされて読んだ。名作。)
けれど、別に「男同士だから」と美化することはしない。毛嫌いすることもない。少女漫画と横並びで普通の恋愛モノとしてライトに消費してきたので、このジャンルに対する抵抗感も薄いが、理解も薄いと自覚している。
だからこそ、このドラマの世界観にハマったのだと思う。
おっさんずラブは、設定としては男性同士の恋愛を扱っているのでBLである。それと同時に、男女の恋愛ドラマでやってもおかしくないようなストーリーを、たまたま男性同士で表現している、王道ラブコメでもある。
だからちょっとずるいけれど、BLであってBLではない、普通の恋愛ドラマだと思っている。
ちなみに、おっさんずラブがヒットしたからといって、LGBTの問題がなくなる!とは思いません。依然としてこの国は「男と女」以外の恋愛のかたちには厳しいし、当事者にしか分かり得ない難しさがあると思います。実際、わたしの親はこのドラマを受け入れられないし、興味もないです。そういう人たちがいる、というのは分かっていても、身近にいたら受け入れられない、普通ではない、という感覚が勝るようです。世代や環境によって大きく異なるところだと感じています。
映画のみどころは、春田
(あれ、映画の話をする前に、1000字を超えてしまった…おかしいな……。)
ここからは多少映画の内容にも触れるため、映画やドラマをまだ観ていなくてネタバレダメ絶対!という方は読まないでほしい。
******
主人公の春田は、とにかく人の名前をよく呼ぶ。
「まきまきまきまきーーー!」
名前を呼ぶという行為は特別だ。
恋人やパートナーへの愛、家族への愛、仲間への愛。
人はみんな、名前を呼んで愛し合う。
名前を呼ぶことで、ただの他人だったところに、相手との関係性が生まれる。
映画のみどころは、間違いなく春田だ。
連ドラの中で春田は周囲の人間に流されながら、他人を愛することを知った。
それから1年が経ち、映画の中の春田はただただまっすぐに牧を愛している。
(「春田、成長したねえ」って泣いている。)
映画の中ではたくさんの事件が起きるけれど、春田が牧を呼ぶ声が「牧が好き」を物語っていて、その点だけは裏切られない。
それから予告にもあったが、映画の中で部長が記憶喪失になる。
それも、愛する春田の記憶だけ。
(え?二次創作の設定かよ!って?)
春田の記憶をなくした部長は、彼を「はるたん」とは呼ばない。そしてそのことに彼はひどく動揺する。
呼び名、愛称、ニックネーム。
他人との関係性によって、名前は形を変える。相手を何と呼ぶかは、その相手との関係性の象徴でもあるだろう。
その効果を十分に感じさせてくれる作品である。
春田と牧は無事に幸せな家族になれるのか?
部長の恋は?記憶はどうなるのか?
その辺りは劇場でお確かめいただきたい。
エンドロールが終わるその最後の最後まで、ぜひ。
……と、名前と愛の関係に思いを馳せるものの、この映画は100%全力で大人がやりたいこと妄想したことぜーーーんぶやっちゃいましたコメディ要素つよめラブコメ!ご都合主義もお約束のあれやこれやもどんとこいのエンタメ!!!である。
吉田鋼太郎の喜劇俳優っぷりが遺憾なく発揮されているし、田中圭も林遣都も表情の演技が素晴らしく、感情の揺れ動きが伝わってくるし、楽しく観賞できるので安心して観てほしい。
本当にこれで完結なの?
映画を観たあと、物足りなく感じていることがある。
それは、
え?これで終わり?
ということ。
正直なところ、映画のストーリーは怒濤の勢いで、風呂敷をたくさんたくさん広げているのに回収しきれていない部分があまりにも多い。
ドラマを見ていないひとには補完ができない部分が多く、ついていけないのではと思う。
連ドラではあれだけ各キャラクターの心理を繊細に描いてくれたのに、映画ではそれがあまり感じられなかった。
(時間も構成も、ドラマと映画ではぜんぜん違うのは理解できる。)
できることなら、連ドラのような感情の動きが見える作品を、もう一度観たいと思ってしまう。
|д゚)チラッ (観たいなあ……)
好きなものを語るときりがないのでこの辺で。
書き出してみると、違う切り口で文章が書けそうだなと感じたので、またチャレンジしたい。
【結論】
何だかんだ言いつつもあと2、3回は観ると思う。
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![竹野まいか](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/30635707/profile_41d66eb13ddd1d5d4915c08378607fb3.png?width=600&crop=1:1,smart)