少し前のことが昔のように
火曜日からさらにこのロックダウン状態の人々の生活に厳しい規制が加わった。
フランスでは週に定期的にマルシェ(市場)が街中にたつのだが、もうそれも禁止となってしまった。
また、ちょっと散歩をするのも一人ずつ、一日一度、家の周辺1キロ以内という厳しい内容に。
子供達を連れて毎朝少しだけ外に出て歩くのだが、そもそも一軒家の多い私たちの暮らす町は死んだように静か。8月にフランス人たちはこぞってバカンスに行ってしまうのでその時期には町がとても静かになるのだが、今はみんな家にいるはずなのに8月以上の静けさ。ちょっと世紀末のような雰囲気。
たまにすれ違う人たちも、わざわざ歩道を変えて歩くなど、絶対に触れ合わないし、話もしない。遠くに見える人もいかついマスクをしていたり。
たまに反対の歩道を歩く人と目が合い、笑顔を交わせるとホッとしたりする。
今日はスーパーで、とっても神経質になっているおじいさんがいた。2メートル以上の間隔とって並んでいるのに、向こうに行ってくれと大きなジェスチャーをされる。彼の横をふと子供が走る。すると彼は顔を真っ赤にして「Je vais la tuer 殺すぞ」と言っているのまで聞こえる。
おじいさんがいなくなってからレジのお兄さんに、すみませんと謝られる。いや、あなたのせいじゃないし、もうこんな状況だからこうなってしまう人もいますよね。と。このレジのお兄さんにいっぱい働いているの?と聞くと「そうですね、特にこんな状況になってしまったからいつも以上に」との回答。
人とと笑顔を交わしたり、会話をしたり。そんな当たり前にしていたことが遠い昔のことのように思える。
たったの1週間だけれど、前のように賑わっていた町のメインストリートは昔の思い出のような気がしてしまう。
誰もが、人とすれ違うことを気まずく感じている。なるべく早足に通りすぎ、お店を出たらすぐに消毒液で手を洗う。
SFの世界か、あるいはみんながみんなある日突然潔癖症にでもなったかのようだ。
ほんの数週間前の話が、予定が、町の雰囲気が、すでに昔の話のような気がしてきている。こうしてあっという間にこの特殊な状況にも私は慣れていくのだろうか。
そもそも、慣れるってなんだろう。