大腸がんにならないために特に重要な2つのこと【患】#142
こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr.Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。
緩和ケアは患者さん、ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。
今日のテーマは「大腸がんにならないために大切な2つのこと」です。
動画はこちらになります。
「大腸がんが心配だ。」
「がんの予防には、生活習慣が大切だと聞くけど、なかなかやる気が起きない。」
と思っている方は多いのではないでしょうか。
確かに、大腸がんの予防のためには、生活習慣をよくすることは大事です。例えば、適度な運動、アルコールを控える、肥満の予防などがよく言われていることです。
しかし、これらはすでに色々な方がお話していますので、今回はあえてそれ以外の、私がオススメする、大腸がんの大切な予防2選をお話します。ぜひ最後までご覧ください。
今日もよろしくお願いします。
大腸がんの予防 必須の2選
結論から申し上げます。
今回お話する、大腸がんにならないための特に重要な2つのことのうち、まず1つ目は腸内細菌の改善です。腸内細菌を善玉菌にする食生活が重要なカギです。
2つ目は検診です。特に家族や近い親せきに大腸がんが多い人は要注意です。その場合、定期的に大腸ポリープの有無をチェックすることが重要なのです。
もう一度まとめます。
1. 腸内細菌を善玉菌にする食生活
2. 定期的な検診
この2つが大腸がんの予防には必須です。それでは細かく解説いたします。
腸内細菌があなたを救う
善玉菌と悪玉菌
腸内細菌には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌と呼ばれる3種類があります。
善玉菌は、私たちの健康に役立つもので、乳酸菌やビフィズス菌などが有名です。悪玉菌は大腸菌やクロストリジウムなどがあり、腐敗物などを作り、有毒物質を発生させます。日和見菌はその名の通り、どちらにもなり得る菌のことです。
生まれて間もない乳児のときには、善玉菌のひとつであるビフィズス菌が95%以上を占めています。一方、成人では15~20%、老年期になると数%にまで減ってしまう人も少なくありません。
悪玉菌が増えると、発生する有毒物質も増え、そのことで腸そのものの免疫力が低下します。それだけ発がん物質への抵抗力も弱まり、大腸はポリープやがんのできやすい環境になってしまうのです。つまり、悪玉菌が多いとがんになりやすいということです。
大腸に悪玉菌が増えると、便が黒く、かつ臭くなる傾向がみられるので、そういう方は要注意です。ぜひ、セルフチェックしてみてください。
先ほど述べたように、大腸の中に悪玉菌が多いとがんになりやすいのなら、大腸の中の悪玉菌をできるだけ減らすことができたら、大腸がんの予防につながりますよね。では、どうすれば悪玉菌は減るのでしょうか?
それは、大腸内に善玉菌を増やし、酸性の環境にすることです。実は、悪玉菌は酸性の環境が苦手です。善玉菌は乳酸や酢酸、酪酸などをつくり、腸の中を弱酸性にします。つまり、善玉菌の作る、酸性の環境が悪玉菌そのものを減らしていくのです。それだけではなく、善玉菌には悪玉菌のつくる有毒物質を無害化する働きがあるのです。大腸の中の悪玉菌を減らすためには、善玉菌を増やせばいいのですね。
善玉菌を増やす食べ物
悪玉菌を増やす食べ物の代表が、肉類などのタンパク質です。そして、善玉菌を増やす食べ物は、食物繊維を多く含む食品です。
食物繊維は、胃や小腸では分解されずに、そのまま大腸に届き、善玉菌の餌になります。大腸がんを防ぐには、肉類を減らし、食物繊維を多く食べればよいというのはそのためです。
実は、こういった大腸がんになりにくい、食物繊維たっぷりの食生活の代表は、昔ながらの日本食なのです。昔の日本には、大腸がんは非常に少なかったのです。しかし、戦後、食生活が欧米化し、肉類を多く食べ、野菜、穀物を食べなくなってきたことが、大腸がんが増えた最大の原因なのです。
食物繊維を多くとれるのは、玄米、コンニャク、大豆・インゲン豆などの豆類、キノコ類、切干ダイコン、ゴボウなどの根菜類、海藻類などです。どれも昔から日本人が多く食べていた食材です。
発酵食品も善玉菌を増やします。ヨーグルトやキムチなども良いと言われていますが、もともと日本にも伝統的な素晴らしい発酵食品があります。味噌、醤油、日本酒、酢、みりんなどは、麹(こうじ)によって発酵させた調味料です。
また、納豆や漬物、鰹節なども日本が誇れる発酵食品です。これらの食品を毎日食べることが、腸内環境を整えるためには欠かせないと思います。
私も納豆にキムチを混ぜたものをほぼ毎日食べています。生活習慣の改善が難しいと思っている方でも、このような発酵食品を食事に取り入れてみられてはいかがでしょうか。
酪酸菌とフラクトオリゴ糖
最近では、善玉菌の一種である酪酸菌がとても注目されるようになってきました。
酪酸菌がつくる酪酸が、がんの予防に役立つことが証明されたからです。酪酸は、免疫を活性化する効果があるだけではなく、がんの発生も抑えることもわかりました。
酪酸菌の餌になるのは、フラクトオリゴ糖です。フラクトオリゴ糖は食物繊維のひとつで、ゴボウやキクイモ、ネギや玉ねぎ、ニンニクなどに多く含まれています。
大腸がんの予防のためには、意識して取るようにするといいでしょう。
フラクトオリゴ糖のサプリメントもありますので、それらを利用することも悪くはないと思います
大腸がんは特に検診が重要
次に大腸がん検診のお話をします。
なぜ大腸がん検診が必要なのでしょうか。大腸には良性の腫瘍である、ポリープがよくできます。通常、良性の腫瘍はがんにはなりません。しかし、大腸にできるポリープは、大きくなるとがんになることが多いことがわかっています。
1㎝程度のポリープをそのままにしておくと、5年以内にがんになる確率が非常に高いのです。がんになる前の良性のうちに取っておくことが、がんを予防することになります。
特に遺伝的にポリープができやすい人は、定期的な検査が必須です。なぜなら、大腸がんの人の10人に1人は遺伝 だと考えられているからです。
遺伝するタイプの大腸がんは50%の確率で子どもに遺伝します。誰に遺伝しているかがわかればいいのですが、現在の医学ではまだそれはわかりません。ですから、家族や近い親戚で大腸がんの人がいる方は、積極的に大腸がん検診を受けることをお勧めします。
検査法としては、内視鏡の検査があります。また最近では、苦痛を伴わないCTによる検査もできるようになっています。小さいポリープだと、大腸内視鏡を用いて、ポリープを取ることができます。おなかを開けたりする必要がなく、1泊程度の入院で可能です。
大腸内視鏡検査は一般的に苦しいとか、痛かったという方が多いです。これには理由があります。
1つは腸の形や長さです。腸が長かったり、手術や帝王切開などで腸が癒着したりすると、内視鏡が入りにくいので、痛みを感じる人が多いからです。
もう1つは検査をする医師の腕の差です。あまり大きい声では言えませんが、大学病院は避ける方が良いかもしれません。若い不慣れな医師が内視鏡検査を行うことが多いからです。
では、どうしたら腕のいい医師に出会えるか、皆さん知りたいと思われるでしょうが、残念ながらこれといった方法はありません。一般的に大腸の専門医のいる病院で、口コミなども調べて、腕の良い先生を探すしかありません。
ぜひ患者力を発揮してください。
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