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【患】がんの痛みを主治医に正しく伝えるためのポイント#82

こんにちは、心療内科医で緩和ケア医のDr. Toshです。緩和ケアの本流へようこそ。

緩和ケアは患者さん、ご家族のすべての身体とこころの苦しみを癒すことを使命にしています。

今日のテーマは「医療者とのコミュニケーション~痛みの伝え方~」です。

動画はこちらです。

がんの痛みは多くのがん患者さんを悩ませます。痛みがあると、患者さんの生活の質を大きく下げてしまいます。

緩和ケアでは、こうしたがんの痛みを取り去ることは大きな使命のひとつです。でも、医療者に痛みをどう伝えたらいいの、と言われる患者さんも、結構いるのではないか、と思います

この記事では、自分の痛みを医療者にどう伝えたらよいか、伝え方のコツをお伝えしようと思います。

この記事を見て、医療者に自分の痛みを上手く伝えられて、がんの痛みの緩和ができ、また元通りに笑顔になれる患者さんが増えればうれしいです。

本日もよろしくお願いします。


がんの痛みは我慢してはいけない

始めに、1番大切なことをお伝えします。

「がんの痛みは我慢してはいけません。少しでも痛みが出たら主治医に伝えてください。」

がんの痛みは、がん患者さんを苦しめる症状のうち、トップに来るくらい、つらい症状と言えます。がんは周りの組織や、臓器を破壊して、無尽蔵にどんどん増殖します。多くの場合、その時に痛みが発生します。それを我々はがん性疼痛と呼んでいます。

日本人は昔から我慢することは美徳であると考え、多少の痛みは我慢するものだ、と教えられてきました。こうしたがん性疼痛も多少は我慢すべきだと思う方も、少なくありません。年配の方では今も結構いらっしゃいます。

しかし、こうしたがん性疼痛は我慢しても良くなりません。よくならないどころか、我慢していると、痛みはどんどん増していくのです。

なぜなら、痛みなどの感覚刺激は、刺激を受ければ受けるほど、敏感になる性質があるからです。

例えば、味覚や嗅覚を考えてください。ワイン鑑定士や、香料調合士などは、毎日味覚や嗅覚を鍛えていますよね。そうすると、普通の人では分からない、味や匂いもわかるようになります。

痛みも同じなのです。痛みを長時間受けていると、痛み刺激にとても敏感になってしまうのです。

ワインや香料のプロならいいですが、痛みのプロにはなりたくありませんよね。なので、痛みは早く取ってしまうことが大事なのです。

痛みは我慢してはいけません。

今では、様々な方法によって、ほとんどのがんの痛みを緩和することが可能になっています。がん性疼痛は、しっかりとってもらいましょう。

また、痛みに対する感覚は個人差があり、本人にしかわかりません。どんな名医でも、本人からの説明がないとその人がどんな痛みを感じているのかを知ることはできないのです。

患者さんが自分の痛みを訴えない限り、私たち緩和ケア医も痛みの治療ははじめられません。医療者に痛みが出ていることを伝えることでがんの痛みの治療が始まります。しっかり、自分自身の痛みを医療者に伝えてください。


痛みの上手な伝え方

そうは言っても、どのように医療者に正しく自分の痛みを伝えたらいいの?と思う方も多くいるのではないでしょうか。

それでは、今からそのことについてお話します。

まず大事なことは、痛みによって、どれほど自分の生活が障害されているかです。

痛みで寝られない、仕事や家事が難しくなった、家から出られない、といった生活の質がどれくらい障害されているかについてお話ください。そして痛みについて思っていること、感じていることもお話ください。

「痛みがひどくなるということは、病気が悪くなっていることなんじゃないの?」

「痛みがつらくて、死んだ方がましだ」など率直にお話ください。

みなさんの思いを我々医療者は大事にします。

次に、痛みについて具体的な点をお伝えください。痛みはいつごろから感じているのか。先週から、月曜日から、今朝から などです。

具体的な部位も教えてください。右下腹部、腰のあたり 、左胸全体などです。

痛みの範囲も教えてください。指先で指せる範囲ですとか、手のひら全体くらいです、とか、太ももの表面全体です、などです。

どのようなときに痛みを感じるかも教えてください。1日中痛むのか、普段はそうでもないけれど、寝返りをうったり、起き上がったときに痛むとかです。あるいは、普段は痛くないけど、予告もなく急に痛くなることがある、ということ、それもしっかりと伝えてください。がん性疼痛には、そのような痛みもあります。

難しいかもしれませんが、痛みの性質も言葉で表現してくれればありがたいです。
例えば、しめつけられるような、刺すような、うずくような 、ヒリヒリするようなとかです。

最後に、痛みの強さについて、数字で表すことも大切です。具体的には、痛みを0から10点まで11段階で評価します。全く痛くないのを0点、考えられる最高の痛みを想像してもらって10点とします。なぜ痛みに点数をつけるかというと、痛みの度合いを治療チームで共有し、治療に活かすためです。もう1つは、痛みの治療がどれくらい効いているかの目安にするためです。

例えばこのように伝えてください。

1週間くらい前から、みぞおちがなんとなく重たく感じるようになって、一昨日には、ずーんと押さえられたように痛みが出てきました。だいたい、1日中痛いです。特に夜は痛くて、何回も目が覚めてしまいます。痛みがだんだんひどくなってきている感じがして、不安です。痛みの強さは、痛くなり始めたときは2点くらいでしたが、今は7点くらいです。夜には10点くらいになって全然眠れないときもあります。

という具合です。

このようなお話を聞いて、私たちはがん性疼痛の性質、鎮痛薬の種類を考えていきます。

以上、お話ししたポイントをまとめますと

①生活にどれくらい支障が出ているか
②痛みはいつごろから感じているのか
③痛みの具体的な部位
④痛みの範囲
⑤どのようなときに痛みを感じるか
⑥痛みの性質
⑦痛みの強さを数値で伝える

①~⑦までのポイントを事前に時系列で紙に書いてまとめたものを主治医に渡すことも、大切なポイントです。

がんの痛みを伝達するためのチェックシートを概要欄に貼っておきますのでダウンロードしてお使いください。

以上、医療者への痛みの伝え方について話してまいりました。 

がんの痛みはあなたにしかわかりません。痛みは我慢してはいけません。上手に医療者に痛みを伝えることで、的確な痛みの治療が始まります。

ぜひ、実践してみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

私は、緩和ケアをすべての人に知って欲しいと思っています。

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Dr.Tosh /四宮敏章
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