第248話 カッコいいジジイ その③【左でも速球を投げるジジイ】
10年以上もまえのことだが、ピッチング練習がしたくなった時期がある。草野球チームに誘われたのだが、やるならばピッチャーがいい。
だが僕は、ピッチャーの経験がない。中学では野球部だったが、控えのセカンドで、かつ、正スコアラーだった。ただ僕は、コントロールが良かった。そして密かに、ピッチャーに憧れていた。
中年のオッサンたちの草野球の場合、ストライクを投げられるのならば、それだけで充分に、ピッチャーが務まると知っていた。
壁に投げたい!
コントロールを磨きたい。なんならついでに、球威もつけたい。
僕は、ボールと、そしてグローブも買った。黒の、カッコいいグローブだ。
しかし、そうそう、ちょうど良い壁などは見つからない。壁はあっても、ボールを投げつけたら苦情がくる所とか、道路などで、投げる行為がふさわしくない所とか、結局、適当な場所は見つからなかった。
そうこうして、何年も過ぎ、僕は、野球部の友人に、グローブをあげた。「もう使うことはないな」と思ったからだった。
◆きっかけ① 『おおきく振りかぶって』
『おおきく振りかぶって』は、ひぐちアサさんが描いているマンガだ。コミックで30巻以上あり、最近までは全巻揃えていた。
ひぐちアサさんを知ったのは、【内観研修】で、栃木県にある研修所に行ったからだった。そこに、ひぐちさんも、内観をしに来たらしい。研修所の方が「アサちゃんのマンガ、おもしろいのよ~」と教えてくれたのだ。
このこと(内観研修)は、また、別の記事にしよう。
その、マンガの中で、「人間の身体には【偏りが生じる】のも」「その偏りが、パフォーマンスを下げたり、ケガの原因になる」と言っていた。
そしてコーチは、主人公のピッチャーに、「右で投げ込んだら、左でも投げろ(シャドーピッチング)」とアドバイスするのだ。
ほう、と思った。これがきっかけの1つ目だ。
◆きっかけ② 武井壮さん
武井壮さんの自論が、めっちゃ説得力があった。
武井さんの理論は、
「自分の身体をイメージ通りに動かせるようになること」
「これが超重要」「イメージと実際の動きにはギャップがある」
「イメージ通りに身体を動かせることができるのならば、最高の動きを見てイメージに焼き付ければいい」引用:じょーじの記憶(武井壮さんの発言)
というものだ。
武井さんは、10種競技の日本チャンピオンだ。だが、それぞれの競技を練習するのではなく、各種目のトップアスリートの【動き】を見て、そして脳に焼き付けた。
武井さんが行っていた練習のほとんどは、【自分のイメージ通りに自分の身体を動かす】というものだ。個々の競技の練習ではない。
武井さんが例として挙げるのは、「手を水平に上げてみて」という動作で、これは、大抵の人が、やや上に手を上げてしまうらしい。
武井さんは、さまざまな動きをして、それをビデオでチェックして、イメージと現実の【ギャップ】を修正するということを、延々と行なったらしい。
言うなれば、【自分の命令通りに動く身体】を作ることを、最優先したのだ。
これができれば、例えば、棒高跳びの最高パフォーマンスを見ただけで、それをマネできるという理論だ。
そしてこの理論で、10種競技、別名デカスロンの日本一に輝いたのだ。
僕は、納得し、そして感動した。これが、きっかけの2つ目。
◆きっかけ③ 野球ボールを拾った
懸垂をする公園に、野球ボールが2個も落ちていた。
誰かが忘れたのだろうか?
次の日も、また、次の日も、ボールがある。これが、きっかけの3つ目。
◆きっかけ④ 公園に壁がある
この公園には、大きな壁があるのだ。
壁には、サッカーのゴールがペイントされている。おそらくは『無人ゴール』なのだろう。
ただ、1つしかない。そこは謎だ。
そして、しばらく毎日のように、この公園にきているが、早朝は、子どももいない、静かな公園なのだ。散歩の老人が通ったりする程度なのだ。
壁は、分厚いコンクリートの壁だ。木の壁とは違って、ボールの当たる音も大きくない。
これが、きっかけの4つ目。
◆きっかけ⑤ 記憶
まえに、母ちゃんが、「兄弟の中で、ひとり左利きがいて、一生懸命直したんだよ~」と言った。
僕は、うっすら、左手での行為を矯正されている記憶があるのだ。また、弟たちがそうだった記憶はない。
(ちなみに5人兄弟。上から、姉、僕、コージ、ミッチ、妹)
僕は、小、中学生の体力測定では、握力は常に左が強かった。腕相撲も左が得意だったし、高跳びの踏切も、みんなとは逆の脚だった。
これが、きっかけの5つ目。
こうして、僕は、『左でのピッチング練習』に挑むことになった。
◆動機
めっちゃ不純だ。ゆかりちゃんや、娘や、その他、美しい女性たちに、
「凄~い!」「キャー!」
って言われたいのだ。
53歳で、まあまあの速球を投げても、「ふ~ん」だろう。
ところがだ。なんと左でも、それと同等の速球を投げたなら? こんなヤツ、僕は見たことがない。
美女が「キャー!」って言わないなら、僕が自分で「キャー!」って言ってやる。
そんな快挙だと、僕は思っている。
◆女の子投げ
いざ、左で投げると、ボールはあらぬ方向へ飛んで行く。
ちなみにボールは、パクっていない。お借りして、ちゃんと公園に置いて帰った。木の枝の股に挟んで。
でも、数日後、ボールがなかったので、ちゃんとAmazonで購入した。今はマイボールでの練習だ。
さて、左でのピッチング練習だ。
サッカーゴールの大きさ以上の、大きな壁なのに、その壁に当たらないほどのノーコンなのだ。
なので、最初は、いわゆる『女の子投げ』から始めた。恥ずかしいが、致し方なかった。
たまに、誰かが通ると、(いや、これ、左なんです)って言いたくなる。通りがかった人は、どうでもイイのだろうけども、僕は弁解したくなる。
だから、ときどき、右でビシッ!っと速球を投げた。
(ほら、右ならまともなピッチングができるんです)というアピールだ。
無意味と知りつつも、ときどき右投げを織り交ぜた。
◆現状
キャッチボールレベルなら、コントロールは問題ない。
しかし、まだ、強い球が投げられない。思いっきりなげると、ボールはあらぬ方向へ飛んで行く。
◆気づいたこと
速球を投げるには、手首のスナップが大事ということ。
本格的に野球をしていた、娘の彼氏は「ひじが重要」と教えてくれた。「なるほど~」と分かったようなリアクションをしたが、まだ、そのレベルに達していない。
ひじの使い方の、良し悪しは、いまだに分かっていない。
コントロールには、指、特に【中指】が肝心だ、とわかった。
強い球を投げるには、リリースポイントをできるだけ前にすべき、というのも体感した。
◆効果
身体の動きを意識するから、右投げにも効果がある。
たぶん、今、右では140キロぐらい出ていると思う。(じょーじのイメージでの計測)(中学生では手が出ない速さ (イメージ))
そして、確実な効果が、【肩がグリグリ言わない】だ。これは現実だ。
肩を回すだけで、グリグリ音がしていたのだ。
それが、右も左も、まったく音がしない。「大人になると、肩より上に手を上げることが極端に少なくなる」と、テレビで聞いたことがある。それが、肩こりや50肩などの原因でもあると。
今、肩こりしているのか、いないのか、ちょっとわからないけども、肩を回しでも「グリグリ」とか「ゴリゴリ」と言わないのは、けっこう気分がイイ。
◆気楽で気長
この挑戦には、期限がない。
2年後でも、5年後でも、いつでも良いのだ。だから、めっちゃ気楽だ。
続けて行けば、いつかは、左も右レベルにはなる。そう思える。万一、ならなかったとしても、ぜんぜんヘッチャラだ。
そのときは、そもそも左利きのフリをして、左で投げる。そして、しばらくして右で投げて、
「え~!? 右でも投げれるの~? しかも、右、速い!」
という、あざとい方法で賞賛を狙うだけだ。
◆〆
今日の、ゆかりちゃんの感想は、
「たかが左でボールを投げてるだけで、それにしては、この記事、長すぎる!」
って、そんなところだろうか。
僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのだ。
◆昨日の記事の訂正文
昨日の記事に
そして、【僕のお腹が6パックに割れ、ゆかりちゃんが自分の下っ腹に、強いコンプレックスを抱いてしまう】という現象に、僕は心を痛めている。
と書いた。
これは、「先々そうなってしまうなぁ」、「そうなったら、ゆかりちゃんに悪いなぁ」という、そういう意味だった。
が、
コメントでも「6パック凄いっすね」と来てしまった。
完全に、僕の書き方が悪かった。
お詫びして訂正する。ごめんなさい。
ちなみに、このコメントだけだったなら、このような訂正文章は書いていない。
昨夜、入浴中に記事を読んだゆかりちゃんが、怖ろしい剣幕で、僕を問い詰めたのだ!
「じょーじ! あんた、6パックちゃうからね!」
「もう、お腹、出てないかもしれないけども、6パック、ちゃうやん!」
「どこが6パックやん!」
「あ、そ、それは・・」
「見せろ!」
「今、見してみ!」
致し方なく、お腹を見せたじょーじ
「ちゃうからね!」
「ふん!」
「・・・」
とまあ、もの凄い剣幕だったのだ。
ゆかりちゃんが怒り狂ったのは、ゆかりちゃんは、ひと言も触れなかったけど、(下っ腹)だな、と、僕は察した。
これは、訂正文を出した方が良い(面白い)なぁ、と、そう思ったので、ここに書いた。
※ カーネギーの教えって、正しいなぁ。「相手の誤りを指摘してはいけない」って、ホントだなぁ。
ゆかりちゃんは、また怒るかもしれないが、でも、おもしろいから許してくれるだろう。
僕は、そんなゆかりちゃんが大好きなのだ。