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娘をド叱ったら、「どの口が言う~!」と、メッチャ面白かった

娘が大学3年生か4年生だった。
5~6年前かな。

ゆかりちゃんと話し合って、「娘を叱ろう」という結論に至った。
叱る理由は、

①EXILEの弟分のライヴに嵌りすぎて、出費が異常になった
②そのせいで、【愛の母親無利子ローン】の返済までもが滞っている
③「友達の誕生会」などと、嘘をついてライヴに行くようになった

という、3点だった。

特に、③がマズイ。

僕とゆかりちゃんは同じ思いだった。①と②だけなら、ゆかりちゃんの小言だけでイイと思っていたが、ちょっと度が過ぎる。


「じょーじが叱ると怖すぎるから、私が叱るからね」
「ホント? 叱れる?」

「大丈夫! じょーじのは、マジで怖すぎるから、やめてね」
「おお…。了解」


娘を叱る決行日になった。
僕は、日時を明確にして、先延ばしできないようにしたのだ。

決行の時刻。
ゆかりちゃんが口火を切った。

「るう。ここに座って」(ダイニングテーブルを指している)
「え? なに?」と娘。

僕は、リビングのソファーで読書(の振り)をしていた。

「いいから座って」
「う、うん」

娘は、氷を食べていた。
氷を食べながらの会話だ。

ちなみに、僕なら黙る。
「なに?」って聞かれたら、「口の中の氷がなくなってから話す」という。つまり、真剣な話なんだと、態度で訴える。


しかし、ゆかりちゃんは、そのまま叱るつもりだ。

娘は、片膝を立てた。
片方の膝がテーブルより上にある。

ゆかりちゃんは、これも、そのままにして叱るつもりのようだ。


さて、ゆかりちゃんが全力で叱った、……みたいだ。

「るうちゃん。お母さんは、哀しい」
「は?」

おいおい、それ、叱ってんの? 
娘は「は?」って言ってるし…。
そりゃ「は?」って、言うよな。


「お母さんは、哀しいの」
「なにが? ガリガリ、ボリボリ」と、娘の口の中で氷が噛み砕かれる。

「あなた、最近、ライヴに行き過ぎよ」
「あ~あ、それかぁ。ガリッ」姿勢は猫背で片膝は立てたままだ。そして、ゆかりちゃんの目は見ない。コップの中の氷を見ている。

「それに、ウソまでついて。お母さんは、それが哀しいの…」
「は? ウソ? ウソって? ガリゴゴッ」

哀しいって、なに? 
あと、娘よ。人と話をするときに氷を食うな。しかも殊更に音まで立てて。
人と話をする時に片膝を立てるな。
そもそも足の爪を切る以外で、そんな恰好をするな。


「○○に行ったって言ってたけど、その時ライヴに行ってたんでしょ」
「あ~ぁ? いや、そんなことはないよ。ガリッ、ガゴゴ」

「ウソ。だって、どうのこうの(証拠的めいたこと)で、ああでこうで…」
「ああ、いや、それはそうじゃなふて~」

娘よ。氷のせいで、ちゃんとした発音になってないじゃないか。
ダメだこりゃ。変わろう。


「変わる」
と僕は言って、ソファーから立ち上がった。

ハンカチで目や鼻を押さえているゆかりちゃんを、隣のイスにずれてもらった。

僕が、るうちゃんの正面に座った。

「ゆかりちゃんが真剣に叱ってんのに、なんだ!
 氷なんか食べて!」

テーブルを「バン!」と手のひらで叩いた。

僕は、るうちゃんを睨んだ。(ギロッ!)
ゆかりちゃんへの態度の悪さに、僕は本気で腹を立てていた。

「片膝も、ずっと立てたまんまじゃないか!」

娘は、僕を睨み返す。
膝は降ろさない。
そして、無言。

「どこに行ったとか行ってないとか、細かいことはどうでもいい! 
 嘘とか誤魔化しが、上手くなんか、なって欲しくない!
 この状況を放って置くと、るうちゃんは大人をめてしまう。
 チョロイもんだと思ってしまう。
 るうちゃんの今後の人生に、プラスには絶対にならない!
 マイナスになる!
 自分でも、改めた方が良いと思っていることは、ちゃんと改めなさい!」

娘は、途中から目に涙を浮かべていた。
それは怒りの涙に見えた。

僕は、真剣に腹を立てていたので、最後まで真剣に怒った。

僕の声のボリュームは、少しだけ大きかったけど、しかし、決して怒鳴り散らしたワケではなかった。
可能な限り短く持論を訴えた。強く持論を訴えた。


僕が、言いたいことを言い終え席を立つと、ゆかりちゃんは、娘を抱きしめに移動した。
娘はゆかりちゃんに抱きつき、「よしよし」とされながら、泣きながら僕を睨み続けていた。


その後、僕は、(嫌われたよなぁ~)と、実は1人ヒッソリと凹んでいた。
こっそり、ドーンと、凹んでいたのだ。


翌日。

「じょーじ!」と、るうちゃんが明るく、普通に話しかけてくれた。
アッケラカンと。

僕は、メチャクチャ嬉しかった。


それから半年か1年かが経って、3人での食事中に、僕はゆかりちゃんのマネをしてみた。

「る~ちゃん、お母さんは、哀しい! 哀しいの」

るうちゃんは爆笑した。
ゆかりちゃんは苦笑いした。

「やめて~! 恥ずかしいから、やめて~!」と、ゆかりちゃんのリアクションが最高だった。

このマネは、我が家の鉄板ネタになった。
つい最近、なんと娘がこのマネをした。

メッチャ面白かった。





おしまい


※この記事は、エッセイ『妻に捧げる3650話』の第1490話です
※この記事は、過去記事の書き直しです
※僕は、ゆかりちゃんが大好きです

PS. 僕のKindle本 ↓『いいかい、タケルくん』【考え方編】です。


読むと、恋人ができてしまう自分に変わります。
恋愛とは、若者だけのものではありません。

人生100年時代。
40代、50代、60代、70代でも、恋愛って必要です。(僕の主観です)

そばにいるパートナーは、誰にだって必要ですよ。(僕の感想です)
「考え方」ですから、若者だけでなく中年にも参考になります。
もちろん若い男性には、モロ、参考になります。

女性にも参考になります。
【男の思考】が詳しく書かれていますから。
「男性って、そんな考え方をするんだぁ」と、きっと参考になります。

ご一読いただけたら幸いです。



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奈星 丞持(なせ じょーじ)|文筆家
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