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つらつら紅葉の旅日記、day3写真いっぱい五色沼。〜水墨の秋元湖、大幻想の五色沼、雪の吾妻小富士と浄土平〜


紅葉の旅、3日目(10/25月)。
今日はついに待ちに待った、
五色沼です。
feat.秋元湖、吾妻小富士。

朝5時。
今季一番の寒さ。

まずは
朝日スポット「秋元湖」に向け
車を走らせます。

「霧がすごいね〜」
「ね、結構、濃いね」

視界全体が霧がかっています。
今日は本当、寒そうだなぁ。
 
ホッカイロを4枚貼り、
あらゆる防寒着を身につけて
朝焼けに備えます。
 
駐車場に着き車を降りると、
一気に全身に冷たさが巡ります。

「冷えてる〜」
「耐えれるかしら〜」
 
少し歩き、坂を登ると…。

 
「わっ」
「わっ!」

「何これ、すごい」
「すごいね…」


そこには
霧の中に浮かぶ水墨画のような
景色が待っていました。

白黒の世界。
なのに涙が出そうなほど、
美しい。

ここ、湖なの?
でも、
たしかに水面にうつる影。
まるで墨で描いた絵を
二つ折りにして広げたよう。
 
「きれい…」
 
何度もその言葉が漏れます。
まるで
湖が雲に包まれているみたい。
 
「この景色、
生まれてはじめて見たよ。
すごいね、感動だね。」
 
「ね。」

言葉で表現できない
神秘的な物語が
今、この瞬間を包んでいます。
 
「本当、知らない景色が
まだまだ、まだまだあるんだね。

寒いけど、今。
今だからこそ、
見れる景色なんだよね。」
 
「そうだね」
 
「耳男くん、ありがとう」

また涙が出そう。
知らない景色を
たくさん見せてくれる
耳男くんに感謝です。

それから1時間、
秋元湖の周りを歩きながら、
朝日の登場を待ちました。
 
周りの写真家さん達も
静かに
はじまりの光を待ちます。
 
しかし。
日の出から30分経っても
太陽は姿を現しません。
 
どうやら霧があまりにも濃く、
今日はここから日の出を拝むことは
難しいよう。

写真家の方たちも
次第に帰っていきます。
 
「今日は厳しそうだね。
パン子、
この景色を見れただけで充分だぁ。
またいつか見に来よう。」
 
耳男くんは私に朝焼けを
見せたかったみたいで
名残惜しそう。

「そだね」

こんなにも美しい朝がある事を
生きてる間に知れて
本当によかった。

車に戻ると、
芯から身体が冷えていることに
気づきます。
 
暖房を効かせた車の中、
二人とも鼻水が止まりません。

コンビニで朝ごはんを買い、
体にガソリンを溜めます。
 
「よし、五色沼行こうか」

「うん!楽しみ〜!」

さあ、今回の旅のメイン、
五色沼へ出発です!
 
車を走らせると、

「あれ?めっちゃ晴れてるやん」
 
さっきまでの
霧の世界が嘘のよう。

朝日がキラキラと射しています。
私たちが知ってる日常です。
 
「やたー!晴れてる!」 

「嬉しいね!待っててね、五色沼!」
 

 
旅一日目の文頭で
その魅力を書いた、五色沼。

五色沼には訪れた人が
気軽に観光を楽しめるように、
「五色沼自然探勝路」という
ハイキングコースがあります。

今日はそこを探検します。
 
スタート地点は二つ。

・ビジターセンターのある「五色沼入口」
・物産館のある「裏磐梯高原駅」
 

互いにスタートであり、ゴールです。
どちらから行っても大丈夫で、
帰りはバスで戻ることができます。

なんとなく私たちは
「裏磐梯高原駅」から
スタートすることにしました。
(「五色沼入口」から行く人が多いと思います)

【代表な沼の名前】
柳沼→青沼→瑠璃沼→弁天沼→
みどろ沼→赤沼→毘沙門沼
 
物産館のある駐車場に着きました。

「わ〜、ワクワクする」
「あ、もうあそこに沼があるよ」
「ほんとだ、
めっちゃ近い!」

興奮気味に車を降り、
すぐそばにある沼に走っていきました。

すると…。

 
「わー!わー!
キレイ!めちゃくちゃキレイ!
すごーいーー!!」
 
大興奮。
 
「これが五色沼なのね!
会いたかったわー!」
 
耳男くんの存在すら忘れ、
あらゆる角度から沼を眺めます。
 
「ね、本当に鏡だよ。
水面に全景色がキレイに映ってる!
霧がすごい幻想的だね」

 
私たちが一番最初に出逢ったのが、
柳沼。
 
水の透明度がとっても高く、
空と紅葉が映し出された水面は
まるで双子の景色のようです。
 
その境目には湖沼霧が発生していて、
朝日のオレンジがかった光が
美しさに華を添えています。
 
きっとこれは早朝だからこそ
見られる風景。

「あっ!耳男く〜ん!
こっちの沼も見て〜!」


 「こっちの小さい沼は
朝日が映ってるよ〜。
キレイ〜!
鏡になる空がどんな表情かで
水面が全然違うね!」
 
「パン子ちゃん、よかったね」

ニコニコ微笑んでる、耳男くん。
 
「うん!まだ始まったばかりなのに
めちゃくちゃ楽しいよ!」
 
耳男くんも動画を撮ったり楽しそうです。
 
「よし、次行きますか」
「うん!」
 
平日の早朝に来たおかげか、
まだ人も少なく、
まるで貸し切り気分。
 
「わっ沼、また発見!」
 
「わっ!すごい〜!青い〜!」

「エメラルドグリーン?
コバルトブルー?
すごいよ!すごい!」
 
「すごい青いね!」
 
「しかも耳男くん、よく見て!
霧に沼の色が映ってるよ!」

「ほんとだ。幻想的だね〜」


「なんかコバルトブルーの雲みたい。
初めて見たよ。」

風に流れる、
カタチがあるようで
つかみどころのない
絶えず変わっていく水面の雲。

息を呑むほど美しい世界。
二人とも大興奮。
 
ここは五色沼の中で
最も青い沼と言われている、
青沼です。
 
朝日が射す部分や眺める角度によって、
色彩が絶妙に変わります。
 
小さい頃、
お母さんの宝箱に入っていた
宝石の色を思い出しました。
 
お母さんにも
この景色見せたいな。
お母さん、私、今とても幸せだよ。
ありがとうね。
 
家族への感謝の気持ちも溢れました。


 
「はー、景色の宝物がどんどん増えるよ。
パン子の心のポケット、渋滞だよ〜」

キミに逢えて
パン子は嬉しいよ。
 
「パン子ちゃ〜ん!次行くよ〜」
「は〜い!」
 
耳男くんと仲良く手を繋いで歩きます。
 
すると。
 
「うわっ!ここも濃いブルーだね!
紅葉とのコントラストがすごいキレイだ〜」

そこは瑠璃沼。
 
感動が止まりません。
青沼とはまた違った青の世界です。

人と同じ、
どの沼にも魅力があります。

 
瑠璃沼の次に待っていたのが、
弁天沼。
大きな沼です。

「広いね〜大きいね〜キレイだね〜!」

今までと違って
開放的な景色が広がります。
 
青空と山並みに自然を写す、
コバルトブルーの鏡。
白い霧とオレンジの太陽と赤い紅葉。
 


展望台では
ご夫婦が夢中でカメラを撮っていました。
仲良しのご夫婦を見ると
こちらまで幸せになります。


それにしても、
昨日まで曇りがちだった空と比べて
太陽が暖かい。
嬉しい。
ちょっとカタチの変わった葉っぱや苔も
可愛い。


「あれ?
この沼はまた全然違った雰囲気だよ」

続いて待っていたのが、
みどろ沼。

またさっきとは違う色をした、
渋い色彩の沼です。 
手前は薄い抹茶色、奥は赤茶色。
ひとつの沼に
二色のコントラスト。


 「ここはまた色が違うね」
「どうして沼によって
こんなにも色が違うんだろうね」
 
あとで調べてみると、水質や水深、
さまざまな鉱物質が水と混ざり合うことで、
色に変化が出るようです。
(赤・青・緑の3色に見えるのが
みどろ沼の特徴らしいです)。
 
さらに進むと…


赤沼に辿り着きました。
 
遠目から見ると、
緑、黄緑、赤茶の三色に見えます。
 
「赤色じゃないんだね」
 
「そうなのよ、耳男くん。
赤沼はね、
沼が赤色というわけではなくて、
周りの草木が赤褐色に見えることから
赤沼て名付けられたんだって」

「へ〜」

片手に握った携帯の画面に
書かれた赤沼の説明を見ながら
自慢げに答えてみます。


ご機嫌に散策しながら、
少し長めに歩いていると…。
モミジの合間から
またコバルトブルーの湖が。

 美しさが止まりません。

「キレイだね〜」

「ほんとに美しさが渋滞してるやん。」

 「日本の四季は素晴らしいね」

赤、黄色、紅葉に埋もれる
美しい景色に感謝が溢れます。
 
それにしてもとっても大きい沼!
 
ここは毘沙門沼。
五色沼の中で一番大きく
メインとなってる沼です。

いつの間にかもう最後の沼に
たどり着いていました。


 バックには磐梯山も見えます。

「あれ、同じ沼なのに
色の見え方全く違うね。」

ちょっとした天気の変化や
眺める場所によって、
コロコロ色を変える毘沙門沼。

紅葉に紫陽花に毘沙門沼の
景色のコラボレーションも
素敵。


 「ゴール!」
「はあ〜、本当楽しかったね〜!」

あっという間に
2時間が経っていました。

やっぱりメイン側の沼、
観光客で賑わっています。
 


 「はあー!楽しかった!
ちょっとボク足が痛くなったから
休憩したいな」
 
「うん、ゆっくりしよう」
 
売店が開くまで
のんびり休憩することに。

「あ、ちょっと暗くなってきた」
空に雲が増えてきました。
すると、
毘沙門沼からブルー色が消え、
いつもの透明な色に変わります。

「天気の価値が分かる沼だなぁ」
 
売店が開き、
待ってましまた!と言わんばかりに
たこ焼きを買いに行く耳男くん。
 
笑顔で戻ってきます。

「へへへ。出来たてのたこ焼き。」
 
「お〜よかったね〜。
ありがとう!いただきまーす!」


パクッ。
 
「うまっ!」
 
「わ、めっちゃ美味しいね!
観光地で食べた
たこ焼きの中で一番美味しいかも」
 
「またパン子、
今までで一番美味しいていいよる。」

「嘘じゃないよ。
よく更新するだけだよ〜」

耳男くんといると
「治すのは難しい」と
やんわりとハッキリ言われた摂食障害が
治った気分になります。

五色沼見ながら
耳男くんと食べるたこ焼きは
至福でした。


そのあとは、
展望デッキがある違うコースを
歩いてみることに。

結構すぐ
展望スポットに着きました。

天気がすぐれなかった昨日。
同じ山の景色も
今日は色鮮やかに見えます。



 「ちょっと歩いただけなのに
意外と景色いいね!」
「気持ちい〜ね〜」
 
「あ、あれ、昨日行った美術館やん!」
「ほんとだ!
そういえばここからの景色、
本に乗ってた気がする」


「小さく咲いてるお花、実、草も可愛いね!」

「パン子ちゃんの笑顔、可愛いね!」
 
「あら、ありがとう」
 
ヘラヘラする2人。
五色沼の旅、最高に楽しい。

終始、幸せな空間に包まれた
五色沼の世界でした。

あっという間に午前中が終わります。

「バスの出発時間あるから
そろそろ行こうか」
 
「うん!
ありがとう〜、五色沼!」

バスでひゅ〜んと
スタート地点に戻りました。 


「あ、最後にあの沼見に行こ〜よ」

今日最初に見て、心踊った柳沼。

駐車場のすぐ近くなので
寄ってみることにしました。

すると…。
 
「あれ?
さっきと全然違う」

「ほんまや」



「なんか普通の沼になってる。
鏡じゃなくなってる。
曇ってきたからかな?」
 
「そうかもね。
あ、あと、波があるからかも。
水面が鏡じゃなくなってる。」

風に揺れる沼。
 
「驚きだ。
天気と時間でこんなにも違うんだね。」

反対にあった、小さな沼も覗いてみます。

柳沼と同じく、朝とは別の顔。
昼顔でした。

「早朝がおススメて書いてあったけど、
やっぱり早朝でよかったね。」
 
「そだね」

「でも、こんなにいろんな色に
コロコロ変わるからこそ
魅力的なんだね、
五色沼」


 
「次どこ行こうかね〜」
 
天気予報通り、雲が増えた空。
風も強くなってきました。
 
「あ!!」

携帯を見ながら驚く耳男くん。
 
「どうしたの、耳男くん」
 
「スカイライン、
さっき通行止め解除したみたい!」
 
「えー!嬉しい」
 
「天気は微妙だけど、
浄土平と吾妻小富士行ってみる?」
 
「うん、行こう!行こう!
リベンジだ!」
 
本当は午後から天気が微妙だったので
室内系を巡ろうとしとましたが、
予定変更!
 
磐梯吾妻スカイラインを目指します。
 
さっきまで疲れていたのが嘘みたい。
互いに息を吹き返します。
 
今夜から大雨の予報で
天気が下り坂なのは分かっていましたが、
見れないと諦めていた
景色に出逢える…。
 
そう思ったら嬉しくてたまりません。
 
昨日と同じ道を走ります。
 
「何回通った?笑」
 
「よかやん。
今日は今から「その先」があるよ」
 
もうすぐ昨日、
通行止めになっていた
磐梯吾妻スカイラインの入り口です。
 
「通れますように!」
 
もちろん、通れました。
 
「やったー!」

心でハイタッチ!
そのまま山道を登ります。
 
「いやいや、すごい登るね」
「どこまで登るんやろうか」
 
「吾妻小富士、雪降ってるんでしょ?
あのてっぺんくらいまで
行くんやないんかな?」
 
「ボクここまで高い場所に
車で来るの初めてかも」
 
車内にいても
気温がグッと下がっていくのが
分かります。

天気が崩れる前に
吾妻小富士に行きたい。
だけど、
展望スポットにも停まりたい。

アンバランスな気持ちが
二人に巡ります。
 
「やっぱり停まろう」

「うん」

「わー!これはすごい景色!」
 
走る道から見える景色すべてが
絶景です。

曇り空ですが、美しい秋の景色に感動。

 スカイライン開通の情報を見逃してたら、
見れなかったんだなあ。
 
「通れてよかったね」

「ね」
 
写真は暗くなりましたが、
紅葉したモコモコの木々が可愛くて
キュンとしました。
 
それにしても風が強い。
浄土平周辺は
激寒なんではないだろうか。。
 
まだまだ上に登ります。
 
「ワクワクしてきた」
「ね」
 
すると、ある瞬間を境に
景色がガラリと変わりました。
 
「雪だ」
 
窓を開けると
「寒ー!」

「わっ、あれが浄土平と
吾妻小富士じゃない!?」

「おー!すごいね」
 


季節が秋から冬に、
雪国にタイムスリップ。
 
そこには、足早に雪景色をした
浄土平と吾妻小富士が待っていました。
 
小山の合間からは煙が出ています。

「わー!わー!すごい!」
「来てよかったね〜」
 
「しっかり防寒しなきゃ」
 
気温は氷点下、強風。
車のドアを開けようとすると、
風に押されすごい勢いで全開に。
 
モコモコ帽子の上にフードをかぶり、
チャックをしっかり閉めて
手袋の中にホッカイロを入れ、
靴も冬用に履き替えます。
 
「寒さより、風がやばいね」
 
天候が次第に悪くなり、
進む足も止まってしまう程の強風に。
極寒です。
だけど、たくさん旅をしてきたおかげで
この状況にも慣れた自分がいます。
 
「わー、ある意味登るの楽しみ〜」
「行こう〜!」
 
油断すれば風で飛ばされそう、
一歩一歩
ゆっくり登ります。

 「日本じゃないみたいだね」


足元には固まった雪。
後ろを振り返ると、
活火山の煙、山に積もる雪。


「パン子ちゃん〜、大丈夫?」
「うん、楽しいよ。ありがとう。」

 
先に登る耳男くんは
私がちゃんと着いてきているか、
何度も立ち止まっては
確認してくれます。
 
本当にこの景色を見るだけで
楽しい。
 
決して観光には
優れてるとは言えない天候の中、
同じように
頂上を目指す年配のご夫婦も
何組かいます。
 
だいたい奥さんが置いてかれていて、
上のほうで旦那さんが見守っていました。
 
「おい、母さん、
登れるか。大丈夫か」
 
「はい、大丈夫ですよ」

 一緒だ。

何歳になっても
夫婦ってこうなんだろうな〜と
暖かく感じました。

「パン子ちゃ〜ん!」

笑顔で手を振る耳男くん。
そのままでいてね。

「うわっ、大きい〜!」

 やっと火口に到着しました。

すごい広大。
写真じゃ収まりきれない火口。
ある意味すごい絶景です。
 
ひとしきり写真を撮ってはしゃぎます。
 
ここが噴火した場所か。
 
昨日資料館で見た
噴火した瞬間の映像が頭に巡ります。
 
「ほんとに一瞬なんだな。
どんな歴史も、私も。」
 
過ぎ去った
いろんな自然や人の歴史を想いました。

「毎日、楽しく生きなきゃね。」


それにしても、
どんどん風が強まります。
 
吾妻小富士は
この火口をぐるっと一周することができ、
いろんな角度から絶景を
眺められる、
とのことですが…。
 
正直、立っているのがやっと。
誰も先に進んでいません。
 
耳男くんを見ると…

吾妻小富士を一周する気満々です。
 
「ね、行くの?」
「うん」
「本当に?危ないよ」
 
耳男くんは私の手を繋いで
先に進もうとします。
 
「誰も奥のほう回ってないし、
今は追い風だけど、
あっち行くと向かい風だとを思うから
本当飛ばされちゃうよ?」
 
それでも進む、耳男くん。

時折吹く、あまりに強い突風。
少しでも油断したら
身を持っていかれそうです。
 
この強風に
恐怖が芽生えはじめました。
 
「ねぇ、無理しないほうがいいよ〜」
 
進む度どんどん風が強まります。

命の危険すら感じて
ドキドキしてきました。

何度か戻ろうとなだめると…。
 
「もうこの景色見れないよ!」
 
少しムキになる耳男くん。
 
「いいよ!
絶景より何より
耳男くんの命が大事だよ!」
 
とっさ出た言葉に
ハッとしました。

…。

きっとこれが私の本当の気持ちだ。
 
自分が1番守りたいモノに、
自分で気づかされました。
 

あなたは、何よりの宝物だよ。


さすがに耳男くんも諦めたようで、
渋々と引き返します。
 
「パン子、
久しぶりに命の危険感じたよ〜。
自分よりも
もし耳男くんが
いなくなっちゃったらどうしようって。」
 
「ごめんごめん」
 
「パン子にとって、
パン子の命よりも
大切なんだからね。

…よし。
気を取り直して、
記念に写真撮ってもらお。」
 
声をかけたおじいさんが
たまたま同じ九州出身の
ガチの登山家でした。
一人で全国を旅してるらしく、
耳男くんと楽しそうに
おしゃべりしています。
 
「え、一周するんすか」
「ええ。行ってきます」
 
さすが登山家。
強風をもろともせず、
あっという間に
時計でいうなら、
6の数字から9の数字まで
進んでいました。
 
羨ましそうに見つめる耳男くん。


 「そんなに行きたいなら、
行ってきていいよ」

少し呆れます。
景色は楽しむものです。
耳男くんの気持ちもすごく分かりますが、
楽しめない天候もあるわけで。
それに私は一応女です。
 
「いい。
パン子いなきゃ意味ないから」
 
「また10年後とか20年後に来よう。
子どもと一緒に。」
 
「そだね。」 

「ここまで来れてよかったね。
耳男くんのおかげだよ、
ありがとう。」
 
下りは降りやすい歩き方を見つけ、
軽快に進むことができました。
 
「吾妻小富士て書いてある
看板のところでも
最後に写真撮ってもらおうか」

「すみませ〜ん…」
 
すると、あれ?
 
さっき写真を撮ってくれたおじいさんです。
 
「もう一周したんすか?!」
 
「いや〜、途中で引き返した。
風が強すぎて。
静止できないから
写真も撮れそうになかったよ。」
 
この人でも断念するくらいだ。
行かなくて本当によかった。
 
これから本格的に
登山をはじめたい耳男くんは
おじいさんにアドバイスをもらって、
また元気を取り戻しました。

その後は、レストハウスで休憩。
閉店間際だったので、
お米系が売り切れていました。
 
「ソースカツ丼食べたかったな〜」
「塩とんかつラーメンならあるよ。
これにする?」
 
身体がカツを求めていたので、
普段なら食べなさそうな組み合わせを
オーダー。
 
「お腹ぺこぺこだあ」
 
しばらくすると呼ばれ、
耳男くんが
塩とんかつラーメンを運んできてくれました。

うん、
可も不可もないビジュアル。
 
「いただきまーす」
 
「え、美味しいやん。
塩味だからサッパリしてるから
カツと相性いいね」
 
「うん、普通に美味い」
 
「五色沼の
たこ焼きも美味しかったしね。
意外性みせてくれる〜」
 
美味しいは幸せ。
 
誰と食べるか。
どこで食べるか。
どんな気持ちで食べるか。
 
「風は強かったけど、
お天気持ってくれてよかったね〜」
 
「うん!」
 
浄土平も散策できましたが
お天気が悪く、
この季節は
特にお花も咲いてなさそうだったので、
眺めるだけにしました。


 案内所では、またあのおじいさんが
誰かとおしゃべりしていました。

さあ、車に戻ろう。
 
「はあ、寒かったぁ!
けど、楽しかったぁぁあ!」
 
車に乗り、身につけていた
ホッカイロ入りの手袋、防寒着、モコモコ帽子、
そしてマスクを外します。
 
すると、車のガラスに雫がポタポタ。
雨です。
 
「ギリギリセーフ」

「空の神様ありがと〜」
 
木々たちがさらに
大きく揺れ出しました。
 
 
「本当これてよかったね!
すごい楽しくて怖くて
命の大切さにきづけて、
思い出になったよ。

耳男くんありがとう!」
 
「いえいえ。
楽しかったね」
 
下りはゆっくりと。
景色を眺めながら、
時より展望スポットに寄りながら、
おしゃべり。

空の色を映し出す景色。
自然は鏡合わせ。

「これからどうしようか〜」 

今晩から明日の午前中まで
福島は雨予想。
関東全域も夜から雨みたいです。
 
帰り道は何気に5時間以上あるし、
明後日から
耳男くんの連勤もはじまります。
 
景色は充分堪能したので、
のんびり帰りながら
旅することにしました。
 
「眠くなったら車中泊すればいいし、
温泉ありそうだったら入ったらいいし、
行きたいとこあったら行けばいいし、
そんな感じで帰りますか」
 
「うん。
磐梯高原も五色沼も
ぜーんぶ楽しかったね!」

「僕はパン子ちゃんの笑顔を
いっぱい見れて幸せです」

「私も耳男くんの笑顔見れて
幸せ。
耳男くんと結婚したから
見れた景色だよ。
本当にありがとう。」
 
本当に本当にありがとう。

後ろを振り返り、
磐梯吾妻ラインに手を振ります。


「ありがとう、またね〜」

心から福島の旅に感謝しました。

日が暮れるまであと少し。
最後に小さな沼に寄って
一足早い紅葉に別れを告げます。

そして。

どんな話の流れかは忘れましたが、
明日は埼玉にある
「地底探検ミュージアム」に
行くことに。
 
「地底探検ミュージアム」とは
深度50mに建設された
世界最大級の洪水防止施設です。

地底の巨大施設のことや洪水のこと、
川のことなどいろいろ楽しく学べます。

子供から大人にも人気の
「首都圏外郭放水路」の見学ツアーもあり、
映画の撮影などにも使われる
地下神殿「調圧水槽」は
フォトスポットにもなっています。
 
スケボーをするスポットもあり、
行く度に「いつか行ってみたいね」と
話していました。

調べて見ると…

朝一なら空きあり!
見学ツアーに申し込みました。
 
「雨だからちょうどよかったね」 

「ね!平日だから
前日でも予約とれたね。
やっと行けるね〜」

最終日、
明日も楽しみです。

結婚するまでは、
旅はちゃんと予定を立てて、
特に女の子で行く時なんかは
誰かが予定表を立てて
それ通りに旅をしていました。

だけど、耳男くんと結婚して
フリーの醍醐味を教えてもらい、
今では考え方まで
柔軟になったように思います。 

雨なら
晴れたところに
行けばいい、と。


day4へ続く…。

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