女になった日
南部です。
よく、顔が濃いからか、一人で海外を渡り歩いたせいか、男性に慣れていそうとか派手に遊んでいそうとか言われるのだが、
私はなかなかにピュアで、なんならちょっとコンプレックスなくらい恋愛経験が少ない。
男性と普通に話したり遊んだりできるのだが、一度キュンとしてしまうともう本当にお話しできなくなってしまうし、目も泳ぎ散らかす。
好きなタイプを聞かれて「お花で指輪を作ってくれる人」と真顔で答えるほどの拗らせっぷりである。
そんな私がオンナになったのは早く、幼稚園の時だ。
私の幼稚園に、子どもの目にもイケメンにうつるSくんという美少年がいた。
陽キャの女の子たちはSくんをとっ捕まえてはほっぺにキッスをしていた。その光景を目の当たりにするたびに私の心には「世にも奇妙な物語」のテーマ曲が流れるほどに、それは未知の世界であった。
その頃の私は公園に落ちているきったないスーパーボールを集めたり、微エロ描写を含む漫画を描いたり、ダンゴムシやアメンボを眺めて遊んでいた。
そしてみんなよりも体が小さかったせいか同級生を年上だと勘違いし、毎日のように母に「今日もお兄さんとお姉さんが仲良くしてくれた」との問題発言をぶっ放す心配なガキであった。
大人になった今、お決まりのザマである。
そして私の幼稚園には、帰りの会が終わった後で、子供が2列になり手を繋いで、園庭で待つ家族の元へ帰るというくだりがあった。
手を繋ぐ相手は誰でもいいのだが、私には特別仲の良い子がいなかったため、その場のノリでチルい感じで帰っていた。
ある日のこと。いつものようにSくんには陽キャ女子が群がり、「私とー!」「今日は私とー!」と、飲みサー大学生みたいなやりとりが繰り広げられていた。
そんな光景を横目に「今日は兄とハム太郎ドンジャラかデジモンすごろくで遊ぼう」とかそんなことを考えていた時、
私の手が後ろからサッとすくわれたのである。
Sくんが私の手を握っている。
いまだに忘れない、Sくんは「今日は麻衣と帰る」と言い放ったのだ。呼び捨て…!!もうLA LA LA LOVE SONGである。
しかし陽キャの子たちが野犬の如く歯を剥き出しにして睨んでいるのが見えたので、内心バックバクなのだが表情を変えずに「Oh」とだけ言ってSくんと手を繋いだ。
幼稚園の教室から園庭まで、30秒ほどのトキメキ(死語ですか?)だった。
その時私は女になった。
いや何の話だよw
終焉