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お味噌汁

これは本当にお恥ずかしい話なのだが、わたしが初めて「お味噌汁」を作ったのは一人暮らしをはじめた大学生になってからだ。

当時お付き合いをしていた彼に、味噌汁が飲みたいと言われ
地元にいる母に作り方を教えてほしいと連絡したことを覚えている。

それまで実家ではほぼ毎朝、味噌汁がでていたが
そこで使っている味噌が白味噌なのか、赤味噌なのか気にとめたこともなかったし、そもそも味噌にそんなに種類があることも知らなかった。
(当時のわたしもきっと、今と同じく興味のないことには全く興味の沸かない子供だったのだろう。)

大学を中退し、名古屋へ引っ越したのだがそこで口にする「味噌」は、これまで慣れ親しんできた味噌の味と全く違い、慣れなかった。
そうやって慣れない文化に触れてはじめて「母の味」とはこういう事なのか、と実感した。

やがて実家に戻り、母の買い物に付き合っていたとき
「隣町にあるお味噌屋さんにお味噌を買いに行くの。あそこのお味噌は体に良くて美味しいのよ」という話を聞き
まさか隣町まで味噌を買いに行っているとは思ってもみなかったし
そういう一つ一つの積み重ねの上に、今の自分の体ができているのかと思うと、なんとも言い難い気持ちに包まれた。

今ではあの時のお味噌屋さんが何という店だったのかもわからないが、少しキチンとした気分の時には、今では出汁を昆布からとるようになった。
あの頃より、少しは成長しているだろうか。

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Mai Muraguchi 村口麻衣 emu inc.
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