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枕草子 第187話 返る年の二月廿日より(6)

日が暮れましたので、職の御曹司へ参上いたしました。
中宮様の御前には、既に人が大勢おられます。
殿上人もおられ、物語の良し悪し、感心できない場面、欠点などのお話をしておられます。
中宮様も、宇津保物語の涼と仲忠などの優劣についての、ご発言をなされます。
他の女房の一人が私(清少納言)に向かって
「ねえ、他のことよりも、この二人について、あなたはどう思うの?」
「仲忠が子供の頃、すごく賤しい暮らしだったことを、中宮様は何度もおっしゃられているの、ねえ、すぐに説明していただけないかなあ」と言ってくるので。
私は
「いやいや、そんな仲忠が賤しいなんてことはありませんよ、琴だってね、それを聞いて感激した天人が下りてくるほどの腕前ですし、賤しいという話になるなら、紀伊国の吹上で育った涼のほうが、そう思いますよ、そもそも内親王様が降嫁とはなりませんでしたので」と、思うところを答えました。
そうしますと、仲忠に肩入れをしていた人々が、自信を持ったのか「ねえ、その通りですよ」などと言い合っている。

返る年の二月廿日より(7)に続く。

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