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ina1744
土佐日記 第31話 十四日、
(滞在地)室津
(原文)
十四日、暁(あかつき)より雨降れば同じ所に泊れり。
船君節忌(せちみ)す。
精進物(さうじもの)なければ、午の時(むまとき)より後に、楫取の昨日釣りたりし鯛に、銭なければ米(よね)を取り掛けて落ちられぬ。
かかる事なほありぬ。
楫取また鯛持て来たり。
米(よね)酒しばしば与(く)る。
楫取気色悪しからず。
※節忌(せちみ)
斎日に精進潔斎を行うこと。
一か月の間で、八、十四、十五、二十三、二十九日、三十日の六日間が精進日に該当する。
(舞夢訳)
十四日は、夜明け前から雨が降り続いております。
今日も、同じ室津に留まっています。
精進潔斎の日であるので、船君(紀貫之)は、生ものを召し上がりません。
ただ、そうかといって精進料理もありませんので、お昼に楫取が昨日釣りあげた鯛を、(金が無いので)米と交換して、精進落ちをなされました。
そういうことは、たびたびありました。
梶取が、何度も鯛を釣っては持って来くるので、(主人:紀貫之)は、鯛と交換に米とか酒を、しばしば与えます。
そういう時の楫取は、特にご機嫌な顏を見せるのです。
鯛を釣れば、米と酒が手に入る。
楫取は、せっせと鯛を釣りに励んだに違いない。