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akiranka
虫愛づる姫君(6)堤中納言物語
さて、そんな騒動をしかけた、あやしげな男は、右馬の佐という人物でした。
その右馬の佐は、姫様の風変わりな返歌を読むと、どうしても姫様本人を見たくなってしまい、友人を伴い、「女装して」姫様のお屋敷にしのびこみ、覗き見をしています。
姫様は、いつもの通り、男の子たちを使い、たくさんの毛虫を捕らせています。
その夢中になって毛虫を見ている姿は、まず髪の手入れはしていませんし、眉は黒々、ただ涼しげな雰囲気もあって、本当は美人かもしれません。
口元は愛らしく可愛いのですが、お歯黒をしていないので、やはり違和感があります。
右馬の佐は
「化粧すれば、もともと可愛らしいのだから美しくなれるのに、残念だなあ」と思います。
姫様は身なりには無頓着であるけれど、本当は可愛らしく華やかさもあるので、もったいないのです。
また、若い女性では滅多にないのですが、男物のような白い袴を着ています。
毛虫をしっかりと見たいらしくガッチリとした漢字が書かれた白い扇の上に、拾わせて這わせています。
右馬の佐としても、せっかく可愛らしい姫様なのだから、このような振る舞いが「お気の毒」などと、あきれています。
さて、右馬の佐たちが、そんな覗き見をしていると、とうとう男の子たちに見つかってしまいました。
そして、驚いてしまった姫様ですが、それでも毛虫だけは袖の中に入れ、簾の中に逃げ込んだのです。