「タルコフスキーとその時代」西周成
人でも物でものめり込むとしばらくの間、熱病にかかったようになる私だ。
合間にいろいろとつまみ食いをしつつタルコフスキー監督に夢中になっていたけれど、この辺で小休止することにした。
中締めはこの本「タルコフスキーとその時代」
作品論ではなく、伝記ではなく、膨大な資料をもとにタルコフスキーの人生と映画制作の足跡を辿り、その時代背景、特に旧ソ連の映画事情などをまとめている本である。
主観的・感情的でなく、淡々と事実を叙述していく書き方は心地よかったし、私みたいなタルコフスキー初心者にはとても参考になる本だった。
細かいところは忘却の彼方だけれど、印象に残ったことはφ(..)メモメモ
★タルコフスキーの映画は監督の私小説的なカラーがあるような気がしたけど、やはりそうだった。彼の生い立ちや家族との関係が少し分かった。父親は彼が幼いころに家を出たらしい。彼自身は二度結婚したが、二度目の妻と子どものことは大切に思っていたらしい。
★宗教色が強くなっていくのは晩年に近くなってから。私が観た「サクリファイス」「ノスタルジア」が特にそう。この2作品が初めて観た作品だったけれど、映像の美しさは溜め息ものである。
★結果的には亡命することになったけれど。旧ソ連当局の言論への弾圧があったからという訳ではなさそう。ただし、旧ソ連では映画一本撮るにも政府直属の委員会から許可を受けて予算を配当してもらわなくてはいけないので、内容についても制限を受けるのは当然のことだった。そして委員会にはタルコフスキーの芸術を理解できる人がいなかったらしい。
★旧ソ連では、映画の脚本を書く前に「文学的脚本」?とかいう小説のような作品を仕上げるのだそう。それを当局に検閲してもらって・・・。とにかく手順が複雑で膨大な時間がかかりそう。
★脚本はほとんど共同作業(信頼できるパートナーと)。だいたいの場合それをそのまま撮影したら4時間以上の長い作品になってしまうので、撮影前に削ぎ落とす作業が大変だった。
★お偉いさんには理解できなかった作品も海外では高評価で数々の映画賞を受賞したものだから、仕方なく国内でも多く上映されるようになったらしい。
ところで、小休止の理由は「飽きた」訳ではなく、「疲れた」訳でもない。
「鏡」「ぼくの村は戦場だった」「アンドレイ・ルブリョフ」をなかなか観られないからだ。
近くの閑散としたTSUTAYAにはなく、ちょっと遠出をした大きなTSUTAYAにもなく、アマゾンにはあるけれど、お金をかけたくないから(笑)
そうだよね、一般受けしないもの。
私も、仕事じゃなくて単なる趣味だから、ちょっと一休みだわ、タルコフスキー監督♡