フランス耽美派の逸品「Lu gurand Meaulnes」

これもかなり以前に観た映画。1968年制作、ジャン・ガブリエル・アルビコッコ監督「ル・グラン・モーヌ」。原作アラン・フルニエの同名小説。(1913年初版)
 昔のヨーロッパ映画の雰囲気が香り立つ名品だ。動画のタイトルは「饗宴後のモーヌ」。

 精緻な模型やCGを駆使した迫力ある映像の素晴らしさを否定するものではないけれど、昔の映画のローテク映像のもつ魅力には時折脳内の奥深くを占拠されるような感覚に陥ることがある。これも間違いなくそういう作品の一つ。

 ストーリーが特別というわけでもない(わたし的には)。
甘酸っぱく苦しい青春の思い出、愛と友情の板挟みに、薄幸の美女。しかし描き方によってこんなに魅力的になるのだと感じた。

 舞台は19世紀末(この時代設定もたまらない)、自然豊かなフランスのソローニュ地方。村の学校に一人の転入生が来る。大柄で大人っぽく、自由闊達。たちまち少年たちのリーダーとなり「ル・グラン・モーヌ(モーヌの大将)」と呼ばれる。ある時モーヌは無断で馬車に乗り3日間帰って来なかった。実は、彼は森の奥に建つ城の祝宴に紛れ込み、そこで夢のような時間を過ごし、屋敷の美しい娘に恋をするのだ。

 動画タイトルは「饗宴後のモーム」の意味。一晩中続いた祝宴が明け方に終わり、客や芸人たちが川沿いに帰路につくシーンだ。祝宴のシーンも脳内にはっきりと残っているが、祝宴からこの帰路のシーンが一番のインパクトだった。幻想的~♡耽美的~♡

 幻想的な映像って、今だったらどうやって表現するだろう・・・?当時は技術がないから、部分的にソフトフォーカスにした画面に魚眼ぽいレンズを使ったかなぁと思われる部分もあった。そのシンプルさにも関わらず、この魅力は何なんだろう!

 音楽で言えば、昔ながらのレコードの魅力にはまってしまうようなものに近いのかもしれない。

 昔の映画が好きなわたしにとって、某TSUTA○○の「発掘良品」コーナーはひどく魅力的♡

 さて、今回原作者のことが気になり調べてみた。なんと27歳の若さで第一次世界大戦で戦死。「ル・グラン・モーヌ」が出版されて評判になり、その一年後のことだった。

 映画を観たときは、原作を読もうなんて考えもしなかったけれど、今日は読んでみたい気分になってしまった。翻訳はかなりたくさんあって、どうしようか迷うほど。しかし、ふっと「天沢退二郎訳」の名前が目に入って即決した。岩波文庫を古書で購入。なお、あの三島由紀夫がこの小説を評価していたそうだ。

 今は須賀敦子に夢中なので、いつ読めるか分からないけど・・(=^・^=)