推し活エフェクト
日常は穏やかで、時に退屈だと感じる。
それを覆したのが「推し」という存在だった。
静かな湖に隕石が落ちるような衝撃で、自分の生活は一変した。
それまでの湖の生態系は一気に崩れ、もはや以前の状態には戻れない。
自分にとっての隕石は、RAB(リアルアキバボーイズ)である。
これまで何をして時間を過ごしていたのか思い出せないほど、RABを中心とした日常が今ではすっかり当たり前になった。
ダンスの動画配信を観て、SNSをチェックし、ライブやイベントの予約をする。
noteの記事を書き、ポーカーまで始めるようになった。
どれも、それまでは考えもしなかった行動ばかりであるが、今では欠かせない日課になっている。
RABを推すことをきっかけに、自分の行動範囲と楽しみは驚くほどに広がった。
大きな会場でのダンスライブでは多くの女性ファンと共に、熱気とリズムに身を任せペンライトを両手に抱えて振っている。
ラップのイベントでは、歌に合わせて身体を動かし、小さな会場が一体化したような興奮を味わう。
またあるときはダンスだけの全国大会を観に行き、そこで繰り広げられる多様なスタイルのダンス表現に心を揺さぶらたりもした。
FANBOOKを追加で購入し、お渡し会に参加すれば、推しメンバーの前で思わず緊張してしまう自分にも気づかされる。
さらに、賞金が8桁にもなるポーカーの大会にまで出場するとは、思いもしなかった。
こうした体験はすべて、推しが与えてくれた新しい歓喜の世界への入り口であり、自分を脱皮させるための学びそのものでもある。
この変化を考えると、タイムマシンもののSFに登場する「バタフライエフェクト」の理論を思い出す。
小さな出来事が未来の大きな変化を呼び起こすという、あの理論だ。
もしも2023年の7月、風邪で時間を持て余していたときに、たまたま表示されたRABの動画を観なかったならば、今の自分は存在していないかもしれない。
そう考えると偶然が少し怖くなると同時に、人生がこうして彩り豊かになったことへは、心から感謝の念を抱かずには いられない。
推し活は、単なる趣味ではない。
日常を豊かにし、予想外の方向へと人生を広げてくれる大きな原動力だ。
静かな湖の光景を一変させ、新たな環境へ生まれ変わらせる。
それによって得られる刺激と喜びは、今の自分を形成する大切な要素となった。
もはや、推しを知る前の自分には戻れない。
しかしそれは、間違いなく幸せな変化である。
この予測不能なミラクルを呼び寄せるのが、「推し活エフェクト」なのだ。