新視点で挑む戦国タイムスリップ【マンガ3選】
「戦国自衛隊」の登場から40年、そして「信長のシェフ」や「信長協奏曲」のような近年の作品まで、戦国時代へタイムスリップするマンガの人気は根強い。
これら作品は一般的に、①「信長本人やその周辺」へ、②「男性」が転生や召喚でタイムスリップし、③「現代知識」で無双する、という共通点を持つ。
しかし、最近ではこの伝統的なパターンを脱し、新たなアプローチを試みる作品が登場している。
月に60冊以上のマンガを購入して読み込む筆者が、この新視点で挑む戦国タイムスリップマンガを3つ紹介する。
なお、現代から戦国時代へ転生の漫画も含まれるが、時代を超えるという共通テーマに基づき、本記事ではタイムスリップのカテゴリーで扱った。
淡海乃海 水面が揺れる時
まずは、①「信長本人やその周辺へ」が、「信長から遠く離れた近江のマイナー武将、朽木基綱へ」の転生という作品から。
歴史好きの50代サラリーマンが、琵琶湖に近い小領地の朽木家に、わずか二歳で当主に就任した竹若丸へと転生する物語だ。
史実では信長や秀吉に仕えた記録が有るとはいえ、位置的にかなり遠い地域への転生であり、戦国ものなのに、当面は信長が登場しないのが画期的だ。
幼少から、現代知識と歴史や人物知識をベースに、知力、胆力、時には謀略を駆使していく。
十数年に渡って、爽快なまでに戦国をサバイバルしていく壮大なドラマには読み応えがあり、どんどん引き込まれ、何度読み返したことだろう。
さらに各武将のデフォルメも可愛らしく、笑いの要素も満載で、抜群のエンターテイメントに仕上がっている。
第10巻が出たところだが、スピンオフ作品もあって、これからも楽しみな逸品だ。
戦国小町苦労譚
タイムスリップしたのは、②「男性」ではなく、「農業高校に通う歴女の高校生」。
怪しまれながらも信長の部下として村を任され、現代知識で農作物無双していくという新しい切り口のストーリーだ。
武器にも詳しく、さらに狼に懐かれるという、ご都合主義的とも思える設定も、物語の面白さを高める要素として上手く機能している。
無欲な主人公が、その多大なる成果によって、信長の右腕となっていくと共に、歴史をどんどんと塗り替えていく様が痛快だ。
人が良いだけに、信長の無茶振りには、いつも苦労が絶えないのだが、その辺りは軽妙にコミカルに描かれて安心して読める。
これも新刊が出るたびに、つい最初から何度も読み返してしまうという、お勧め作品だ。
銭(インチキ)の力で、戦国の世を駆け抜ける。
異世界ファンタジーでは当たり前の、③「現代知識」ではなく、「超未来の技術である宇宙船」を戦国に持ち込むという、難易度高めの設定に挑戦した意欲作だ。
時空漂流により戦国時代に辿り着いた宇宙船とその船長一家。
主人公たちは、未来技術を使った武器での統一ではなく、スローライフのための銭儲けに使う。
しかし、その特異さから信長に目をつけられ、困難なミッションを引き受けることになる。
この作品の面白いところは、未来チートをただ見せびらかすのでは無く、時代に合わせてカモフラージュしながら使う点だ。
また、サブキャラの個性が強いのも作品の強みになっている。
さらに戦国武将などの敵キャラたちも、なかなかに香ばしくて、予期せぬ事態にあたふたする様子に思わず笑ってしまう。
総合的な完成度は他の2作にはまだ及ばないが、5巻が出たばかりでもあり、その唯一無二の設定の可能性に大いに期待している。