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【ココロ活】他者の評価に左右されない生き方:路傍のフジイ

誰もが他人に認められたいという承認欲求を持っている。

識者やカウンセラーは「承認欲求に振り回されるなんて馬鹿げている」と言うかもしれないが、それが普通の人間だ。

では、具体的にどうすれば他者の評価に振り回されずに生きられるのだろうか。

アドラー心理学をベースにしたベストセラー「嫌われる勇気」のように、他者の評価を恐れず自分の信念に従って生きることは非常に難しい。

この本はとても興味深かったが、承認欲求の強い自分には容易に実践できるものではなかった。

その理由の一つは、そうした生き方がどのようなものかイメージできなかったからだ。


そんな中で出会った「路傍のフジイ」の主人公フジイは、まさにそれを具現化した存在として描かれている。

自分の価値観や目標が他者に依存しない在り方を、マンガという表現手法で示した、これまでにない作品だ。

フジイは一見、目立たない存在、あるいは社会から取り残されたように見えるかもしれない。

しかし、彼は自分のペースで生き、他者の評価に左右されない。

例えば、同僚から少し意地の悪い質問を投げかけられても、彼は慌てず自分の考えを丁寧に伝え、その姿勢は相手の態度を和らげ、周囲の一部に彼への興味を抱かせていく。


作者の鍋倉夫氏は、将棋のプロ棋士編入試験制度を描いた「リボーンの棋士」で知られる漫画家だ。

そのタイトルは、手塚治虫氏の「リボンの騎士」を彷彿とさせるが、作品内容は全く異なる。

私見ではあるが、「路傍のフジイ」という題名は、約90年前の山本有三の小説「路傍の石」にインスパイアされたものではないだろうか。

どちらも主人公が平凡で目立たない存在でありながら、しっかりと地に足をつけ、自分の役割を果たすという共通点があるのが、その根拠だ。


フジイは価値観の異なる人々と接する中で、彼らからの質問や意見をそのまま反射するのではなく、自分の考えや感情で受け止め丁寧に伝えようとする。

彼に近づく人々は、そんな彼を理解できなかったり、妙に気になったりするが、その過程で自分自身を見つめ直すきっかけが得られるのだ。

その描写が巧みであり、読者を清々しい気持ちにさせ、他者に振り回されず自分らしく生きることの大切さを感じさせてくれる。

マンガを嫌煙される方もおられるとは思うが、小説よりもマンガという表現手法だからこそ伝わる説得力と魅力がある。

無料部分だけでも読んで、その世界観に触れてほしい。


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