第14話 Reveal—姉との再会
Integrated Healing——
今ある問題に左右され続けるのではなく
その問題を引き起こしている原因を特定し、癒すことで
本当に在りたい自分の姿へと変容していくという
このパワフルなツールを手に入れた私は
それが心と身体、目の前の現実に
絶大な影響を及ぼしていくことへの興奮冷めやらぬままに
クラスメイトたちと共に、練習に明け暮れる日々を送っていた。
興味深かったのは
これは一生変わりようのない、自分の性格なのだと諦めていた特徴すらも
セッションをしてみると、それは私が元々生まれ持ったものではなく
母との関係性に適応するため、次第にクセになっていった行動が
まるで性格のように根付いたものであったことだった。
自らの選択により、それを癒すことで
自分本来の姿を取り戻していくと
自分がまるで別人のように変化するのが面白かった。
今の私が、初対面の方たちとお会いし
ワークショップで人前に立ち、何時間も熱弁を振るい
通りすがりの人ともカジュアルに会話をするのを知る人たちは
まさか以前の私が極度の人見知りで
自分に自信がなく
何度か顔を見たことがある人にですら、口を聞くことに激しい抵抗を感じていたことは想像もしないだろう。
だが私が何より有難かったのは
自分が癒され、変容していくのと同時に
不思議と姉との距離が縮まっていったことだった。
私が中学生だったある時、家を追い出された姉が
そのまま消息不明となってから7年後
大学生になっていた私が
あと数年でアメリカに行くという目標を立て、その時を密かに待ちわびていたある日
姉は突然自分の所在を知らせてきた。
7年前のあの日、身一つで家を追い出される間際に
とっさにパスポートを掴んだ姉は
その後
絶対に母による捜索の手が及ばない場所———
アメリカに渡っていたのだ。
そして彼女がたどり着いた場所は
私の目的地と同じ、Los Angelesだった。
私が無事にアメリカに渡った後
時を隔てて、遠い地で再会した私たちだったが
お互いが深い傷を負っていることを無言で知っていた私たちは
過去を思い出すことを避け
心を開くこともできず
同じLos Angelesに住みながら、二人の距離が縮まることはなかった。
だが私がIntegrated Healingに出会った後
傷付いたままでいた姉に諭したわけでも
私から距離を縮めようとしたわけでもなかったが
自然と姉の様子は変わっていった。
以前は自分を護るように頑なに心を閉し
何かあろうものなら噛み付いてくるような性分であったが
凍りついていた私のココロがすっかり溶け
朝の波のように穏やかでいるのを無意識に感じたのだろう
次第に私に心を開いてくれるようになった。
「Maiちゃん、本当に変わったね。」
そう何度も言う姉は
自分も変わりたいと言い、ある時から私は姉に時折セッションをするようになった。
子供の頃に私が見ていた現実と
母が見ていた現実が、全く違うことは理解していたが
同じ家の中で姉が経験していた現実も、それとはまた違うものだった。
初めて聞く、子供の頃の姉から見た現実。
自分を否定し、支配する母への怒り
傷つけられる恐怖
愛されない悲しみ
それを誰よりも理解できるのは、他ならぬ私であったこと
そして彼女が過去から解放され
本来の自分の良さや、強さを取り戻していく瞬間に立ち会えたことを、心から嬉しく思い
「私は自分が好きだし、これからも自分でいたい。
そう思えるようになったんだ。」
後からそう伝えてくれた姉に、喜びと感謝の気持ちが溢れた。
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今の私が理解しているのは
その時は何の意味も成さず、まるでバラバラに見えた人生の出来事の一つ一つは
実はひと続きの大きな地図を描いていたということ。
子供の頃、心の痛みに耐えかねて感情を切り離したこと——
私に自分の将来の夢を語ってくれた友人——
行方知れずになった姉——
生まれたばかりの姪を預かるようになったこと——
母から逃れるようにアメリカに渡ったこと——
そこで出会った友人に誘われ、大自然へと旅したこと——
その後導かれるように出会った
Integrated Healingと、その仲間たち。
人生を1枚の美しい地図と見るか
無意味な出来事の寄せ集めと見るかは
私の意志によって決められる。
自分の人生がどれだけ美しいものであったかを知るために
私はまず自分を深く癒し
母の望みや、周囲の理想に合わせ続けることで見失っていた
本来の自分の姿を取り戻す必要があったのでした。
次回エピソード
15. 更なる好奇心を追って
に続きます。
ココロの『Yes』の声に従って、新たな旅へと出発します。
これまでのお話はこちらから
https://note.com/mailittlebridge/m/m0a1e86abab06
Find me in the dark
—あの頃子供だった私たちへ—
”幸せそうな家庭” に育ちながら
母の呪縛によって感情を失った子供・Mai
自らの幸せを見つけるためアメリカに渡るも
生きる目的すら見出せずにいた頃
突如訪れたきっかけによって
自らの運命を変える旅に出発するー
ココロを忘れ、笑い方を忘れ
氷のように無表情だった私が
愛し、愛され
天職を見つけるまでのお話と
数々のWisdomを書いています