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子連れ出勤に思うこと。

先月、政府が「子連れ出勤」を後押しする考えを表明してから、あちこちでこの件をテーマに議論が繰り広げられています。一般的には反対派の声がよく聞こえてくるような。
マフィスという、広義では子どもと一緒に出勤する場所、でも大人と子どもを混ぜずに「保育」という形をとっている立場から「子連れ出勤」について私なりに思うことを。
結論から言うと「私自身は出来るだけ毎日長く仕事をしたいので自分の子どもと仕事をする空間で同居するのは嫌なんだけど、取り組み自体は応援派」中途半端ですみませんw
その理由を以下の3つのポイントでお伝えしたいと思います。

1.お金のこと
2.子どもの心の育ちのこと、仕事の質量のこと
3.親子の絆のこと

1.お金のこと
ワーキングマザーって十把一絡げにされますけど、保育園&ベビーシッターを併用して仕事に打ち込む人から、子どもの育ち優先で空いた時間で仕事をしたい人まで様々な方がおられます。
子連れ出勤に補助を出すなら保育園を増やせとか、保育士の待遇上げろという声も多く聞かれますが、一つの保育園を維持するのにいくら国のお金が使われているか、考えたことがあるでしょうか?
たとえばマフィスでも活用している企業主導型保育事業(http://www.kigyounaihoiku.jp/)、この助成事業では0~2歳わずか30名程度の施設で、都区部等では年間6千万ほどの助成金が支払われます。5歳児までの園なら1億円はくだらない。1人あたり平均200万円くらいの国費が使われているわけです。さらに各家庭で支払う保育料を考えると、子ども一人に払われるお金は毎月20万円程でしょうか。欧米ではこういった国の補助が一切ありませんが、保育園増やせとか日本死ねとか仰っている方々、国の補助なく自分自身で賄う覚悟ありますか?
一方で、働く側。保育園という「親に代わって子育て」をしてくれる箱が必要な人、どのくらいいるでしょう。

上の図は、総務省平成28年の労働力調査から。平成24年から28年の5年間でパートタイム労働者149万人増。フルタイム労働者の約6倍増えています。このパートタイムの方々の大部分は扶養の範囲内で働きたい方々というのは想像に難くありません。仕事は週に2~3日数時間にとどめ、家事も育児も基本的には自分の手でやるべきであると考えている方に必要なのは、毎月何万円も払って子育てをアウトソースする場所ではなく「高い保育料を払わず、ちょっと子どもを見てもらうことができる場所」。
子連れ出勤なんてうってつけのソリューションなわけです。

2.子どもの心の育ちのこと、仕事の質量のこと
職場で、大人の中に子どもが混ざると、どうしてもパフォーマンスは落ちます。子どもには全身全霊で、丁寧に向き合わないといけない。私が高コストとわかっていてもマフィスに保育の概念を真正面から取り入れた一番大きな理由です。
子どもは、愛されるために、周囲の人々に構ってもらうために存在します。幼いころに十分に愛情を受け、満ち足りた子どもは、一定の年齢に差し掛かると周囲に愛情や思いやりを分け与えることができると、心理学、哲学の研究者であるエーリッヒフロムも唱えています。
自分に向けられる関心が足りてないと子どもは何をするでしょう。
いたずらをする、泣く、奇声を上げる。そうやって彼らは大人の関心を向けるための手段に出ます。
それを収めるために、その場しのぎにおやつを与える、スマホを渡す、最悪のスパイラルです。そんな状況に立たされる親は、子どもに対する行動の自己嫌悪と、周囲の大人への申し訳なさとの板挟み。生産性が上がるわけがない。
愛情を与えるのは親に限らなくても良いと思います。周囲の大人たち、保育園や幼稚園の先生たち、たくさんの人に囲まれて、周囲の人が自分に興味を持ってくれると自覚する子どもは豊かに育ちます。
その手段が保育園や保育ママだけとは限らない。子どもを職場に連れて行っても、ママが打ち合わせに専念している間、ネットサーフィンの代わりに子どもと絵本をよもう、喫煙せずに子どもと遊ぼう、コンビニにお昼を買いにいくついでにお散歩に行こう。
雇われる側は子連れで職場に通い始めるタイミングと頻度と時間をちゃんと考えないといけないし、雇う側は何人までなら受入れOKなのかちゃんと考えないといけない。
なぜなら、本気で子どもと向き合うって、人格を育てるって、本当に責任の大きいことだから。片手間でなく子ども様対応メンバーを交代制でも常時スタンバイさせておくって、企業としての生産性に別の影響を与えるだろうから。

3.親子の絆のこと
子どもが親の仕事をする背中を見れることは、将来彼らのキャリア形成に少なからずプラスの影響を与えると私は信じています。
普段から十分に信頼関係が構築できた親子関係だと、パパやママがちょっと自分から目を離しても子どもは安心して待つことができます
「自分で子どもの面倒なんてろくに見たことないだろうな」と突っ込みたくなるような政治家のおじさんが「乳幼児は母親と一緒にいることが何よりも大事」だの「お母さんの顔が見えて赤ちゃんが幸せそう」だのいうのを聞きくと、何もやらないくせにナニイッチャッテンノーってたしかに突っ込みたくなりますよね。
子どもを預けて仕事に行こうとする別れ際に大泣きされて後ろ髪惹かれながら振り切る自分の行動が子どもにとって正しいのかどうか悩むお母さんは星の数ほどいらっしゃる。
じゃあ預けてしまわずに子連れ出勤だったら解決できるのか?っていうと実際はそうでもない。特に分離不安の激しい時期に差し掛かる1歳前後ですぐ見えるところにママがいるのに自分のことを見てくれないとか、1日の間に何度も出会いと別れがあるとか、子どもたちにとっては酷すぎて目も当てられない、ということもあるでしょう。
だからこそ、離れているときのほうが楽しいぜっていう環境を用意してあげたいし、そういう働き方を始める時期を見極める、頻度を見極める、時間を見極める、それがだいじ。

働き方も多種多様になった昨今、保育園とか幼稚園とか、それぞれの立場で一番の選択をしたらいいんです。その選択肢があまりに少なすぎることが問題で。子連れ出勤だって、マフィスだって。子どもが小さいときくらい中庸な生き方をしたっていいじゃない。変化に合わせて自分を変えていけることが大切なんです。

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