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IPOを見据えてやってきた3つのこと

早いもので上場してから1ヶ月が経ちました。少し落ち着いてきましたので自分の備忘録も兼ねて、IPOのブランドコミュニケーションについてまとめておこうと思います。


東京証券取引所グロース市場に上場をしました

上場時のプレスリリース

2024年7月26日(金)、株式会社タイミーは東京証券取引所グロース市場へ新規上場しました。
当社サービスをご利用いただいているお客様、お取引先様、株主様をはじめ、創業以来支えてくださったすべての皆様に、心より御礼申し上げます。
当社のミッションは「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」です。多様な経験と出会いを通じて、自身が本当にやりたいことは何なのかを見つめ直し、新たな一歩を踏み出す。当社は、これらを一人ひとりの人生の可能性を広げることができた瞬間だと捉えています。
上場を機に、さらなるサービスの拡充と顧客満足度向上に繋がるプロダクトの強化に努め、ミッション達成に向けて引き続き挑戦していきます。

改めて私は、タイミーでBX(Brand Experience)部の部長として、会社及びサービスのブランディング、PR、オウンドメディアを統括し、ブランド・エクイティ領域、ブランド戦略及び実行を担っています。その中でIPOに関係なく、ブランドエクイティフェーズに合わせたブランドコミュニケーションをしてきました。

木村が考えるブランド・エクイティ活動フェーズ
※こちらの画像を使用の際には事前にご連絡ください。

IPOを見据えてやった3つのこと
〜何が必要だったのか〜

私はIPOのブランドコミュニケーションの責任者として戦略策定および実行をリードしました。
今回はIPOを見据えて必要だったことについて、3つお話しします。
※IPO部分に興味がある方は、「③IPOに向けてのブランドコミュニケーション戦略とは」に飛んでご覧ください。長文の記事になりますので興味ある部分をアンカークリックで飛んでご覧いただければと思います。

※IPOに向けていつからどのような準備をしてきたか、カウントダウンスケジュールや実際にやってきたことなどは細かく記載はしません。この部分を詳しく聞きたい方は、ぜひ個別にコメントをください。

①選ばれるブランドになるための「一貫性」〜ミッションを感じてもらえるファクトの開発と適切な世論形成〜

まず1つ目は、タイミーとして重要なミッション「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」をステークホルダーに感じてもらえるブランドになるために、ミッションを感じてもらえる“ファクト”の開発と適切な世論形成に注力し、選ばれるブランドとしての「一貫性」に重きをおくことです。
この記事の中でも一番分量を割いてご説明しますが、それだけ重要な部分だとご承知ください。
それを実現するためには、コーポレート、サービスそれぞれの「タイミーブランド」を横串を通して見れるブランドコミュニケーションを司る役割(組織)が必要でした。それが「BX(Brand Experience)部」設立背景です。

ブランドを横串を通して見る組織「BX部」の設置


今後、市場が拡大することで競合も増え、機能などでの差別化が難しくなっていく。そこで、少ないリソースを最大限活かした「選ばれ続けるブランドとしてのブランド力の向上」が必要なのではないか、と自ら代表や経営陣に提案し、代表直下の組織としてBX部が誕生しました。
BXが設置された2021年頃、タイミーのブランドコミュニケーションには部門ごとにばらつきがあり、「世の中に対して何を価値提供するブランド」なのかが定まっておらず、それぞれが思う最善な活動で事業に貢献している現状でした。例えば、ワーカーさんを増やすことを担うマーケティングチームは学生やパート・アルバイトをターゲットにして「すぐ働けて、すぐお金がもらえる」という利便性を訴求し「アルバイト」→「スキマバイト」のムーブメントを起こそうとしていた一方で、PRチームは社会人の副業に着目した「お金を稼ぐだけではない自分の成長や知識、経験を増やしていける働き方としてのスキマバイト」のアプローチを行っていました。また政府への働きかけをするGR(Government Relations)では、「スポットワークという働き方がセーフティーネットにもなりえる」という側面を伝えていました。
加えて当時は、スポットワーク市場が徐々に広がっており、競合他社も参入しはじめていた時期。それぞれの部門が最善を尽くして事業成長に寄与する一方で、「ブランド」としてどうあるべきかを考え、ブランドコミュニケーション戦略を策定し実行する、横軸を通す部署が必要だと感じました。

ブランドコミュニケーションを統合していく上での大きな課題

ブランドコミュニケーションを統合していく大きな課題の1つに「組織」があります。マーケティング部、ブランディング部、PR部、PA部、人事部など、部署ごとの裁量で動いている企業がほとんどだと思います。私たちもそうです。
ブランドコミュニケーションを統合していくことは同意されても、実際にはそれぞれの部署が向き合うステークホルダーや目標、KPIなどが違い、優先順位が異なるため、「組織」の課題が大きいのが実態です。

企業フェーズにもよりますので、必ずしもブランドコミュニケーションを司る部署を作って統合していく必要はないのですが、横串を通して見ることができる役割の人や少人数のチームを置くことで、目線を合わせやすくなり、ブランド全般の情報も集約されやすく、一貫性のあるブランドがつくりやすくなると思います。
タイミーでのブランドチーム(BX部)では、ブランドとして核となる「どんなブランドであるべきなのか」を代表をはじめ経営陣、関係部署の方々と議論しながら方向性を決め、一貫性のあるブランドとして世の中から応援され(好かれ)、嫌われないようにするための役割を担いました。

「ブランド」があると経営にとって何が良いのか

そもそも「ブランド」があると、経営にとって何が良いのか? これはとてもよく聞かれる質問です。簡単に箇条書きにすると、以下などがあります。

・ブランドの一貫性が生まれ嫌われにくくなる
・ファンがファンを広げてくれる
・競合との差別化ができる
・価格競争に負けない
・アセット化され投資コストを抑えることができる
・従業員の士気も高まる

つまり、結果として選ばれ続ける。それにより、LTVの向上・持続など効率よく利益が出るという経営的なメリットがあります。

生活のインフラとなりえるマスブランドの「選ばれ続けるポイント」とは

私が過去携わった「クックパッド」では、Rakutenレシピ、Yahoo!レシピなど巨大資本企業が参入したレシピ事業でしたが、ミッション重視のプロダクト設計とブランディングで選ばれ続けることができました。

クックパッドと楽天レシピのブランド観点での比較

Rakutenレシピ、Yahoo!レシピと巨大資本企業が参入したレシピ事業だったが、「毎日の料理を楽しみに」というクックパッドのミッションを体現する「レシピ投稿がしたくなるUIUX」や「つくれぽ機能」「“春パスタ“で1位等の賞賛」など料理の作り手の普遍的な欲求に応えたサービス設計、レシピを載せるユーザーに徹底的にフォーカスした世界観の醸成(法律的にはレシピには著作権はないが、著作権はレシピ作者にあるものとしたスタンスを取る等のブランド方針)にこだわったクックパッドが市場を牽引し、「クラシル」や「楽天レシピ」を押さえて未だ守る結果になっています。
Yahoo!レシピは2012年6月にサービスを終了しクックパッドに統合(業務提携)されています。またRakutenレシピはクックパッドを抜けず、成長は鈍化しています。

木村が携わったブランド一覧とミッションや選ばれるポイントの整理

当時のブランド戦略の考え方


タイミーにおいては、ブランドとして核となる、どんなブランドであるべきなのかなど、ブランド戦略を立てる上で以下を考えました。

①What to do
ミッションを体現するために、何の活動をするか・どんな活動に注力するか→ブランドアクション戦略ミッションを感じていただける活動にフォーカスし、ブランドファクトをアウトプットする。

②How to communicate
ミッションを体現するために、どのようにコミュニケーションするか
→ブランドコミュニケーション戦略①で決めたことを誰に、いつ、どのようなメッセージで、どのように伝えるのかを決めて実行する。これはもちろんBXだけではないので、CMなどマーケティングでのコミュニケーションはもちろん、PA(パブリックアフェアーズ)、プロダクト、人事、デザインなど全部署の世に出るタイミーの印象を創り出すアウトプットを確認し、一貫性を担保しています。

BX設置時の2021年時点のブランドの課題は、サービスの特長はある程度伝わっているものの、サービスを使って得られるベネフィットを感じていただけていない(訴求できていない)のではないか、というものでした。そこで私たちが目指すあるべき姿である「ミッション」(意味付け)を体現することの重要性をブランド戦略の軸に据えました。

ブランド戦略のロードマップの詳細は記載しませんが、上記以外にも会社としての事業目標やプロダクト目標、ユーザー数(ワーカー数、事業社数)に加え、認知率(第一想起なども含む)、浸透率、ブランド浸透度(ミッション体現度)などの目標を決め、トラックしながら進めていました。

「ミッション」を感じてもらえるファクトの開発と適切な世論形成の重要性

「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」というミッションに接続する事業や機能、取り組みを発信し、適切に世論形成していくことは一貫性のあるブランドをつくる上で非常に重要ですが、事業や機能など経営陣や社内からくる情報を待っているだけでは受け身チームになってしまいます。
ない場合はファクトを“創る”こと、それがブランドチームとして最も重要なことです。またミッションを伝えるためのコミュニケーションについてもお話しします。

会社のあらゆる発信に一貫性があるか

新規事業や機能、1つの取り組みにおいても、「ミッション」に接続するストーリーを描いて発信すること。万が一、ストーリーが描けない内容は発信しないというのも、一貫性のある強いブランドをつくる上では重要です。金太郎飴のようにどこを見られても切り取られてもタイミーの「ミッション」につながるか、をブランドとしては大切にしています。また、他部署でリードしている施策においても、「ミッション」に接続するストーリーを強固にできるファクトを考え、入れ込むこともあります。
例えば、以下の事例があります。

例1:働き手のスキルや実績を可視化することで、自分に自信が持てたり可能性が広がる「バッジ機能」

「バッジ機能」プレスリリース

「バッジ機能」により、働き手にとっては、「タイミー」での勤務を通じた実績がこれまで以上に可視化され、付与された「バッジ」に関連する業務の求人が届きやすくなります。働き手自身の得意なことやできることを活かして働くことでのやりがいが向上し、人生の可能性が広がるきっかけになることを伝えています。
また、事業者にとっては、求めるスキルを持つ働き手とマッチングしやすくなったり、働き手ごとのスキルや実績に合わせて当日お任せする業務を事前に考えやすくなることで、さらなる事業貢献につながり可能性が広がることを伝えました。

例2:キャリア形成や正社員としての長期就業を希望するスポットワーカーの可能性を広げる新規事業「タイミーキャリアプラス」

「タイミーキャリアプラス」プレスリリース

「タイミーキャリアプラス」は、資格や経験等の有無にかかわらず、挑戦したい仕事ができるようになるための機会を提供するサービスです。希望者は「キャリア相談」や「資格や免許取得」「スキル習得のためのリスキリング講座」を受けることができ、キャリア形成や正社員としての長期就業を支援します。
これは一人ひとりの働き方の可能性を広げると同時に、「スポットワークはキャリアを形成できない」「経験が蓄積されない」というスポットワークのイメージを変えるファクトにもつながっています。
2023年4月にタイミーワーカー1,656人を対象に実施したアンケートの結果では、全体の約70%の方が何らかの資格・免許を取得希望であることが分かりました。
また、別の調査では、「タイミーを通じて良い職場と出会えたら、そのままその職場に長期就業したい」と考えている働き手は、全体の72.4%。実際に勤務先から長期就業を打診されたことがある働き手は43.4%で、その内14.7%が、実際に長期就業をしたことがあると回答しており、「タイミーキャリアプラス」で人生の可能性が広げられるきっかけになるのではないかと可能性を感じています。

例3:「はたらくインフラ」として何ができるか考えた、令和6年能登半島地震の被災地支援

令和6年能登半島地震支援についてのプレスリリース

令和6年能登半島地震で被害にあわれた地域や地域の皆様に対して微力ながら当社ができることを検討し、労働力確保が困難である石川県・富山県・福井県で被災者の受け入れを行なっている1.5次避難所、2次避難所に対し、令和6年1月22日(月)より一定期間サービス利用料を無料とする支援を開始しました。
ブランドとしては以下の支援方針を掲げ、役員や事業部など関係各所と支援内容を考えました。

  • まずは状況に合った支援を行い、状況を見ながら必要な「はたらく」にまつわる支援をしていく。

    • タイミーだからこそできる「はたらく」にまつわる支援をする。

    • インフラは有事の時に力が発揮される。水道インフラをガスインフラが代替できないのと同じで、有事後の復興期間中でも人手不足が解消できてすぐ働けることを後押しできればと思うので状況を見ながら随時支援内容を検討する。

上記以外にも、2017年の「副業解禁」、2022年の「派遣法改正」、2022年〜2023年の「働き方改革」による「会社員」の副業利用が伸びた実績や、「シニア層」や「主婦・主夫層」の利用拡大、介護、保育などの有資格者の利用拡大などの実績も、ミッションにつながるファクトとしてストーリーに盛り込んで発信しています。ぜひプレスリリースをご覧ください。

ミッションを伝えるためのオンラインとオフラインの取り組み

タイミーのオウンドメディア「タイミーラボ」など、ブランディング・ブランドマーケティングとしてのオフライン、オンライン施策についてもお話しします。
もちろん、TVCMなど各種広告でも先述した「バッジ機能」の訴求として、スキルが可視化されることで自信を持っていく様子やバッジを獲得することで仕事のリクエストが届きやすくなることを伝え、ミッションにつながるコミュニケーションをしています。
マーケティングとしての広告とは異なる、これからお話しするブランドとしてのオンラインとオフラインの施策は、「サービスや商品に対して情緒的かつ好意的な感情を持ってもらう」「ファンをつくる」という観点で効果的です。
施策のHOWに関しては、マーケティング施策とブランディング施策は同じ手法を活用することが多いです。例えば、TVCM、デジタル広告、OOH、インフルエンサーマーケティング、オウンドメディア、SNSなど手法は同じになります。マーケティング施策とブランディング施策の違いは目的とKPIです。マーケティングの主な目的は、ユーザーになり利用回数を高める目的でファネルにおける最適化を担う(獲得・育成・維持)こと、KPIは事業に直接的につながる稼働率や回数の向上などが挙げられます。
ブランディングの目的は、サービスや商品に対して情緒的かつ好意的な感情を持ってもらいファンになってもらうこと、KPIはアスキング調査でのブランドイメージや共感度、好意度などのリフトアップや、SNS等でのエンゲージメント、WAU/MAUなどが挙げられます。目的やKPIが異なるためHOWの施策は同じでも訴求ポイントやクリエイティブなどは異なります。この両輪を意識して施策を実施することがブランドづくりには重要です。

ミッションを伝える、オウンドメディア「タイミーラボ」

オウンドメディア「タイミーラボ」

オウンドメディア「タイミーラボ」では、ミッションを伝えるブランディング目的で運営しており、タイミーを利用いただいている働き手、事業者のインタビューを通じてスポットワークのポジティブな世論形成や、タイミーが目指す新しい働き方の提案や紹介をしています。
また、世間で「闇バイト」がとり立たされた時には、法律に抵触するような犯罪行為に巻き込まれないように、働き手の方を守るべく啓発活動としてタイミーラボで取り上げました。タイミーアプリ内にも掲載し、今までで最も多く閲覧や記事に対するコメントも寄せられるなど、大きな反響をいただきました。これは、タイミー上に「闇バイト」案件があるのかもしれない、と不安を助長させてしまうことにも繋がり兼ねない取り組みでしたが、ブランドとしては働き手を犯罪行為から守ることが最も重要だと判断し、啓発活動をする意思決定をしました。
事業においては、常に判断に悩む場面があります。そうした時にも、ブランドとしての一貫性は効果を発揮します。

「闇バイト」啓発記事

ミッションを体現したストーリーを伝える「ブランドムービー」

「ブランドムービー」プレスリリース

ワーカーさんによる実体験をもとにした、ブランドムービーを制作。タイミーで働く経験を通して、人生における可能性の多様さに気づき、なりたい自分へ一歩踏み出す様子を映像として表現しました。

スキマが自分の可能性を広げる価値になることを伝える「街中スキマ広告」

「街中スキマ広告」プレスリリース

ミッションを体現する「ファクト」を創り、ブランドを創っていく

ここからは先述したような「ファクト」を創った事例です。
経営陣や他部署からの情報を待っているだけではなく、ない場合は出していきたい「ファクト」をゼロから創ることが重要です。

スキルの可視化や待遇向上、新しい採用・育成モデルに挑戦した、ワーカー、事業者双方の可能性を広げる「THE 赤提灯」

「THE 赤提灯」プレスリリース

「THE 赤提灯」は、「新店のアルバイトが全員スポットワーカー」をコンセプトにした、全てのアルバイト従業員を「タイミー」ワーカーで構成する居酒屋です。
タイミーが所有するスキマバイト人材の活用・育成ノウハウと、株式会社ミナデインの飲食業界における人材育成の豊富な知見を掛け合わせ、「はじめての人が働きやすいこと」を追求した独自のカリキュラムを設計し、飲食店で働くスキルの可視化、飲食業界の人手不足を解消する新しい採用・育成モデルに挑戦した店舗です。

まだ前出の「バッジ機能」がプロダクトに実装される前だったので、飲食業の新たなスキルを獲得する機会の場づくりや自信を持って働けたり、さらなる成長意欲が高まる仕組み、スキルに合わせて時給が高くなるなどの「ファクト」を創り出し、先行的に働き手の人生の可能性が広がることを目指しました。

オープンから1年以上経った今も多くのメディア様に取り上げていただき、事業への貢献、ブランドイメージの向上にも寄与しています。またオープンから2600人以上(2024年6月時点)のワーカーさんのミッションを体現する場にもなっています。アルバイト全員がスポットワーカーの「THE 赤提灯」開業1周年のレポートもぜひご覧ください。

「THE 赤提灯」開業1周年のレポート

ワーカーさんの夢や目標の実現を応援する「Timee Talks」

「Timee Talks」プレスリリース

「Timee Talks」は、タイミーを通して勤務経験を積んだ働き手のみが参加できる特別プログラムです。人生における可能性の多様さに気づくことで、新しい道に一歩踏み出す機会の提供を目的に、人生の可能性が広がる経験・学び・挑戦の場を提供しました。
優勝者には100万円の賞金に加え、「夢や目標を叶えるために必要な重要人物や有名企業と繋がることができる権利」も贈呈され、人生の可能性が広がるきっかけにつなげることができました。参加者91名全員が「人生の可能性が広がった」と回答くださり、タイミーに対する心理的ロイヤルティの向上やミッションを体現するファクトの創出にもつながっています。

ミッションの体現をサポートするタイミー公式youtube番組「あしたが楽しくなるラジオ」

「あしたが楽しくなるラジオ」プレスリリース


「働く」「キャリア」「豊かな時間」をテーマに日常での人生の可能性が広がるヒントをお届けする「あしたが楽しくなるラジオ」では、ワーカーさんやリスナーから松浦弥太郎さんに聞きたい質問をいただき、アンサーバックしながらリスナーのミッションの体現をサポートする番組です。

このように、選ばれるブランドになるためにはブランドとしての「一貫性」が大切で、その「一貫性」は各ブランドが大事にしている世の中から見た「期待・意味(タイミーでいうミッション」)を感じてもらえるファクトと適切なブランドコミュニケーションを徹底してやり切ることが重要です。

②「インフラ」になるためには、「嫌われないブランドコミュニケーション」も重要

好きになってもらうための活動は、どこの企業でも当たり前にしています。インフラということは、多くの人が使いたい時に使える状態になっているので「マスブランド」になるということです。そのためには嫌われないための守りのブランドコミュニケーションも重要になります。ここでも前述のように「一貫性のあるブランドとしてのコミュニケーション」が必要です。
前述した「闇バイト」に関する啓発活動も、ブランドとしてはネガティブな発信になる側面がある中で、トレードオフを理解した上でワーカーを守ることを重要だと判断しての“守りのブランドコミュニケーション”にあたります。
ここではスポットワークのリーディングカンパニーとして、「はたらくインフラ」としての守りのブランドコミュニケーションについてお話しします。

自社にとってプラスでない内容でもリーディングカンパニーとして併用リスクを啓発する

複数サービスの併用リスク記事


現在、パーソルグループのシェアフルやLINEスキマニに加え、メルカリハロも参入。加えて今秋には、リクルートやディップと大手人材企業の参入が相次ぎ、スポットワーク市場はさらに拡大し、競争は激化します。
スポットワークサービスが増えていく中で、事業者が複数のスポットワークサービスを併用することで生じる問題点やリスクが指摘されており、スポットワークのリーディングカンパニーとして、「はたらくインフラ」を目指す企業として、この併用リスクについて事業者様や業界全体に伝えるべく啓発活動に取り組んでいます。
事業者の労務管理負担を軽減し、ワーカーの安心・安全を担保しながら働ける環境を担保し、人手不足を補っていく必要があります。さらに、これらの課題を解決し適切な労務管理ができる仕組みをスポットワーク業界全体で考えて実行していくことが重要です。

問題が疑われる事案発覚時のスピーディーかつ透明性のある対応の重要性

1回目のプレスリリース

プラットフォーム上に問題が疑われる募集案件の投稿されている可能性があった際に、スピーディーかつ透明性を持ってワーカーや事業者、メディアにも現状報告を行うスタンスも重要です。

当時、リコール運動において集められた署名の中に、偽造が疑われるものがあったことが報道されました。これに関連して、一部SNS等で、当該偽造に協力するアルバイトの募集のために用いられた求人媒体等の一つに、弊社サービスがあるとの指摘がありました。報道や当該ご指摘等を受け、早急に社内で調査したところ、関連すると思われる求人が過去に存在していたことが確認できたため、状況をスピーディーに開示し、1週間後には、経過及び解決策の追加リリースを出しました。
この時もスポットワークのリーディングカンパニーとして、「はたらくインフラ」としてこのような使い方をされたことは遺憾であること、この事態を防げなかったことやワーカーへの謝罪、まだ課題があることを認識しスピーディーに改善していくスタンスをステートメントとして表明しました。
本事案はメディアで報道はされたものの、情報開示を透明性を持って、スピーディーに対応をした結果、タイミーに対するネガティブな報道は最小限に抑えることができました。

2回目のプレスリリース

このように「嫌われないブランドコミュニケーション」においても、ブランドとしての「一貫性」のある対応が重要です。スポットワークのリーディングカンパニーとして、「はたらくインフラ」としてどうあるべきかを最優先に考え、自社にとって決して良い内容ではなくても、ブラントとして大事にしている世の中から見た「期待・意味(タイミーでいうミッション」)を裏切らない対応が重要です。

③IPOに向けてのブランドコミュニケーション戦略とは

まずはIPOというまたとない会社のモーメントを活かして、目標にしたい「パーセプション」を決めるところから着手します。

IPOの時期が見えてきた上で、まず最初にやったこと

IPOの時期が具体的に見えていた時点では、タイミーはブランド・エクイティの③ブランド品質のフェーズに注力していました。まず、以下のstepで進めていきました。

①【ASIS】改めて自社や自社サービスの現状イメージを客観的に理解する
自社、自社サービスにどのようなイメージが持たれているのか。定期的に外部での定量調査や自社ユーザーへの定量調査や定性調査で把握し、WEBや各種SNSでも自社、自社サービスに対する論調を検索しリサーチをしています。この時期に特に重要なのは、ポジティブではなくネガティブな論調に目を向けることです。それを変えていくタイミングにIPOというモーメントを活用できないかを考えました。
まずは、どのようなイメージが持たれているのかを、一歩引いた視点で正しく把握することが大事です。そうしないと、その後のブランドコミュニケーションが独りよがりになってしまい、必要なパーセプションチェンジができなくなってしまいます。
また、業界全体の課題や日本の社会課題にも自社や自社サービスがどのようにつながるのか、自社のみのミクロ視点以外にマクロ視点でのリサーチもします。
メディアが出している自社やスポットワーク業界、人材業界、労働まわりの記事の露出の先の論調(記事に対するコメントや派生したSNSでの論調)や有識者や一般の方々の反応などで把握することも重要です。

PRの方からよくご相談をいただくのは、ニュースリサーチをするというHOWは分かっていて実際にやっているが、正直何のためのニュースリサーチしているのか分からないという内容です。
私の場合は、ニュースやニュースの先の論調を見ることで、民意としてはこういう意見がマジョリティであるとか、このような課題を抱く人が多いとか、賛否両論でこのような意見も一定あるなど、またそれはなぜなのかを間考え、分析したり、事実の掛け合わせで新しい打ち出しの戦略やアイディアを考えるためにニュースリサーチをしています。

②【TOBE】①も踏まえ、IPO時にどのような価値・どのような存在として認識されたいかを決める
タイミーでは、代表や経営陣、各部署の代表を集めて数回に及ぶワークショップを経て「ブランド規定」を策定しています。要素は「ブランドアイデンティティ」「提供価値」「ブランドパーソナリティ」「強み・他社との違い」です。詳細は控えますが、この「ブランド規定」も踏まえてTOBEの状態を設定し、代表とすり合わせをしていきました。
ネガティブ寄りなイメージには、具体的には以下のようなものがありました。
・ただのスキマバイトサービス
・不安定な雇用を増やすサービス
・若い急成長ベンチャー
・1日1時間からの雇用契約は、どのように実現されているのかわからない
・学生や若い人向けのサービスで、自分には使えない
※実際には「学生」と「会社員」が約30%、年齢は20代が35%で10代、30代、40代が15~17%で同じ、50代以上も15%程度いて満遍なくご利用いただいています。
など

タイミーワーカーの属性

③:①②を踏まえて、IPO時の「パーセプションチェンジ」の内容を決める
「企業、従業員共に若い急成長ベンチャー、ただのスキマバイトサービス」という認識から、「一人ひとりの働き方をより良くすることを通じて、日本を元気に豊かにすることに本気で取り組む企業」という認識に「パーセプションチェンジ」したいということを決めました。
IPOというタイミングで、まだタイミーの名前だけ知っているけどよく知らない方々、ネガティブに捉えている方々にも、タイミーがどのような社会課題の解決をしていこうとしているのか、どのくらいのユーザーにどのように役立っているのか(心理的なロイヤルティを持っていただいているのかも含め)。会社のことを理解、共感いただき、応援してもらえる存在になりたいと考えていました。

④この「パーセプションチェンジ」を行う上で、重要になるファクトの洗い出しと打ち出し方の文脈策定
ここで注意していたのは、パーセプションチェンジとはイメージ戦略ではないということです。つまり、実際の「ファクト」がないと説得力がなく、設定した「パーセプションチェンジ」はできません。

一貫性の部分でも「ファクトを創る」重要性をお話ししましたが、能動的に事実をつくり、それを社会問題や課題、会社のイメージと照らし合わせながら戦略的に発信していくことを、日々実行しているかどうか。それが重要になります。

IPO時に実施した「記者会見」やメディアからの個別取材で代表から話す内容はこのファクトを盛り込み、伝えたい「コアメッセージ」も策定してブランドコミュニケーションの軸にしていきました。これはPRだけではなく、IPO時のブランディング広告や対外的に弊社の成長の軌跡などを紹介する「BRAND BOOK」にも一貫性を持たせて入れ込んでいます。

タイミーの成長の軌跡を紹介するオンラインブック「BRAND BOOK」

IPO時のコアメッセージ

パーセプションチェンジをしていく上で、コアメッセージを策定。

コアメッセージ

⑤コアメッセージに対しての具体的なファクトと、ネガティブ寄りなイメージや疑問に対するアンサーバックのファクトも入れる
前述のように、コアメッセージを伝えるためには説得力があるファクトが必要です。今回のタイミーの事例ですと、はたらくの固定観念の何を変えてきたのか、どのようなデータを活用してさらに変革させていくのか、それによってどのような世界にしたいのか、という内容を記者会見資料や社長取材に盛り込んでいきます。また、現状(当時)のイメージの中で特に変えていきたいネガティブ寄りなイメージに対してもアンサーバックするファクトを入れていくことで、パーセプションチェンジにつながります。

コアメッセージに対しての具体的なファクトを言語化する


1、どのような固定観念を変えてきたか
例えば、「履歴書や面接無しで働くことができる」「 1 日1 時間から働くことができる」「働いた後すぐに銀行振込ができて引き出せる(即金)」「引き抜きが無料」などが挙げられますが、こういった提供価値は、人材業界の中で今までなかったことでした。

2、どのようなデータを活用するのか

タイミーが積み上げてきた「はたらくにまつわる様々なデータ」として、「どの業界、どの職種、どこの事業所でどのくらい働いているかの稼働データ」先述した「バッジデータ」や「相互評価制度のデータ(GOOD率)」、「ペナルティ制度のデータ(無断欠勤率約0.2%など)」などを活用しマッチングの精度向上や待遇向上、タイミーキャリアプラスなどにつながると考えています。
また、スキル習得ができる店舗(「先述したTHE 赤提灯」)や事業者や自治体とのスキル研修会や資格取得支援も行い、それらもデータとして蓄積されています。

「パーセプションチェンジ」するためのファクトを作るor整理する

パーセプションチェンジをしていくには、ネガティブ寄りのイメージや世の中からの疑問に対するアンサーバックをしていくことも重要です。

1、スポットワークという自由な働き方を推進することは、非正規雇用の増加を助長することになるのではないか

・日本においての「不本意非正規雇用」は減少傾向
日本の非正規雇用者は増加傾向にあり、「あえて」非正規を選択する労働者も増加(総務省統計局「労働力調査」2024年2月)。「正社員雇用がない」は減少傾向で「ライフスタイル応じた選択」が増加傾向。理由は「自分の都合の良い時間に働きたい」「家事・育児・介護などと両立がしやすい」が増加傾向。不本意非正規雇用は少ない。
参照:労働力調査 詳細集計 全都道府県 全国 年次

「不本意でスポットワークをしている人」の割合は、非正規労働者全体に比べて低い
2024年7月に618名を対象に実施した外部調査機関によるインターネット調査では、スポットワーカー(タイミー以外も含む)は「正規の職員・従業員の仕事がないから(不本意非正規雇用)」という理由でスポットワークをしている人の割合は全体の4.2%でした。総務省実施の労働力調査では9.3%(※)であったことから、「不本意でスポットワークをしている人」の割合は、非正規労働者全体に比べ5.1pt低いという結果が出ています。
また、「自分の都合の良い時間に働きたいから」という理由でスポットワークをしている人の割合は全体の58.7%でした。労働力調査では35.1%(※)なので、時間に縛られない働き方を望んでいる人の割合は、非正規労働者全体に比べて23.6pt高いことも分かりました。
※ 労働力調査(詳細集計)2024年(令和6年)4~6月期平均https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/4hanki/dt/pdf/gaiyou.pdf

スポットワークの働き方を活用している理由

スポットワークのみで生計をたてていると回答した人は全体の0.6%
スポットワーカーの99.4%が本職と兼務している
という結果でした。ほとんどの働き手が正社員職やパート・アルバイト職などの本職と兼務していることも、スポットワーカーの不本意非正規雇用率を押し下げている要因と思われます。

職業について

2、スポットワークはキャリアの蓄積やキャリアップ、スキルアップがしにくいのではないか

「バッジ限定お仕事リクエスト」プレスリリース

「バッジ限定お仕事リクエスト」は、事業者が各都道府県の最低賃金よりも150〜200円以上高い時給を設定して、「バッジ」保有者に限定して求人を公開することができます。これにより、働き手はこれまで「タイミー」で得たスキルや実績をもとに、通常よりも高い時給で働くことができ待遇の向上につながります。また、先述したように正社員雇用や長期雇用を支援する「タイミーキャリアプラス」もあります。

3、賃金立替払いは、労働基準法が定める賃金直接払いの原則に違反するのではないか

グレーゾーン解消制度で適法と確認されたプレスリリース

事業の違法性を省庁に確認できる「グレーゾーン解消制度」を利用し、「本サービスを利用して行う、労働者への賃金支払い方法が労働基準法第24条第1項本文が定める賃金直接払いの原則に違反しないか」、「ワーカー様のご要望に応じた賃金の即日払いのサービスと、労働基準法第24条の第2項本文定める賃金毎月1回以上一定期日払いの原則との関係性」について2020年3月27日に厚生労働省に照会し、適法の回答を得ています。

取りたいパーセプションをより強固にするためのブランディング広告

タイミーが伝えたいコアメッセージを伝える手段の1つとして、以下2つのブランディング広告を出しました。ターゲットが異なるメディアでステートメントはほぼ同じで、クリエイティブを変えました。

①上場日当日の日本経済新聞でのブランディング広告
全国の日経新聞の朝刊に、ブランディング広告を出しました。コアメッセージを伝えたいターゲットは、事業者の方や投資家になりえるビジネスパーソン、行政の方々などです。
固定観念を変えてきた、というところの1つに、雇用する側と働く側の関係性をフラットにしていく(タイミーでは相互レビュー機能などがあります)という意味も込めていました。サービス開始してからの6年間の中でタイミーのミッションである「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」を体感してくださったユーザー(事業者、ワーカー)の皆様からいただいた実際の声をクリエイティブにした方が、自分たちで言うより伝わるのではないかと思い、このようなクリエイティブにしました。

「あなたがいてよかった」。
右側の赤色の部分は、実際にタイミーに寄せられた事業者様からの言葉です。

「究極の働き方改革が体験できました」。
左側の青色の部分は、実際にタイミーに寄せられたワーカー様からの言葉です。

日本経済新聞でのブランディング広告

②渋谷駅OOHでのブランディング広告「ちがい探し広告」
渋谷駅のOOHで、全長15メートルのブランディング広告を出しました。コアメッセージを伝えたいターゲットは、ワーカーさんになりえる生活者の方々です。

タイミーが広がる前と後のちょっといい「はたらく」“ちがい”をビフォー/アフターのイラストで表現しています。
よく見ていただくと、固定観念を変えてきた、タイミーでの働き方や機能などを楽しみながら見つけてもらえるように、間違い探しのクリエイティブにしました。

渋谷駅OOHでのブランディング広告「ちがい探し広告」

最後に〜競合がひしめく環境の中でのNo.1としての次の一手へ〜


メルカリの参入に続き、今後リクルートやディップなど大手人材企業のスポットワーク市場参入により、今まで以上に競争が激化します。今後の記事では、強豪企業の参入に対して、スポットワーク業界No.1のタイミーがどのようにブランドを構築をし、差別化を図っていくのかアウトプットに合わせてお話ししてみたいと思います。


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