日本オペラ協会公演「キジムナー時を翔る」感想
2/21は新宿文化センターまで、日本オペラ協会公演の「キジムナー時を翔る」を鑑賞しに行きました。青春割引チケットを使っています。沖縄が舞台のオペラは面白そうだな、と新鮮に感じて選んだのですが、作曲家の中村透さんという方について大変勉強になりました。
環境保護が題材の現代オペラ。1990年度に文化庁舞台創作奨励特別賞(グランプリ)を受賞されているとのことですが、リオデジャネイロで地球サミットが開催され12歳のセヴァン・スズキさんがスピーチをされたのが1992年であることを考えると、中村さんには先見の明があったのでしょうか。今はグレタ・トゥーンベリさんのような方が環境問題に取り組んでいる中で、再びこのオペラが上演されたということで、環境保護は永遠のテーマなのだということを感じさせます。
物語はタイムスリップものです。自然を大切にしない若者と自然を愛する少年が、キジムナーによって過去に行き、そして未来に行き。違う時代を見ることで新たな気付きを得て、現代につなげるわけですね。オバアは伝統行事を守り、リゾート開発に反対しますが、若者は行事に飽きて東京に憧れ、リゾート開発をして村の経済を回そうとします。私は昔だったらオバアのようなキャラクターが嫌いで、話が進まない原因になると思っていましたが、今はそういう考えも一理あるし、大切だと思えるようになりました。さて、物語はどのように収まるのか。
作品は三線と笛の音(これは録音のようです)で始まり、一気に沖縄の世界に引き込まれます。また、ところどころで琉球の音階が使われており、西洋発祥の楽器で琉球の音階を奏でるとすごく不思議な感じがして、またよく合っていました。20世紀の音楽ということですが、オバアのウタキでの1曲が、弦楽器の低音と高音のユニゾン、そして上昇と下降の対比になっていてとても美しい音楽でした。
オペラについては、演劇的要素と歌の要素が両方あって演じるのが大変だったと、前説で演出家の粟國淳さんがおっしゃっていました。おっしゃるとおり、演劇に歌が入ったかのような比重で演劇の部分がたくさんあり、それもまた新鮮でドラマを見ているようでした。
台詞には沖縄ならではの言葉がたくさん盛り込まれ、冒頭で「あんた、マブイ落としたんじゃないか」という言葉には拍手したいくらいでしたまた、木の名前や魚の名前(イラブチャーは食べたことあるから知ってます!!アピール)がたくさん出てきました。タイムスリップした先の16世紀ではバリバリのうちなーぐちで話すものですから、いつもオペラの言語を知らないまま見ている私にとっては、イタリア語、ドイツ語を聴いているのと同じような感覚になりました。
最後は伝統行事を「カルカリナ・フェスタ」と「横文字」にし、集客を図ると同時に自然と伝統保護につなげます。その場面での荘厳な歌唱の後にカチャーシー。やっぱり、沖縄が舞台だと最後のカチャーシーは必須ですよね。
キジムナーは性別がないということで、昨日は砂川さん(女性)、今日は中鉢さん(男性)というキャスティング。性別を超えて役が存在できるなんて、オペラならでは声の不思議です。
感染対策と言うことで、舞台には1枚スクリーンが降りていて、演者は皆フェイスシールドをしているという、それもまた新鮮な舞台でした。遠目からなので特に違和感がなかったのと、フェイスシールドがあってもしっかり声が響くので、さすが歌手の皆さんはすごいです。
ありがとうございました。