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シュルレアリスム絵画と、人間の心の奥底に眠る「無意識」の世界

 この2つには深い繋がりがあります。

 シュルレアリスムとは、人間の「夢」や「無意識」を表現した絵画ジャンルで、一目見ただけでは理解できない奇妙な世界観が特徴です。

 1924年にアンドレ・ブルトン(1896-1966)が発表した『シュルレアリスム宣言』がその始まりです。
 彼は、ジークムント・フロイト(1856-1939)の精神分析学に影響を受けました。
 フロイトとは、患者の「夢判断」によって人間の「無意識」の領域を発見したオーストリアの精神科医です。
 人間が眠っている時にみる「夢」には、その人の心の奥底にひそむ何かが現れている……。


 代表的な画家としては、ぐにゃぐにゃに溶けた時計の絵《記憶の固執》で有名なサルバドール・ダリ(1904-1989)や、独特の遠近感をもつジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)などが挙げられます。

 その中でも、私が特に好きなのは、ルネ・マグリット(1898-1967)です。

 サムネイルは、彼の作品の一つである《不許複製》、または《複製禁止》(1937年、キャンバスに油彩、81.3cm × 65cm)です。
 絵画全体を見ていただければ分かるのですが、画面手前の男性は鏡を見ているんです。それなのに、鏡の中に映っているもう一人の男性もなぜか向こう側を向いています。

 このように、彼の作品の中で描かれている人間の大半は、「顔」が不完全に描かれています。

 これが、彼自身の「無意識」と関係があるんです。

 マグリットの母親は、彼が幼少期の頃に入水自殺をしました。引き上げられた遺体の顔には、彼女が着ていたネグリジェが巻き付いていたそうです。その強烈な光景が幼いマグリットの脳裏に焼き付き、そのトラウマが後の彼の作品に影響を与えたといわれています。

 人間の夢や無意識の体現を試みたシュルレアリスムの画家たちの中で、「自分自身の無意識のトラウマが表出されている」というのがルネ・マグリットの作品です。

 そこに私は惹かれました。


 そういえば、前回のnoteで話した『パプリカ』も、シュルレアリスムの一種だと思います。

 他にもシュルレアリスムの世界観を表した映像作品があるかもしれません。


 フロイトが発見した「無意識」は、現代の私たちの「個性」の起源であると思います。




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