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アブサンと溶けた恋

隣の村の魔女が秘密の薬草を特別に調合したような味のする、クセの強いお酒アブサン。
思わず顔をしかめてしまう薬みたいな味だけど、不思議と数年に1度、急に思い出して飲みたくなる「緑の妖精」とも呼ばれるこのお酒。

10年くらい前、当時の恋人と住んでいていたアパルトマン。 
その頃よく来ていたアブサンが豊富に揃った隣のカフェ。
私の中であの頃の思い出と深く結びついている薄緑のお酒。
あの頃。
骨まで溶けそうな恋をしていた頃。


去年、オルセー美術館で開催されていた「マネ/ドガ」展で再会した、エドガー・ドガが描いたアブサンを飲む女性の絵。
中学生の頃に画集で見て以来、ずっと変わらず惹きつけられるドガのこの作品。

独特の構図のせいか、孤独感や虚無感を強く感じるこの絵。
アブサンを前に座り、虚ろな目をした女性は日常に疲弊しているようにも、物思いにふけっているようにも、ただアルコール度の高いアブサンの酔いが回っているようにも見える。
この絵を前にするたびに、昔からいろいろ想像してみるのだけど、今回はふと、この女性もアブサンを飲みながら過去の恋を思い出したりしていたかもしれないなと思いました。

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