
ネットプリント「絶島」番外編を読む
『絶島Ⅳ』の感想もまだなのに、番外編に吸い込まれてしまったので先に書いてしまいます。
昨年の文フリ以降、わたしのなかで最も熱い同人さんである「絶島」の感想となると、必ず長くなる……。Xのツリー投稿だと大樹が生えてしまいそうなので、noteに書くことに。
ネタバレになってしまうからね…!と自分を抑えつつ、作品の完全な引用は控えております。(が、全部言っちゃっている気もするので、ごめんなさい)
※日付順
榎本ユミさん
「~したくてする嗚咽」のなんともいえない韻律がとても好きでした。「おえつ」って実際の音も含まれている気がします。結局は涙が出るばかりで、吐き出したいものも満足に出し切れていないような、そんな気持ちを思い出しました。
「世界三大がっかり」に笑ってしまった。たしかにマーライオンといえば、水を吐いていてほしい!
シンガポール、実は家族で行こうと計画していたときにコロナ禍になってしまったので、行きたい国のひとつです。あとお写真の背景にあるあのホテルも、憧れのところ……。
涌田悠さん
小説の冒頭のようなうつくしい文章、そしてそれ自身が波をもっているような歌に惹かれました。お互いに響き合っている感じ。お写真と合わせて読むと、さらに躍動感をもって迫ってきます。
ダンサーをされていると知り、いまにもダンスの始まりそうな緊張感と静寂がこの一角から伝わってきました。
奥山いずみさん
「空想と空論の中間」、あいまいなもののなかのさらにあいまいな部分。謎めいた雲の写真にぴったりだと思いました。「あごをつんと」で、読者も自然と上を向いて空を見てしまうような。
「あばら雲」! たしかに言われたらそう見えます。「龍の骨格」わたしも気になってきました。ぐねぐね動けるから、背骨がながくながく連なっているのかなあ。
西村曜さん
三首もあってすごく嬉しかったです‘。
「人の子は」の歌が特に印象的でした。「光のほう」といわれると、いまいるところは闇というわけではないが暗さがある。当然そのような環境を好む生きものもいるのですが、子どもにそういうことをいわれたらドキッとしてしまいそうです。
パンダ、百分待ちなんだ……! ホッキョクグマ、好きです。ふごふごと動いているのをみると嬉しい。
早月くらさん
「工場へと」の六音で、冬の来るその道のりというか流れが表されているように感じました。「未来のしずけさ」もとてもわかるし、かつ詩情もあって。句またがりによる、二音ずつにわかれた結句のリズムが心地よかったです。
金木犀の香りは独特で、何にも負けないつよさを感じます。花粉がくるときはくる人間なので、鼻炎で気づかなかった同僚さんにも共感してしまいます…金木犀を感じないというのはよほどお辛い状態ではないかと…お大事に…!
文月さとさん
今回、特に惹かれたお歌。「ときめき」「太古の森」こんなに魅力的な取り合わせがあるなんて。目から鱗、耳からどんぐりでした。実際に齧るのはリスなどを想像しますが、さいしょの主体が「わたし」であるかのように読めて、それが結句につながっている気もして。とても好きでした。
短いエッセイの、「わたし」の認識が森の生きものと混ざり合いつつ、最後に実際の手に収束していく流れ、ふとリアルな実感に立ち戻る瞬間が面白かったです。
朧さん
写真のチョイスが朧さんらしくてなんだか嬉しかったです(勝手なことを申してすみません…)みーちゃん、見つかっているといいですね。こういうポスターで、かなり古びているものを見かけると、どうかもう一件落着していて、剥がすのを忘れてしまっているだけでありますように、という気持ちになります。
歌は、自分の両手の強さと弱さが同時に表れている印象を受けました。「こぼれる」、と思ったし実際にすこしこぼれてしまったけれど「こぼれない」、ように頑張れたかもしれなくて、だからこれからは「こぼさない」。人が何かをしようとするとき、まず動く部分としての手、その重さが迫るように感じました。
櫻井朋子さん
二首、嬉しいです。
「タコさんウインナーの赤」の歌がとても好きでした。あの、おもちゃのようななんともいえない赤色。たしかに魂はもうそんな色はもっていないかもしれないな、と共感しました。生まれたときはもっと色とりどりだったのに。
お弁当のお話、深く共感しました。最近はもっぱら炊き込みご飯なのですが、ふりかけ選びのささやかな楽しみを思い出します。毎日かぶらないように選ぶあの感じ。「鮭あおさ」も見かけて気になったことがあります…気になっただけ…!
森山緋紗さん
緋紗さんのオノマトペの粋な使い方が大好きです。自分では決して思いつかなさそうな表現だけれど、納得感もあって、「ざーざーすー」はたしかにそうだなあと思いました。最後のほうは落ちていく砂の量が少なくなって、音も「すー」と細くなる感じ。
考えたくない、思い出したくないことというのはかならずあって、脳に余白ができると顔を出す。とてもわかります。現実逃避のために予定を入れて頑張っていた時期がありました。簡単には忘れられないけれど、少しでも日々を穏やかに過ごせますように。
島民のみなさまの日常を、ふわっと過ぎる風のような気分で覗いている感じ。とても楽しかったです。あと、流れるようなフォントが素敵です。何のフォントなんだろう。
『絶島Ⅳ』も読み終わってしばらく経ってしまいましたが、やはり心が痺れましたので、noteに感想を残したいです。
全体の雰囲気、空気がとにかく好きです。いつか迷い込んでしまいたい…!