いい子だった
最近、インスタグラムを開くと、オススメに、「繊細な人」「HSP」「敏感さん」などの言葉が並ぶようになった。もちろん、これはたまたまそうなっているのではない。おそらく、オススメというのは、ユーザーが興味のありそうなことを提示してくれている機能なのだろう。つまり、私の閲覧履歴に合わせて、最初に書いたようなワードを拾っているのだ。
私は、昔から「いい子」であった。そして、「いい子」であることに誇りを持っていた。自分で言うのはどうかと思うが、思い切って、お!も!い!き!っ!て!言うと、私は優等生だった。優等生であることが全ての正しいことだと思っていた。具体的には、先生や親の言うことはきく。言われたことを、最善を尽くしてやる。注意されたり、怒られたりするときは、言い返さず最後まで聞く。問題を起こしたりなどはなく、正直、先生にも良く出来る子と思われることもあった。学級委員や生徒会もやり、勉強もそこそこ出来た。
だが、ここ数年は「いい子」が私をどんどん締めつけ、苦しめているような気がする。今まで、「大人しく聞いていれば、」「言われたとおりにやっていれば、」丸をもらう為に無意識にやっていた態度は、どんどん私を一人にしていった。最近になって、それに気がついた。なぜなら私は少女時代、「いい子」でさえいれば、生きていくのに問題がなかった。ここ数年、自分の劣等感や、生きづらさに少しずつ気づき始めていたのだが。
学生生活が一区切りし、この春から新しい生活を始めた私は、今になってはっきり気がついた。ずっと一人だったことを。
もちろん、今まで本当に一人で生きてきた訳なく、たくさんの人に支えられ、助けられて生きてきた。しかし、その生活から離れてみると、私の周りには、とても限られた人しかいないということに気がついたのだ。
まず、友達が少ない。これも最近になって気づいたことだった。幼稚園や小学生のとき、私は比較的、友達が多いと思われる方で、実際、自分でもそう思っていた。誰にでも平等に接している、とか、いつも優しい、とか言われることも多く、私は誰とでも仲良くなれるんだ!と思っていた。しかし、中学生になると、違った。誰にでも優しくする、という自分の態度は変わらなかった。でも、周りは特に仲の良い子同士で、自然にグループになり、特定の人と仲良くする、という風潮が強くなった。思春期に差し掛かり、個性や性格が色濃くなっていく中で、仲の良い人で集まる、というのは必然的で、決して悪いことではない。だが、私はどこかのグループに属する、ということが出来なかった。特定の人と仲良くする、ということが出来なかった。ただ笑って優しくしているだけで、仲良くはなれないのだ。
そんな私は、当時、このことについて深く悩んだりはしていなかった。話したい時に話したい人と話せばいいし、無理にグループにいようとしなくたって良いじゃないか、と思っていた。今もその気持ちは変わらない。が、思い返してみると、いつも不安だったような、心に小さな穴があるような気がしていたことに気づいた。
何もかも一人で抱え込むことほど辛いことはない。ずっとわかっているつもりだった。でも、私には関係のない話だと思っていた。なぜなら、話したいのに話せなくて辛い、と思ったことがなかったから。しかし私は、その前に、「話したい」と思えなくなっていた。いつの間にか、友達に、自分について話さなくなっていた。話したいけど話せなかったのではない(人見知り&引っ込み思案ではあるのだが)。私の事を、他人に話したいと思えなくなっていた。私について、知ってほしいとも思えなかった。しかも、私は、そんな自分に気づいていなかった。いつしか、私のコミュニケーションは、受け身の、その場しのぎなものになっていた。
話したくなかったら話さなければいい、と思うかもしれないが、やはり人間は、どこかで自分を発信しなければならない生き物らしい。ついに、この間、私はちょっぴり壊れた。
私の中の、ダムでせき止められていた何かが溢れ、すごい勢いで流れ出た。大洪水である。幸い、私はそれを家族に受け止めてもらった。なんてことだ。こんなはずじゃなかった。こんなこと、望んでなかったのに。と思った。でも、今思えば必然的だったのだろう。私は、確実に刻一刻と貯水されていくダムの存在に、気づけていなかった。
ダムが破壊した結果、私は、今までの自分に気づいた。いつの間にか、出さないことが当たり前になっていた自分。そこから、見失ってしまっていた自分。そして、自ら生み出してしまった孤独を味わい、まだ何も動けずにいる、今の自分を知った。考えれば、今まで、「私は一人なんだ。しょうがない。」と諦めていた自分もどこかにいた気がする。
今は思える。ゼロになって、私が私を見つめ直して、誰かに私を知ってほしい。
人と会って、話して、誰かと繋がってみたい。
すぐには動き出せないかもしれないけれど、心は少しずつ動き始めている。上手く話せないかもしれない。まだ愛想笑いで、気持ちを誤魔化しちゃうかもしれない。でも、本当の自分を知って、少しずつでいいから、出会った相手に本当の自分を知ってもらおう。「いい子」だけじゃ終わらない、終われない、今この瞬間の自分を。
うーん、やっぱり
私のことを教えたい。貴方のことを知りたい。