【中学入試の思考力 vol.1】点字は何通り?
今日もお読みいただきありがとうございます。
フォルケ学園長の眞山です。
最近の中学入試では、思考力を問う問題が増えています。
丸暗記や処理速度を競う問題は、しょせんPCやAIに敵わない能力を試しているわけで、思考力にシフトした問題づくりをするのは決して悪いことではないように思います。
…が、そもそも思考力っていったい何だろう?
実はその定義は人によってバラバラなのかもしれません。
その定義を推しはかるためには、実際に出題された問題を見ながら「この問題で問われる『思考力』ってなんだろう?」と考えることが必要になりそうです。
というわけで、このnoteで、今後気が向いたタイミングで「思考力とは何か」を探る記事を書いてみようと思います。
今回はとある中学で問われた「点字は何通り?」という問題を考えてみましょう。
※なお、中学入試の問題は厳密には著作物であるということと、問題文そのものを掲示しなくても「思考力」を考えることに差し障りはないことから、学校名や出題年度はnoteでは明かさないことにします。
点字のルール
まずは点字の基本的なルールを紹介します。
点字とは、視覚障碍者の方が「触って読む」ことができるように工夫された文字のことです。日本では、「6点式点字」という方法が採用されています。
このような縦2列・横3行のうち「点がある場所●」と「点がない場所〇」の組み合わせで、文字を作るというわけです。
単純じゃない「場合の数」
この場合、点字は何パターン作れるでしょうか?
この問題を聞いたとき「簡単じゃないか」と思った方は、もしかしたらこういう数式を想像したかもしれません。
2×2×2×2×2×2=64通り
(いちおう算数の問題なので、べき乗は使いません)
あるいはこの64通りから「何も塗らない」を除いた63通り、とした人もいるかも。
確かに、この問題が単純に「1~6の点のいくつかを塗りつぶす方法は何通りあるか?」ということなら、これで正解なのですが、「点字は何通り作れるか?」だと正解にならないのです。
なぜか。
例えば、上図のうち①だけを塗りつぶしたものと、②だけを塗りつぶしたものでは、視覚障碍者にとって見分けがつかないからです。同様に③~⑥だけを塗りつぶしたものも、触っただけでは「点が1個」でしかないため、これらを異なるパターンとして考えるわけにはいきません。
同様に、
1と4だけを塗りつぶしたもの(①+④)は、②+⑤や③+⑥と同じだし、①+②は②+③、④+⑤、⑤+⑥と同じです。
こういった「触ると見分けがつかない」ものを除外しつつ場合の数を計算しなければならない問題になると、途端に一筋縄ではいかなくなります。
じゃあ、どうやったら数えられるか?
せっかくなのでご家庭でも考えてみてください。
思考力とは何か
この中学の問題を見る限り、中学入試における「思考力」とはこういうことなのではないかと思います。
日常の出来事について、既に学んだ題材を活かして考えること
その際、自分の目線だけでなく、あらゆる他者の目線を持つこと
イスラエルでは、「頭が良い」ということの意味を、人の気持ちがわかること、と教育しているという話があります。この話を聞いてから、私は「なんで勉強しないといけないの?」と聞かれたら必ず「人にやさしくなるためだ」と答えるようにしています。
そういう意味では、単に場合の数の計算方法を覚えているだけでは、ただしく勉強したことになっていません。それをどう使うと、生活に役立つのか。あるいは、自分以外の誰かの役にどう立つのか。
そのことを意識しながら勉強してほしいという願いが、この問題には隠されているような気がしてなりません。