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ヤマトタケル物語【隣のシグナス】《3.草薙の剣》

こんばんは! 湘南占い◆白樺の騎士団・七庭(ななば)です。

今回は「ヤマトタケル物語【隣のシグナス】」の続きをお送りします!

前回のお話は下記をご覧ください。(第3話の冒頭にも簡単なあらすじをのせています)

第1話からご覧になりたい方はマガジンからどうぞ!


今回もイラストは川上ケイコさんに描いていただきました(*^^*)


※この作品は私の創作神話です。無断転載、二次利用はご遠慮ください。(©︎2020 白樺の騎士団 七庭育)



◆剣(つるぎ)をめぐる冒険

【前回までのあらすじ】白鳥の姿で海の上を飛んでいたヤマトタケルは、船に乗った異国の神(フレイ)と出会う。仲良くなったふたりは素性を明かし合い、お互いの境遇に共通点が多いことに驚く。話の流れで、ふたりは尾張国へヤマトタケルの剣(草薙の剣)を取りに行くことになる。

尾張国を目指して海の上を進んでいると、陸地が見えてきた。

「いよいよ上陸だね、やっくん」

「うん」

フレイの言葉に相槌をうちながら、私は自分につけられた妙なあだ名に内心戸惑っていた。

"やっくん"か・・・。そんな呼び方今までされたことなかったな。


陸地に着くと、フレイは船を折り畳んでズボンのポケットにしまった。

「やっくん、ちょっと待ってね。今から友達を呼ぶから」

「友達?」

「そう。すごく頼りになる僕の相棒だよ」

フレイはそう言うと、呪文を唱えて指を鳴らした。

"パチン"という心地良い音が響き渡る。

すると、空の上から光り輝く何かが降りてくるのが見えた。

「金色の・・・猪?」

「そう! ここからはあの子に乗せて行ってもらおう」


やがて猪が地面に降り立つと、私たちはその背に乗せてもらった。

猪はふたりを乗せたまま空中を駆けていく。

「君の国、緑が多くて綺麗だね。気候も暖かいし、暮らしやすそうだ」

フレイが土地を見下ろしながらそう言った。

「そうだな。とても美しい所だと思うよ」

「ところで、剣がある所まであとどのくらいかかりそう?」

「もう少しで着くと思う。日が暮れる前に着きそうで良かった」

「そっか。あともう少し頑張ってね、グリンブルスティ」

そう言いながら、フレイは猪の毛を撫でた。


やがて尾張国に到着し、私たちは猪から降りた。

「ありがとう、グリンブルスティ。おかげで助かったよ」

私の言葉を聞いて、猪は嬉しそうに鳴いた。

「この子も、異国の空を走れて嬉しかったみたいだよ。冒険みたいで楽しかったんだって。それとやっくんのことがすごく気に入ったって言ってるよ」

「そうか。それは良かった。また会おう、グリンブルスティ」

猪を見送ってから、私たちは剣のある場所を目指して歩き始めた。


「そういえば、君の剣ってどんな剣なの?」

「私の先祖が大蛇を退治したときにその尾から出てきた剣だよ。東国征伐の際に叔母上が私に授けてくださったんだ。名前は草薙の剣」

「草薙の剣か。かっこいい名前だね。見るのが楽しみだ」

フレイと会話しながら進んで行くと、あっという間に剣が保管されている場所にたどり着いた。

建物の奥に、草薙の剣が厳重に紐で固定されているのが見える。

「意外と早く着いたね。じゃあ早速中に入ろうよ。・・・やっくん、どうしたの?」

「本当に良いんだろうか」

「え?」

私は胸に抱いていた迷いをフレイに打ち明けることにした。



◆草薙の剣と魔法の剣

「自分が草薙の剣の持ち主としてふさわしいかどうか不安なんだ。私は一度自分から剣を手放してしまったから」

私がそう言うと、フレイはこう答えた。

「大丈夫だと思うけどな。君が手放した後、剣が他の誰かのものになったわけじゃないし、まだ剣の所有権は君にあると思うよ」

「所有する権利というより、自分が剣に見合う器かどうか心配なんだ。草薙の剣の威力は身をもって知っている。だからこそこの剣の持ち主は慎重に選ばれるべきだと思う。剣を持つにふさわしい者が現れるまで、このままこの地で保管され続けた方が良いのかもしれない」

「そっか。じゃあこうしよう」

フレイは背負っていた剣を手に持ち、こんな提案をした。

「僕の剣は、必要なときに自ずから抜けて敵を斬ったり縛(いましめ)を解いたりする特殊なものなんだ。君が草薙の剣の所有者としてふさわしいのなら、この剣は自然に動いて草薙の剣を固定している紐を解いてくれるはずだよ」

「そうか。じゃあその剣に判断を任せよう。フレイ、頼む」

「OK。じゃあ中に入ろう」


私たちは緊張した面持ちで建物の中に入り、草薙の剣の前に立った。

「やっくん、心の準備はいい?」

「ああ、頼む」

フレイは呼吸を整えてから、自分の剣にこう命じた。

「魔法の剣よ、やっくんが草薙の剣に見合う器であるならばこの紐を解け」


すると剣が鞘からひとりでに抜け出て、瞬く間に紐を解いた。

「・・・!」

「ほら、大丈夫だったでしょ」

驚く私の隣でフレイが笑いかけていた。


「ありがとう、フレイ。これで心置きなく剣を持っていける」

フレイに礼を言ってから、私は草薙の剣を手に取り鞘から抜いてみた。

剣の状態が非常に良い。

手入れが行き届いていて、まるで新品のようだ。

剣を大事に管理してくれた者たちに感謝しなければ。


「良かったね、やっくん」

剣を嬉しそうに見つめる私にフレイが言った。

「今日は本当にありがとう。とりあえず今夜はここで一泊しようか」

私は剣を鞘に戻しながらそう言った。

「そうだね。次の行き先は明日考えよう」

「じゃあ、おやすみ」

「うん、おやすみ」

そして私たちは剣を抱いたまま眠りについたのだった。

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本日はここまでです!

お読みいただき、ありがとうございました。

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湘南占い◆白樺の騎士団でした!

















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