カルテから収集できる会話のきっかけ
これは、「まだ患者さんと十分にコミュニケーションが取れないな……」と悩む理学療法士や作業療法士、言語聴覚療法士の方々に向けて執筆した記事です。
実習を前にした学生さんにもおすすめです。
もともと、わたしは話好きな性格でしたが、この仕事をはじめてからもっとコミュニケーションが好きになりました。
たくさんの患者様とコミュニケーションをとり、
それがわたしの経験を増やしてくれたからです。
簡単に言うと、答えやすい内容を聞くことが大切
です。
この記事では、患者さんと会話のきっかけをカルテから抜粋するポイントについてお伝えします。
「はじめまして、の後はどんな話をしたらいいの?」
「病気で悩む人に何を聞いたらいいの?」
そんな悩みを解決するきっかけになればうれしいです。
会話のポイント
カルテを読み、あらかじめ以下の情報を頭の中に入れておくことをおすすめします。
患者様は入院の移動や色々な手続きが終わったばかりでお疲れです。初日から質問攻めにして、更に疲れさせてしまわないようにしましょう。数日かけてお聞きするのもおすすめですし、会話に困ったときのアイデアにしてください。
「個人情報じゃん、聞きづらいよ」なんて思わなくても大丈夫です。患者様は入院にいたる経緯で自分のことを話しています。ある程度はお聞きして大丈夫です。知ってもらうことは安心感にもつながります。ときどき、「お前たちは同じことばかり聞いてきて……!」と怒る方もいますが、その時は「失礼しました」といったん会話を引き、相手の反応を見るべきです。
時と場合に応じて、患者様にわかりやすい言い方をしましょう。
「お伝えしますね」「教えていただけますか?」などのクッション敬語が使えると、よりスマートです。(忙しい医療現場では軽視されがちだと感じてきました)
ただ聞くだけで終わらないようにしましょう。「会話のラリーが難しい」「感想が何も思い浮かばない」そんなときは、相手の言葉をそのまま繰り返すだけでも大丈夫です。
住所(地域性)
「ご自宅はどのあたりですか?」
「(地名)ですか。(地名)といえば、〇〇が有名ですよね」
「(地名)ですか。行ったことがありますorまだ行ったことがないんですよ」
「昔からずっと(地名)にお住まいですか?」
「(地名)といえば、このあいだ、○○がニュースに出ていましたよ」
地域の名物や特産品、行事などがわかると話が盛り上がります。地域の有名なお店や、新しくできた施設の話も話題にできるでしょう。
病院から自宅までの距離や位置関係を正しくつかめているか?
地誌的見当識もわかります。
患者さまによっては、生まれてから就職、結婚、引っ越しなどの人生のお話をしてくれることもあります。
住んでいるところはどんな地域でしょう?
農業が盛ん?漁業が盛ん?
名字が同じ人が多い(もとを辿れば親戚だったりします)昔ながらの地域?
都会の中にある、住宅地?
お人柄や交遊関係、価値観などもわかることが多いです。
自分の出身地や住んでいるところについては、無理に話さなくても大丈夫です。
……わたしは、詳細なところを伝えていないにもかかわらず、住んでいるところを探されて自宅に突撃されたことがあります。
個人情報は、十分に!!管理しましょう。
職業
「お仕事は何をしていましたか?」
「他にもお仕事はしていましたか?」
「そうですか、では、〇〇に詳しいのですね」
「はじめて〇〇のお仕事をされている方にお会いしました」
「○○の地域は○○が盛んですから、そのお仕事の方は多いのですか?」
「色んな経験をお持ちなのですね」
「大変そうなお仕事ですね」
「どうしてそのお仕事に就こうと思ったのですか?」
会社員、自営業、主婦などの大きなカテゴリではなく、可能ならもう少しその職業について掘り下げて聞いてみると面白いです。
トラック運転手、料理人、教師、刑務官、会社社長など、日常ではお会いできない職業の方とお話すると知見が深まりますよ。
ものの考え方や気質がそれぞれ違うことも感じるでしょう。
家族構成 KP(キーパーソン)
「ご家族は何人ですか?or何人暮らしですか?」
「先程の方が息子さんですか?」
「では、○○さんは『○人のお孫さんがいらっしゃるおじいちゃん』なのですね」
「(KPの方)さんとは、長く一緒にお住まいでしたか?」
「(KPの方)さんは、○○さんのことを心配されていましたよ」
その場にいない家族の話をするのもおすすめです。一緒にいる時には聞けない、家族に対してのご本人の思いが聞けることもあります。
実はよく喧嘩するとか、お嫁さんに気をつかっててしんどいとか……必ずしもいい話でない時もありますけどね!
それもその方の価値観です、傾聴してください。
役割
「ご自宅で、決まってしていた役割がありましたか?」
「たとえば、お仏飯の準備や、お庭のお手入れとか」
「3食の支度は、ご自身でされていましたか?それともご家族さんがしてくださいますか?」
「(地名)で請け負う仕事もありましたか?たとえば地区会長さんとか、祭の実行委員とか」
高齢者の場合、習慣として朝夕の御仏飯の準備やお花の世話、ご先祖様へのお参りを欠かさずされていることが多いです。祖父母と同居していた経験がある方は、どんな暮らしをしていたかイメージがしやすいかもしれませんね。
このあたりが聞けると、「患者様」ではなく「(地名)に住む(名字)家の○○さん」になります。
ぐっとあなたの中のイメージが変わるでしょう。
その他
ここからは病気に対しての知識が必要です。ただ会話をするだけでなく、病気と闘う患者様を支える上では知っておかなければならないものです。
その一部をご紹介します。
いつからその病気を患っているか
その病気の予後はどうか
ほかに合併症はないか
内科データ、採血データ:炎症反応は起きていないか、貧血はないか、栄養状態はどうかなど
飲んでいる薬:効果は何か、副作用は何があるか
いつ、どれだけその薬を飲んでいるか
いかがでしたか?
「患者様」ではない、「○○さん」を知るためのポイントをお伝えしました。
リハビリでは病気だけを見るのではなく、相手のことを知ることが何より大切です。
なぜなら、わたしたちがアプローチする患者様の生活は、それぞれが違った暮らしの上に成り立っているからです。
応用として深掘りをしていけば、その方のことがもっとわかるようになります。
まずは断片的な情報をつなぎ合わせて、患者様のことを知っていきましょう。
少しでもあたたかみのあるコミュニケーションのきっかけとして、お役に立てば幸いです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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