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[interview]#4 中村圭佑さん・中村玲子さん/Nobara Homestead Brewery(青木村)
この連載は…
長野県の一人出版社・八燿堂によるポッドキャスト「sprout!」の文字起こし+番組未公開パート+解説コラムです。主に長野県東部=東信エリアで活動する人たちへインタビューする企画です。人、活動、街の魅力をたっぷりご紹介していきます
長野県上田市の隣、青木村という小さな村で、「麦酒」をつくっている人たちがいる、と人づてに聞いたのは数年前。縁あって出会い、飲むことのできたそれは、とても清々しく、健康的で、しっかりとした味のあるお酒でした。その醸造所、Nobara Homestead Breweryが掲げる、里山との循環、人との循環とは何か。中村圭佑さん、中村玲子さんのご夫婦にインタビューしました。
編集・取材・構成=岡澤浩太郎/八燿堂
写真提供=Nobara Homestead Brewery(*)、渡部紗矢香(top)
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■プロフィール
中村圭佑/Nobara Homestead Brewery(醸造担当)
群馬県生まれ。都内の制作会社を経て、2018年よりデザイン会社「brew」として活動。2021年より拠点を長野県小県郡青木村へ移す。2022年、神奈川県旧藤野町のパーマカルチャーセンター・ジャパンでパーマカルチャーデザイナーの資格、PDCを取得。2023年、Nobara Homestead Breweryを開始。
中村玲子/Nobara Homestead Brewery(運営担当)
栃木県生まれ。イベントディレクター、ブランディング会社を経て、2021年、PDCを取得、2022年より醸造所運営開始。現在はNobara Homestead Breweryの栽培、加工など全般を担う。
※インタビューのダイジェスト+αはポッドキャストで公開しています
ビールではなく「麦酒」
岡澤浩太郎(以下、K) 僕はお酒が大好きなんですけど、なぜかビールだけがどうも苦手で、すぐに頭が痛くなっちゃうんですね。だけどNobara Homestead Breweryの麦酒は飲めるんですよ。今日はその理由が知りたくて取材しに来ました(笑)。
中村玲子さん(以下、玲子さん) 不思議ですね(笑)。
中村圭佑さん(以下、圭佑さん) ありがとうございます(笑)。ほかのビールとの違いという意味で言えば、炭酸ガスはそのひとつです。うちの麦酒は、メインの麦芽はすべてオーガニックのものを使っているんですけど、それ以外に、麦酒の炭酸感をつけるパートで酵母由来の自然な炭酸を使っているんです。
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圭佑さん 多くのブルワリーは効率や仕上がりの確実さを優先して、密閉したところに炭酸ガスを直接つけているんですね。でもうちは、沖縄の喜界島という、何でもオーガニックでつくることで有名な島のサトウキビでできた粗糖を使っているんです。
K 炭酸ガス! 泡が原因かもとは思いもよりませんでした……。今度、自分で人体実験してみます(笑)。ところで、お二人は「ビール」ではなく「麦酒」と表現していますよね。これはなぜなんでしょうか?
玲子さん 「ビール」と表現することに少し違和感があって。この里山でつくるなら「麦のお酒」と言ったほうが……。
圭佑さん しっくりくるよね。
玲子さん うん、私たちの暮らしにフィットしたというのが大きいです。
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K その違和感はどこから来るんでしょう? 大手のビールメーカーがやっていることへの抵抗感でしょうか?
圭佑さん いえ、そういうことではないです。ビールのルーツは海外ですが、日本生まれ、日本育ちの麦酒をあらためて構築していきたかったんです。
玲子さん それと、私たちがビールではない、いままでの価値観を一新させるようなお酒をつくりたいという思いも強いんです。「地ビール」や「クラフトビール」の先を見越しているというか。
〔編注:地ビール・クラフトビールの「ブーム」〕
かつて日本では、ビールの製造免許を取得するためには年間で最低2,000kl(350ml缶で約570万本)を製造することが前提となっており、結果的にアサヒ、キリン、サントリー、サッポロ、オリオンの5社のみが製造販売していた。
しかし1994年の酒税法改正によって、その条件が年間60kl(同、約17万本)と大幅に緩和され、全国の小規模事業者が相次いでビール製造に参入。地方の日本酒を地酒と呼ぶのにちなんで、「地ビール」という呼称で1990年代後半にはブームが起こった。
その後、大手5社と比較して商品価格が高値だったことから徐々に衰退するも、品質改良やアメリカでのブームなどを受けて再燃。「職人・工芸」などを意味する「クラフトビール」と呼ばれるようになった。
Webサイト『Always Love Beer』(しおりワークス)の調査によると、2023年現在、クラフトビールを醸造するブルワリーと、ビール醸造所を併設するブルワリーパブの日本全国の数は726カ所。うち長野県は34カ所。
なお「地ビール」は原料や販売網、文化などの側面で当該地域への密着度合いが高いもの、「クラフトビール」はこだわりを持つ小規模醸造所が製造したもの、という意味はあるが、定義に厳密な違いはなく、同等に使われることもある。
玲子さん 世の中には「ビール好きのためのビール」というカルチャーやトレンドがたくさんありますが……。
圭佑さん うん、もっと幅広く……。
玲子さん たくさんの多様な人種の方に飲んでもらえるようなもの。究極的には飲めない人でも飲めるくらいのビールをつくっていきたいんです。それが、暮らしとつながってくる部分だと思っていて。
K 暮らしとつながる麦酒。
玲子さん はい。ビールは一番、人の生活に馴染んでいるお酒で、毎日飲むだけでなく、祝いの席でも飲まれる。特別なものではないんですよね。日用品にすごく近いというか。だから暮らしのなかに馴染むような存在であってほしいな、と。
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玲子さん それに、Nobara Homestead Breweryは、「野に行き、原点を辿る」というストーリーを掲げているんです。そんな、ビールだけど、ビールじゃないものづくり。感覚的なんですけど、それは横文字の「ビール」ではないなと。
人と自然が共存する
豊饒な里山で
生きた酒造りを目指す
野に生き 原点を辿る
野ばらブルワリーは
暮らしに根付く息と
何百年という先の
人々の生活をつなぐ
里山の文化を
守り育てるために
生まれました
K 日本だと日本酒がそういう役目を持っていたかもしれませんが、正月や冠婚葬祭で飲むとか、おじいちゃんが晩酌していても「子どもはダメ」とか、ちょっと特別な感じがあるかもしれないですね。
圭佑さん たぶん、日本酒のほうが日本人にはいいんでしょうけど、やっぱりアルコール度数が高かったり、飲み方だったりが、ビールより敷居が高い気がします。
K ヨーロッパだと、聖書にもワインが出てくるし、古くから日常的に飲む歴史がありますよね。それと近いんでしょうか?
玲子さん そうですね。ワインのように、みんなが歌ったり、お祝い事で乾杯したり、お葬式や五穀豊穣や……そういう、日本にもずっと昔からある文化や歴史は伝えていきたい、つなげていきたいですね。
近年、若い人はお酒離れがとても増えていますが、お酒が醸し出してくれる必然的なつながりやコミュニティは、私たちがお酒づくりやお酒のある場が好きな理由だと思うんです。
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麦酒がコミュニティをつくる
K お酒のある場、ですか。
圭佑さん 僕が東京の谷中に住んでいた頃に、近くのクラフトビールのビアパブによく行っていたんです。
谷中って地域的に、近くのお花屋さんやスーパーや飲食店とお客さんが被るというか、お店に行ったついでにそのままビールを飲みに流れることがよくあるんです。あと、おばあちゃんが道端で、「角打ち」スタイルでビールを飲んだりしていて。本当に、スーパーに行ったついでに、帰りに一杯飲んできちゃう。そこに友達がいて、とか……。
そういうコミュニティがすごく楽しくて、居心地が良かったんです。実際にそこで友達もたくさんできたし。そうやって、谷中でビールがつくるコミュニティの素晴らしさを体感したんです。
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