[interview]#18 天野紗智さん(ディバースライン/小諸市)
〜1月22日 23:30
山間部に行くとたまにある、木がごっそり切られて禿山のようになった山肌。あの風景を見て「なんだかなぁ……」と思うことしきりでしたが、そんな矢先に知ったのが「自伐型林業」を行う一般社団法人ディバースライン。「100年先を見据えて森を育てながら木を間伐する」という考え方にいたく共感した筆者は、代表の天野紗智さんに早速取材を申し込むことに。なんでも天野さん、林業家であるとともにプロスノーボーダーでもあるそうで、二足の草鞋についてもじっくり聞いてみました。
編集・取材・構成=岡澤浩太郎/八燿堂
写真=栗田脩
※天野紗智さんにも登場いただいたムック版『sprout!』2024 WINTER ISSUEはこちらから!
※インタビューのダイジェスト+αはポッドキャストで公開しています
(後半は1月14日公開予定)
自伐型林業とは?
岡澤浩太郎/八燿堂(以下、岡澤) 天野さんが代表を務めるディバースラインは、林業のなかでも自伐型林業を活動の柱としていますね。これはどんな林業なんでしょうか?
天野紗智さん(以下、天野さん) いろいろな解釈があるんですけど、私たちは、たくさん切る林業とは違って、森の2割ぐらいを切りながら森を育てていくような林業だと考えています。もともと、山を持っている人が自分でやる林業のことを「自伐林家」と言うんですね。
岡澤 ああ! 自分で伐採するから「自伐型」林業。
天野さん そうです。私たちは自分の森ではなく、山主さん自身や、地域でなかなか管理できていない森を委託してもらっています。
岡澤 管理委託を受けている森林はどれくらいの広さなんですか?
天野さん いままでは10ヘクタールくらいだったんですけど、これから30ヘクタールぐらい追加される予定です。
岡澤 合計40ヘクタールというのはディバースラインにとっては適正な規模なんでしょうか?
天野さん まず、一般的な林業は50年に一度のサイクルで皆伐(森林のある区画にある木をすべて伐採すること)して、また植えるのが一般的なんですけど、私たちはもっと先、70~100年先を見据えて木を育てていくんです。
だからたくさん切るわけじゃなくて、長伐期=長い視点で少しずつ切っていくので「間伐」という言い方をしているんですが、この方法だと7~10年に1回ずつ、いろいろな森をまわってくイメージなんですね。
それで、1周まわって最初の森に戻ってくるサイクルを考えると、だいたいひとり当たり30ヘクタールぐらいの面積を作業できれば、一生困らない=林業でやっていけると言われています。
天野さん そうやって少しずつ育てて、少しずつ切って、ちゃんと使っていくというサイクルを地域のなかでつくっていきながら、ひとつの木や、森の空間の価値を上げていくやり方を目指しています。
岡澤 へぇ! 木を切りながら森を育てていく、と。植樹もするんですか?
天野さん 必要に応じて、ですね。例えば、「ここはこれ以上の間伐は必要ない」という場所があれば、植樹したりします。逆に間伐するときは、価値のあるいい木を伸ばしたい、育てたいという気持ちがあるので、それを邪魔してしまっているような木を切るイメージです。
岡澤 なるほど……「価値を上げる」の意味がわかってきました。
天野さん やっぱり、山主さんの森を責任もって預かっているわけですから、預かったからにはちゃんといい森をつくって、いい材を育てて、少しでも山主さんに還元できるのが、林業だと思うんです。
ちょっと放置されてしまった森だと木の価値が少ししかないかもしれないけど、10年、20年経ったときにその木の価値が上がっていけば、だんだん森が循環していくし、仕事にもなっていく。
それに、その森に対して思いも乗りますよね。「森を良くしたい」「あの人に見に来てもらいたい」とか。そんな森にしたいなと思います。
岡澤 長い時間をかけてかかわっていくうちに、だんだん愛着が出てくるんでしょうね。
天野さん そうなんです、「これを100年の森にするんだ!」と。人の土地なんですけど(笑)。
山の価値を上げる
岡澤 いま現在で自伐型林業をやっている人はどれくらいいるんですか?
天野さん ちょっとわからないですけど、長野県では私たち以外にも御代田町で始めた人もいます。それから、「自伐型林業」と言っていないだけで、昔から自分の山を持っている自伐林家さんもいると思います。
岡澤 ああ、なるほど! 昔ながらのスタイルも自伐型林業に入るのか。具体的な作業の手順としては、まず森のなかに道をつくるそうですね?
ここから先は
1月8日 15:30 〜 1月22日 23:30
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
多くのご支援ありがとうございます。木々や星々は今日も豊かさを祝福しています。喜びや健やかさにあふれる日々をお過ごしください。