八燿堂の基幹タイトル『mahora』について
八燿堂の基幹タイトル『mahora』と、その他の紙の本についてのご案内です
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mahora
『mahora』は人と自然と宇宙の豊かさを祝福する本、八燿堂の看板タイトルです。
日本の古語では「ま」は「本当の」、「ほ」は「美しい」「すぐれた」、「ら」は「場所」という意味を持つそうです。こう言うと、どこか遠くの理想郷のように感じるかもしれません。けれども実は、私たちが日々暮らし、生活する場所に、“美” はすでに、散りばめられているのだと、思います。
毎朝の食事、家の小さな仕事、その日に着る服、庭や窓辺の草花、部屋にたたずむ絵や置物、テーブルの上の誰かの手仕事、親しい人との会話、四季の風景、風の鳴る音、鳥の声――
これらを “美しい” と思う気持ちは、きっと、ずっとずっと遠い昔から繰り返され、やがてまだ見ぬ誰かも、繰り返していくのでしょう。言葉を換えれば、人は美を感じる時、近くにいる、そして遠くにいる、誰かや何かと、そっとつながることが、できるのです。
『mahora』はこうした考えたのもと、太古の自然や秘跡、現代の日常や暮らし、宇宙の営為や人間の手仕事など、あらゆる生命の豊かさや美しさ、時代に寄らない本質的なあり方を、ホリスティックな観点で集めました。
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寄稿者
2018年に創刊し、2024年までに6号を刊行しています(創刊号と第2号は版元在庫切れ)。これまで数多くのみなさんにご参加いただきました。お名前だけご紹介します(50音順/第6号まで)。
青葉市子(音楽家)、朝吹真理子(小説家)、安野谷昌穂(美術作家)、安納献・鈴木重子(CNVC認定トレーナー)、居相大輝(iai)、石倉敏明(芸術人類学・神話学)、稲葉俊郎(医師)、UA(歌手)、上原寿香(camino natural Lab)、江尻潔(足利市立美術館)、eri(DEPT代表)、大塚紀子(諏訪流鷹匠)、大村淳(フォレストガーデンデザイナー)、小川康(森のくすり塾)、kai(アーティスト、スピリチュアリスト、作家)、河瀨直美(映画監督)、スティーブン・ギル(写真家)、こじょうゆうや・こじょうゆみこ(星の坊主さま)、是恒さくら(美術作家)、後藤しおり(料理家)、榊智子(アーティスト)、榊仁胡(アーティスト)、志村信裕(現代美術作家)、杉戸洋(現代美術作家)、関根みゆき(結び研究家)、ソーヤー海(共生革命家)、ジョアンナ・タガダ・ホフベック(アーティスト)、土田眞紀(近代工藝・デザイン史、工藝論)、寺尾紗穂(音楽家、文筆家)、成田和正(養蜂家)、野口優子(写真家)、芳賀満(美術史家)、蓮沼執太(音楽家)、花代(写真家)、林央子(編集者)、林良樹(小さな地球)、平野馨生里(石徹白洋品店)、伏木庸平(美術作家・台形)、エレン・フライス(編集者、写真家)、前田崇治(紙漉思考室)、前田征紀(コズミックワンダー、現代美術作家)、宮本武(写真家)、ミロコマチコ(画家、絵本作家)、矢野智徳(大地の再生)、山口吉彦(アマゾン資料館)
創刊するまでのこと
八燿堂は『mahora』を創刊するためにつくりました。創刊までには紆余曲折があったのですが…その過程を公開しています。『mahora』の副読テキストとしてお楽しみください
▼創刊前夜
八燿堂発足や、『mahora』創刊に至るまでの経緯について、簡単にまとめるつもりが、中の人の生い立ちにまでさかのぼってしまいました。お時間あるときに……。
▼第0号
『mahora』の原型となったテキストです。2017年に執筆されました。この文章がなければ『mahora』も八燿堂もこの世に誕生することはありませんでした。
『mahora』の持続可能な出版活動
八燿堂の基幹タイトル『mahora』では、「適切な部数の刊行」と「直取引」の2つの方法に挑戦しています。
現在日本では、毎日200タイトル以上の書籍や雑誌が刊行されています。200タイトル。200冊ではありません。書籍なら、1タイトルにつき数千部~数万部が発行されます。それが、×200。しかも毎日その数です。年間だと膨大な数になります。
毎日そんな数の本が本屋さんに届くわけで、店員さんはとても全部読めるわけないし、お店にすべての本を置いておくことは物理的に不可能です。実際、本屋さんに1~2か月置かれて売れ残った本は、「返品」という形で出版社に戻されます。推定の統計では、返品される本の数は、年間で3億冊とも言われます。
返品された本はどうなるか。在庫として抱えたままだと倉庫の維持費がかかったり、法律上は資産として計上され税金が発生したりするため、ほとんどが古紙再生工場に運ばれ再生紙となるか、断裁・焼却されて海に埋め立てられます。
古紙に生まれ変われば別にいいじゃないか、という意見もあるかもしれません。確かに捨てられるよりはよいでしょう。ただ、古紙再生の過程で、大量の電力と水と石油燃料を使い、インキを溶かすために大量の化学薬品を投じているのも事実です。それは「環境にやさしい」のか、どうか。
こうした疑問点から、『mahora』では「適切な部数」=「そもそも本をつくり過ぎない」方法を採用しています。
もうひとつのポイントは、ブックマイレージに関係します。森林の木を伐採して紙をつくり、一冊の本になって誰かの手にわたるまでの工程で、それぞれが専門化し、分業しているのが現状です。
例えば、「安く」「大量に」「早く」紙を提供するために、製紙業は洋紙を選択し、機械化を進めて効率を徹底化しました。その結果、多くの人々が本を手にすることができましたが、一方では和紙という文化が衰退し、端境期の農家の収入減が先細り、原材料の輸入によって国内の生態系や産業形態が変化しました。
一方、戦後に焼け野原となり、流通が破綻した状況で、それでも地方に本を届けたいという思いから、「取次」という本の卸業が生まれました。国内のどの店でも同じ本が同じように売られている、という状況は、やはり本の大衆化をうながす利点が多大にありましたが、時代の変遷とともに書店の画一化を進め、「商品」の選定にも取次の力が強く及ぶようになったという一面もあります。
さらに、八燿堂のある長野県の山間の集落のような場所では、クリックひとつで商品が届けられるECのシステムは、非常に便利です。しかしその結果、一部のプラットフォームに利潤が集まる一方で、町の書店は疲弊しています。またシステムの維持にかかわる労働や流通業のあり方に、異議を唱える声も少なくありません。
専門化と分業化は、そもそも「悪い」ことではなかったはずです。重要なのは、もう一度、それらが生まれる発端にあった「本を届けたい」という「思い」に立ち戻ること。そして、「顔の見える農家」のように、出版社と販売店の間に「つながり」をつくること。そうしたつながりから、自立した流通網を全国に構築すること。
八燿堂が取り組む「直接取引」は、この流れで生まれました。
『mahora』が実践する「適切な部数の刊行」と「直取引」とは、つまり、「余分に本をつくっても人間や環境に負担をかけるのではないか」、だったら「適切なぶんだけつくり」「必要な人に届ける」ことを目指そう、という試みです。
さらに言えば、それを通してさまざまな「地域」に根差した、自立したネットワークや経済圏を構築することを目指す。森では、大きな高木の下に、さまざまな灌木や草木が栄えているように。
その他の紙の刊行物
八燿堂では、単行本タイトルも厳選して刊行しています。
宮沢賢治『農民芸術概論』
土に触れる自らの手と宇宙の胎動が直結する壮大なスケールで描かれた宮沢賢治による至高の芸術論「農民芸術概論綱要」。本書では本論に加え、「農民芸術」の名を冠する他2編を収録。また、「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」で知られる通称「雨ニモマケズ手帖」に収められた詩編や、賢治の最晩年、病床に伏しながら書かれたと言われる「疾中」を採録。そして生前未発表の詩作集「詩ノート」より撰集した数編のほか、学生に向けた鼓舞激励のメッセージ「生徒諸君に寄せる」を収めました。計60超の詩編を採録しています。装画は奄美大島在住の絵本作家、ミロコマチコ。
アマゾン資料館監修『アマゾンの民具』
仮面、頭飾り、籠など、南米アマゾンの先住民たちの暮らしの日常から生まれた民具約120点をカラー掲載。アマゾンの歴史文化の国際理解と国際交流に寄与した、元アマゾン民族館の館長で文化人類学者の山口吉彦氏が、1970年代より収集した2万点超のコレクションから厳選して紹介しています。
八燿堂と各プロジェクトのご案内
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▼八燿堂の中の人、岡澤浩太郎について
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