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長野県の一人出版社・八燿堂(はちようどう)について
八燿堂のnoteへようこそ。まだまだ工事中ですが少しずつ充実させていくので、どうぞお楽しみに。それでは簡単に自己紹介を。
八燿堂について
2018年に活動を開始、2019年11月に東京から長野県南佐久郡小海町にある小さな集落に移住しました。いわゆる「一人出版社」ですが、法人化していないので「一人出版レーベル」が正確な言い方になるのでしょう。
「200年後の生態系と共存・共生する本づくり」を掲げ、文化的・環境的・地域経済的に持続可能な出版活動を模索しています。
八燿堂が大切にしていること(工事中)
mission ►
いつの時代も変わらない本質的な豊かさを提供する
vision ►
それぞれの生き方を応援しあえる世界をつくる
value ►
①生き方や心が豊かになるきっかけを読者に届ける
②生態系を豊かにする持続可能な本づくりや流通を目指す
③地域に豊かさを配分し、自立したつながりをつくる
spirit ►
自然や宇宙や自分自身にある豊かさを表現し、伝える
slogan ►
世界を豊かに、美しく
八燿堂のプロジェクト
八燿堂は大きく2つのプロジェクトに分かれています。それぞれのプロジェクトについては、リンク先をご覧ください。
mahora
『mahora』は八燿堂の基幹タイトルです。『mahora』を刊行するために八燿堂は生まれました。その他の紙の本についても、こちらでご案内しています。
sprout!
sprout! は八燿堂の所在地=長野県発のローカルプロジェクトで、ポッドキャストと紙の本を中心に展開しています。
八燿堂開始までの物語
紆余曲折がありました。こちらでそのプロセスを公開しています
『mahora』創刊の発端となったテキストです。このテキストがなければ『mahora』も八燿堂も存在しませんでした
上のテキストは、形を変えて創刊号の「編集後記に代えて」という文章になりました。よりブラッシュアップされています
主宰者・岡澤浩太郎について
八燿堂の中の人、岡澤浩太郎についてはこちらから
持続可能な出版活動とは
八燿堂の理念は「200年後の生態系と共存・共生する本づくり」。これを実現するために、いくつかのアプローチに取り組んでいます。
①『mahora』の場合/適切な部数・直取引
八燿堂の基幹タイトル『mahora』では、「適切な部数の刊行」と「直取引」の2つの方法に挑戦しています。
現在日本では、毎日200タイトル以上の書籍や雑誌が刊行されています。200タイトル。200冊ではありません。書籍なら、1タイトルにつき数千部~数万部が発行されます。それが、×200。しかも毎日その数です。年間だと膨大な数になります。
毎日そんな数の本が本屋さんに届くわけで、店員さんはとても全部読めるわけないし、お店にすべての本を置いておくことは物理的に不可能です。実際、本屋さんに1~2か月置かれて売れ残った本は、「返品」という形で出版社に戻されます。推定の統計では、返品される本の数は、年間で3億冊とも言われます。
返品された本はどうなるか。在庫として抱えたままだと倉庫の維持費がかかったり、法律上は資産として計上され税金が発生したりするため、ほとんどが古紙再生工場に運ばれ再生紙となるか、断裁・焼却されて海に埋め立てられます。
古紙に生まれ変われば別にいいじゃないか、という意見もあるかもしれません。確かに捨てられるよりはよいでしょう。ただ、古紙再生の過程で、大量の電力と水と石油燃料を使い、インキを溶かすために大量の化学薬品を投じているのも事実です。それは「環境にやさしい」のか、どうか。
こうした疑問点から、『mahora』では「適切な部数」=「そもそも本をつくり過ぎない」方法を採用しています。
1. 適切な部数
紙・インキなどの資源、ブックマイレージ(本の輸送に要する資源)に配慮し、ゴミにもせず、再利用コストも抑えるために、そもそも本をつくりすぎない、適度な刊行点数・部数を目指す。
もうひとつのポイントは、ブックマイレージに関係します。森林の木を伐採して紙をつくり、一冊の本になって誰かの手にわたるまでの工程で、それぞれが専門化し、分業しているのが現状です。
例えば、「安く」「大量に」「早く」紙を提供するために、製紙業は洋紙を選択し、機械化を進めて効率を徹底化しました。その結果、多くの人々が本を手にすることができましたが、一方では和紙という文化が衰退し、端境期の農家の収入減が先細り、原材料の輸入によって国内の生態系や産業形態が変化しました。
一方、戦後に焼け野原となり、流通が破綻した状況で、それでも地方に本を届けたいという思いから、「取次」という本の卸業が生まれました。国内のどの店でも同じ本が同じように売られている、という状況は、やはり本の大衆化をうながす利点が多大にありましたが、時代の変遷とともに書店の画一化を進め、「商品」の選定にも取次の力が強く及ぶようになったという一面もあります。
さらに、八燿堂のある長野県の山間の集落のような場所では、クリックひとつで商品が届けられるECのシステムは、非常に便利です。しかしその結果、一部のプラットフォームに利潤が集まる一方で、町の書店は疲弊しています。またシステムの維持にかかわる労働や流通業のあり方に、異議を唱える声も少なくありません。
専門化と分業化は、そもそも「悪い」ことではなかったはずです。重要なのは、もう一度、それらが生まれる発端にあった「本を届けたい」という「思い」に立ち戻ること。そして、「顔の見える農家」のように、出版社と販売店の間に「つながり」をつくること。そうしたつながりから、自立した流通網を全国に構築すること。
八燿堂が取り組む「直接取引」は、この流れで生まれました。
2. 直接取引
流通において思いと配慮を届けるために、書店・小売店との「顔の見える」コミュニケーションを実現する。地域とのつながりをつくり、町の販売店へ利益をめぐらせることで、自立した流通網を構築する。
『mahora』が実践する「適切な部数の刊行」と「直取引」とは、つまり、「余分に本をつくっても人間や環境に負担をかけるのではないか」、だったら「適切なぶんだけつくり」「必要な人に届ける」ことを目指そう、という試みです。
さらに言えば、それを通してさまざまな「地域」に根差した、自立したネットワークや経済圏を構築することを目指す。森では、大きな高木の下に、さまざまな灌木や草木が栄えているように。
②『sprout!』の場合/本をつくればつくるほど森が豊かになる
以下は、八燿堂が『sprout!』において実現したいビジョンです。まだリサーチを始めたばかりですが、実現するには相当ハードルが高いと感じています。プロジェクト全体が林業、製パルプ・製紙業、流通などにおよぶため、一人出版社だけでは解決できません。さまざまなセクターの協力が必要です。一緒に並走していただける方、ぜひともお声がけください!
はじめに
八燿堂は2018年に東京で開始し、2019年に長野の標高1000mの小さな集落に移住しました。素晴らしい空気と水、周囲は森と星空、圧倒的な自然が広がるばかり。私は敷地で畑を始め、本づくりと庭づくりを並行する毎日を嬉々として楽しんでいました。
ところが、日々森に囲まれていると、だんだん気づくことになります。森のなかに、倒れ掛かった木が何本もある。鬱蒼としていて暗い。地面が崩れている。そう、森が荒れている……。
移住後に知り合った友人たちから、こんな話を聞きました。人の手が入らなくなった森は鬱蒼としてしまい光が差さず、生物多様性がかえって損なわれる。また、密集して生えている以上、根が浅くなるため、地滑りを起こしやすい。などなど。
つまり、目の前に広がっているのは、豊かな森ではない。「だから、適度に人が森に入り、適度に材を使う必要がある」と、ある人は言いました。環境問題=環境保護だと思っていた私には、「森林を切らずに守る」のではなく「木材を使うことが森の保全や再生につながる」という視点は驚きでした。
森を豊かにするために、木を使う。
だったら、自分の仕事を通して、何かできないだろうか?
日本の人工林
日本には、かつて林業が栄えた時代がありました。八燿堂の所在地である長野県小海町も同様で、町を走るJR小海線沿線は、林業を中心に飲食、宿泊、歓楽などさまざまな産業が発展し、にぎわいを見せていたと言います。
森は豊かさをもたらしてくれるもの。先人たちは、自分の子孫にも財産を残してあげたいという思いから、山に大量の木を植樹しました。こうして長野県は、現在でも県土の約8割を森林が占めるにいたりました。
ところが、低価格の輸入材に押されて、国産の木が売れなくなりました。衰退した林業から働き手が流出し、木を切る=森を手入れする人が減少しました。また、人が減ったために人件費などがかさみ、かえって国産の木材が高騰、さらに売れなくなるという、悪循環が生まれました。
かつては豊かさの象徴であった人工林が、すっかり荒れ果てて悩みの種になる。
そんな森が、日本中にあるのが現状です。
現在の製パルプ・製紙業
ところで、前述した日本の古紙リサイクル技術は非常に優れていて、国内の古紙回収率は約8割、古紙利用率は約7割におよびます。実際、普段の生活で目にしたり利用したりする紙のほとんどには、割合はさまざまですが、再生紙が含まれています。
再生紙ではない紙(ヴァージンパルプ)はと言うと、原料の大半は海外から輸入されています。海外の森林から伐採した木材から、海外の工場でパルプ(木材に含まれる繊維)を抽出し、船便で大量に日本に輸送し(パルプに加工たほうが大量に積載できる)、日本の製紙工場で洋紙をつくる。これがおおよその流れです。
いずれにせよ、たくさんの人たちのたくさんの努力によって構築されてきたこれらのシステムがあるおかげで、毎日の暮らしで紙を安く買える、手軽に手に入る、ということが実現できるわけです。
しかし……。大量生産・大量リサイクルされる紙の世界と、使われず放置されて荒れたままになっている目の前の森が、私にはうまく結びつきません。海外からの輸送時のCO2排出量や、前述した古紙リサイクル工場のあり方も気にかかります。
もっと、シンプルにできないものだろうか?
森⇔本の循環をつくる
木から紙がつくられ、紙から本がつくられる。言わば、本は自然界の賜物です。ところが、本から自然に向かう矢印は? いまの出版界には、本から自然へのアクションが少ないのです。つまり、まだまだ循環していない。
もちろん、大手出版社のなかには森林認証紙を積極的に使い、グローバルな視点で環境保全に取り組んでいるところもあります。けれど、目の前の森は? あるいは、古紙リサイクルは、資源を大事に活用する側面はあっても、あくまで人間が再利用するためにつくられたシステムであって、それ自体が自然を再生するわけではありません。
問題は、本の製造過程で国内の木が使われていないことにあります。
もっと単純に、「走れば走るほど空気がきれいになる車」のような、本のあり方はないか?
つまり、「本をつくればつくるほど、森が豊かになる」。そんな出版のあり方です。
例えば、地域の荒れた人工林を「財」としてとらえ、その間伐材から紙をつくり、その紙から本をつくり、本を地域に流通させる。そのような「本の地産地消」を通して、出版活動そのものが森や自然環境を再生する仕組みをつくれないだろうか。
そして本を手に取った読者が、「この本って、あの森からつくられたんだって?」のようにして、本を通して地域の森や自然とのつながりをつくれないだろうか。
人間にとってのだけでなく、生態系や自然にも豊かさをめぐらせること。もっと言えば、「人間を含む自然の生態系の一部に、本を位置づける」ということなのでしょう。
3. 森⇔本の循環をつくる
地域の放置森林を出版物の用紙として資源活用する仕組みを構築する。それにより、本をつくればつくるほど自然環境が再生されるという、出版における新たな付加価値を創出するとともに、コンテンツ以外の制作過程や流通面でもローカルのつながりをつくる。
もし、「本は環境再生につながる」という仕組みが確立できれば、出版不況と言われて久しいなかでも、「本のエシカル消費」みたいなことが起こるかもしれません。
それにこれなら、前述した本の大量生産・大量消費のシステムとも共存できるわけです。なぜなら、本をつくればつくるほど森が豊かになるのだから。もちろん環境を損なわない程度の適量であることは必須でしょうが、既存のシステムはあったほうがとても助かる。ただしほんの少し、目先を変えて、仕組みを整えるだけです。
課題
ただ、2024年現在、八燿堂はリサーチを開始したばかりで、何の成果も得ていません。特に立ちはだかっているのが、
国内、特に長野の木材からパルプをつくる工場(できれば長野に所在)
これがなかなか見つかりません。木材の輸送時に排出するCO2量を考えると、地産地消することがベストだと思われ、ゆえに長野の木材を長野の工場で加工する方法を探しているのですが……やはり、前述したように国産の木材を使用すること自体がコストに見合わないため、「そもそもそのような工場が存在しないのではないか」という懸念もあります。
『sprout!』だけ、もっと言えば本の印刷だけでは、工場の機械を動かす採算が合わない、ということなら、八燿堂としては本だけにこだわっているわけではありません。例えば、行政の発行する文書や広報誌、学校で使用する教材にも、この紙が使えないでしょうか? それでもコストに見合わないのであれば、補助金や助成金も視野に入れられないでしょうか? もしくは、そのような製パルプ工場が存在しないなら、いっそのことゼロからつくってしまう?
前述したように、ここまで来ると一人出版社だけの手に負えません(笑)。さまざまなセクターの協力が必要です。一緒に並走していただける方、ぜひともお声がけください!
〔サポートのお願い〕
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よろしければ、このプロジェクト"sprout!"や、八燿堂の活動にサポートいただけたらうれしいです。金額はご自身のお気持ちのとおりに、任意でご指定ください。いただいたお金は、本の印刷費やポッドキャストの制作費、フライヤーなど宣材物の制作費などにありがたく充当させていただきます。
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