放課後まほらbo第八話 あそびの科学
【第八話】
■あそびの危機
■日本では
■あそびの復権
放課後まほらboでは、「あそびは、最高のまなび!」の構造化をすすめ、あそびを科学することで、子どもの成長と学ぶ力の向上へとつながることに努めています。
■あそびの危機
「子どもに遊びを処方するよう、すべての医師に推奨する。」2018年8月アメリカ小児科学会から、社会に対する警鐘として全米の小児科医に出された提言です。驚いたのは「処方」という強い言葉が使われていることです。医療の専門家からみると今の子どもらの状態は、かなり切迫したものと言わざるを得ないということでしょう。同年12月のクリスマス前には、乳幼児にはデジタル製品よりも、「昔ながらの玩具」を推奨するという提言も出されています。にもかかわらずトイザらスは倒産してしまいましたが一企業の問題にとどまらず、実は社会で大変なことが起きているのかもしれません。この「処方」に込められた意味は、小児科医があそびを処方しなくてはならないほど子どもたちが病んでいる(病みかねない)という側面と、医師からの指導がないと対処できない親世代(大人全般にも)の課題があるということを物語っています。デジタル機器の問題が「あそび」という子どもの成長過程に不可欠な行動あるいは文化を大きく毀損させているという認識が、高い危機感を醸成し、それに基づく提言になっているように思います。
■日本では
ではそれは海の向こうの話で、日本ではそんな大きな問題にはなっていないということなのでしょうか。公益社団法人日本小児科医会の「子どもとメディア」委員会から、子どもに関係するすべての人々に対して、現代の子どもとメディアの問題として、5つの具体的な内容で、すでに2004年に提起されています。その提言の背景として挙げられている理由は、メディアとの長時間に及ぶ接触はいまだかつて人類が経験したことのないものでもあり、まだ検証はされていないが、心身の発達過程にある子どもへの影響が懸念されるというものでした。まさにコロナ禍で私たちが体験している未知との遭遇な課題と同様なわけですが、因みにコロナ禍は、この「子どもとメディアに関する5つの提言」で想定している状況を加速度的に悪化させています。
子どもとメディアに関する5つの提言については以下を参照ください。https://www.jpa-web.org/dcms_media/other/media2008_poster02.pdf
このように日本でも具体的な提言が早くからされていますが、なぜこのような提言が、広く知られていないのでしょうか。
■あそびの復権
それは日本が、世界中にゲーム機器とソフトをつくって売ってきたという弱みが関係しているのかもしれません。この5つの提言は規制事項が中心になっていますが、その根拠が曖昧なままでは、「~しないこと!」と訴えられても訴求力が弱いのは当然のことだと思われます。ネガティブコントロールをするのであれば、もっとたばこ並みに警告告知をするくらいのことが、今後、デジタルゲームにも必要になるのではないでしょうか。
●たばこの警告告知(画像を使ったものもある)
しかし、もう一つのアプローチとして、あそびの効果を明確にしていくことが有効に働くのではないかと私は考えています。デジタルメディアやゲームが悪いというより、子どもの成長に必要な遊びが激減することが問題だと思うからです。あらためて「あそび」とは何かを考え、子どもの成長に有益なあそびについて見直し、子どもに実際のあそびを返していくという作業が、私たち大人に求められています。まさにあそびの復権が果たされるときです。これから「あそびを科学する」という視点で、放課後まほらboの取り組みについて紹介していきたいと思います。
次回は、そもそも「あそびとは何か」について考えたいと思います。
では。
(みやけ もとゆき/もっちゃん)