第65回まひる野賞発表
第65回まひる野賞受賞者が決まりました。
伊藤利惠「春の輪郭」
伊藤さん、おめでとうございます!!
まひる野8月号に受賞作30首、選評、受賞の言葉が掲載されています。
ここではそのうち12首を抜粋します。(横書きでごめんなさい)
「春の輪郭」伊藤利惠
春の蚊のとまる指先ことばより疫病(えやみ)は疾しひとからひとへと
「浜辺の歌」輪唱となる春闌けて繭の中なる介護施設(しせつ)と思ふ
ここよりは会議の予定のなき手帳罫線といふはまつすぐである
国中のこどもが消えたやうな朝施設の朝は排泄(まり)に始まる
敗戦とふ正しき出自ある人のおよびを消毒(ぬぐ)ふ日にいくたびも
疲れず罹らず接遇正しきロボットに「浜辺の歌」をわれは教ふる
備品として登録さるるロボットに「添ふ」といふこと教へてゐたり
百歳に無念はいくつあるだらうたゆたひながら潮はひきゆく
たんたんと過ぎゆく日々といふときのたんたんはわれの菜を刻む音
はろばろとアサギマダラはかたなびく早吸(はやすひ)の瀬戸を染めてわたり来
あめつちのあはひの遠き裂け目よりアサギマダラの湧きてやまざり
一瞬といふまさびしき時間あり蝶はふはりとてのひらを舐む
伊藤利惠
1952年大分県生まれ
2018年「まひる野会」入会
大分県在住
※ まひる野はその年一年間欠詠のなかった人を対象に年に一回50首詠を募集しています。まひる野賞の発表は例年8月号、同号に30首抄と選評、受賞者のプロフィールと受賞の言葉が掲載されます。
例年は夏の全国大会にて表彰しますが、今年は全国大会の延期により来年以降に表彰式を行う予定です。