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黄色いひよこちゃん

社会人1年目の新人保育士が担当した女の子の話。

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保育士になりたてほやほやの春。

初めての保育園に不安な1歳児の女の子と
初めての就職に緊張した保育士の私。

泣き虫で気が強くて想像力豊かでとても賢い女の子。
なぜか入園してからずっと私の後ろをついてきた。

お散歩で手を繋ぎたいのも
給食を一緒に食べたいのも
お昼寝のトントンの担当も
私じゃないと泣いてしまう。

お気に入りは独り占め。

トイレトレーニングも自分でさっさと
タイミング掴んで完結してしまうし
食事の好き嫌いもしない。
器用にペンを持って絵まで描けちゃう。
話せる言葉は少ないけれど誰かに何かを伝える術は理解してる。

そんな女の子がこだわったのは『黄色』。

ブロックも黄色を集めて積み上げる
製作の時間も黄色いクレヨン
お散歩に行けば公園に咲くタンポポがお気に入り
落ち葉の黄色い葉をバケツいっぱいに集める

こっそり緑やオレンジの葉を入れると
すぐに気づいてその辺に放り投げるらしい。

そして私には「あか」らしい。
赤い葉っぱや赤い身のプレゼントをくれる。

黄色いスコップをお友達が使っていたら、さぁ大変!
子どもたちのお気に入りの戦いはしばらく続く。
大人になると自然と手放して代用探しにすぐ切り替え。
だけど子どもたちはそうはいかない。
笑ってしまうくらい自分のものを守るのに必死になる。

子どもって一生懸命に生きてるなぁって毎日感じる。

見守りながら保育士は作戦を立てる。

どうにか「黄色いスコップを共有してもらおう」と。

まずは、話し合い。
泣き声が大きくなるだけ。うまくいかない。

次に代わりのスコップを用意。オレンジはどうだろう。
同系色だって騙されない。あたちは黄色がいいの。

じゃあ…先生の赤いスコップ!はどうでしょう。
彼女は泣き止んでこちらをじっと見る。おや?
さらに「先生の大事な赤いスコップ。〇〇ちゃんに貸してあげようかなぁ」
大袈裟に演技までしてみたら、なんと作戦成功!
お友だちにお気に入りの黄色いスコップを貸してあげられたのだ。
とっても嬉しかった。

自分の好きなものを主張するのも守るのも大事なこと。
だけど好きなものを他のお友だちにも分けられる。
そんな風になってほしいと思う。

大人が取り上げたり、
譲れないことを怒るのではなく
子どもの手から渡せるようになるために
どんな声掛けをしようか。
と考えるのが楽しみだった。

本当に可愛いこだわり。譲りたくないこだわり。
どんなに小さくても好きなものは自分で決めるし守ろうとする。

好きなものを大事にするっていいな。

あの子はどんなに大きくなっただろう。
すてきなお姉さんになっているはず。

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