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2021年1月の記事一覧
マシーナリーとも子EX ~上野の人の店篇~
ナリタと呼ばれたロシア帽の男。その特徴的な体躯や発する音、徳の低さから見て間違いなく人類だ。ここが池袋であればさほど珍しい光景ではない。だがここは……日本では奈良に並ぶほど人類が少ない地、上野だ。それも労働のための肉としてでなく、店を構えているとは。
「不思議に思った?」
戸惑うダークフォース前澤にターンテーブル水緑が話しかける。ナリタは不機嫌そうにスパスパとタバコを吹かしていた。
「え
マシーナリーとも子EX 〜上野の羊串篇〜
香ばしく焼けた肉に、驚くほど赤いスパイスをこれまた驚くほどかける……いや、もはやまぶすといった領域まで振りかける。意を決して口に運ぶと、スパイスは見た目と比べてほとんど辛くなく、肉の脂と溶け合ったホワッとした香りがダークフォース前澤の口と鼻腔のセンサーに充満した。
「なるほどこれは確かに……うまい!」
「だろう?」
向かいの席でサングラスの女がニコッと笑う。十数分前に出会ったサイボーグ、タ
マシーナリーとも子EX 〜上野の闇市場篇〜
「ウワーッ!」
仮眠室から上司のうめき声が聞こえてきたのでエアバースト吉村はニヤニヤしながら赴いた。別にドゥームズデイクロックゆずきにネガティブな感情を抱いているわけではないが、自分より偉いサイボーグが困っているのを見るのはなんとなく気分がいいからだ。
「ゆずきさぁ〜ん、なんかあったんスかぁ?」
ゆずきは例の日報を開いて肩を落としていた。入ってきた吉村に気づくとずり落ちていたメガネを直し
マシーナリーとも子EX 〜桜の木の記憶篇〜
アメリカ、ヴァージニア州。とある地主の家にジョージは産まれた。
彼には7人もの兄弟がいたが貧乏ではなかった。むしろジョージはこれといって生活に不自由を覚えることはなかった。彼の家はそこそこ以上に裕福だったのだ。父は多くの奴隷を抱え、広大な農園を経営していた。それだけに満足せず、鉱山の開発まで行っていた。ジョージは幸せな毎日を送っていた。だが、父はいつもどこか物憂げな顔をしていた。父は優しかった