扁平足

個人的な結論から
結論、成人期扁平足にて静的支持機構が破綻している場合、保存療法での改善(内側縦アーチの上昇)は困難だと考えています。

ただこれはあくまで構造的に改善することは困難だという意味で、痛みや機能改善を図ることで、症候性の扁平足を無症候性の扁平足へもっていくことは可能だという考えです。

臨床を覗いてみると、「これをやれば扁平足が治ります!」と安直な発言をしてしまっていたり、さまざまなウェブサイトを覗いてみると、「たったの3秒で扁平足が改善!」などと怪しい打ち出し方をしてしまっているものをチラホラ見かけます。

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この奥にどのような根拠や推論が隠されているのかは分かりませんが、我々理学療法士としては、意義のある介入にて、現実的なゴール設定を行う必要があります。

そのうえで、個人的には扁平足症例に対しては、扁平足を構造的に治すではなく、症候性のものを無症候性にもっていくことをゴールに介入を行っています。

静的支持機構って何?
内側縦アーチの静的支持機構としては、バネ靭帯、長・短足底靭帯、足底腱膜があります。

各組織の内側縦アーチへの寄与率↓

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これらが直接的に静的支持機構として働いています。

また内側縦アーチが低下した際の足部アライメントを考えると、間接的に内側縦アーチの保持に絡んでいる組織も見えてきます。

内側縦アーチが低下している状態は、中足部・後足部が外がえし位の状態。

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言い換えると、中足部・後足部の外がえしを制動できていない状態です。

この制動を担っているのは、基本的に三角靭帯(前脛距靭帯・脛舟靭帯・脛踵靭帯・後脛距靭帯)です。

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そのため、三角靭帯も間接的にではありますが、静的支持機構の一端を担っていることが考えられます。

そしてこれらの静的支持機構は、靭帯や腱膜で構成されています。

靭帯や腱膜は一度伸びてしまうと、構造的に元の長さに戻すことは難しいです。

よく捻挫が癖づくとされているのはこういった理由からです。

こういったことから冒頭にお伝えしたように、これらの静的支持機構が破綻してしまっている扁平足を構造的に改善することは困難だと考えています。

動的支持機構の強化はどうか?
扁平足の介入の一環として、動的支持機構の強化が頻繁に行われています。

動的支持機構とは、内側縦アーチの保持に寄与する足部筋のことであり、なかでも後脛骨筋にフォーカスが当たることが多い印象です。

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実際に、このような裏付けもあります。

しかし、この動的支持機構を強化する目的を「静的支持機構が破綻している扁平足の改善」に置いてしまってはいけません。

そもそも後脛骨筋は内側縦アーチの低下を維持する機能をもつとされているだけで、上昇させる作用があるかどうかはなんとも言えないところです。

また扁平足の発症メカニズムを考えてみても、その目的設定が理論的に破綻していることが分かります。

扁平足の発症メカニズムを考える
扁平足の事の発端となる要因はさまざまかと思いますが、後脛骨筋腱の機能不全(PTTD)が起因していることも多いです。

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このような過程で扁平足が生じている場合、後脛骨筋をどれだけ強化しても三角靭帯やバネ靭帯の機能が破綻している状態では、内側縦アーチを上昇させることは難しいです。

そのため、動的支持機構の強化は、扁平足の構造的改善ではなく、さらなる進行予防や痛み、機能改善を実施目的として置くべきだと思います。

無症候性の扁平足を目指したアプローチ
では、最後に無症候性の扁平足を目指して有効なアプローチをいくつかご紹介致します。

・インソール+後脛骨筋トレーニング
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・動的支持機構のストレッチ
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・内側ウェッジの利用
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報告内では内側ウェッジによる後足部の外がえし減少角度は約2°とされているため、果たしてこれに臨床的効果があるのかどうかは不明です。

ただ内側ウェッジの利用によって不利益を被らないのであれば、利用しておくというのが無難かと思います。



・Short foot exercise
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※無症候性の場合
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※Short foot exercise
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※navicular drop
無症候性の扁平足を目指す上で、これらのアプローチは意義のあるアプローチだと考えられます。

扁平足についての知識が浅い方でもなんとなくこのあたりのアプローチが行われている印象ですが、構造的に治ると考えて介入するのと、治らないと考えて介入するのでは、見るべきポイントが変わってきます。

構造的に治ると考えてしまうと、内側縦アーチの高さばかりを効果判定の要素として評価してしまいがちですが、構造的に治らないと考えておくと、自ずと効果判定の要素は痛みや足部機能に向くはずです。

そうすることで適切なゴール設定と患者満足度が得られるのではないかと考えています。

本記事内容は個人的な見解も含みます。全てを鵜呑みにせず、あくまで臨床のヒントと捉えて頂ければ幸いです。


<参考文献>
・扁平足の診断と治療, 整形・災害外科66(4), 金原出版, 2023.
・片寄正樹. 足関節理学療法マネジメント, メジカルビュー社, 2018.

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