作業の能率が上がる(下がる)その要因は?~「社会的促進」と「社会的抑制」
自分が仕事や作業をしている時に、誰か観察者がいたりすると仕事の能率は上がるでしょうか?下がるでしょうか?また、共行動者がいる場合はどうでしょうか?効率が上がる場合もあれば、下がる場合もあるかと思います。
では、それはなぜでしょうか?
このような問題を社会心理学では「社会的促進」「社会的抑制」と呼びます。
この点「社会的促進」とは「観察者・共行動者が存在することにより、個人の遂行が促進される現象」のことを言います。
そして「社会的抑制」とは「観察者・共行動者が存在することにより、個人の遂行が抑制される現象」のことを言います。
注意してもらいたいのは「共行動者」とは「共同作業者のことをいうのではなく、同じことを同じ場面で行っている人のことを差す」ということです。
この点、かつては、社会的促進が起こる作業は「単純作業」であり、逆に社会的抑制が起こるのは「複雑作業」である、と考えられていました。
オールポートによる研究です。
その30年後、ザイアンスがその説を理論づけました。
ザイアンスは、課題の性質によって、なぜ社会的促進と社会的抑制に分化するのか、その原因に関する仮説を提唱しました。
それを「動因理論」と呼びます。
「動因理論」とは、他者との接触によって覚醒水準が高まると、活動に対する動因が高まり、そのように動因が高まった状態では、その時点において支配的な傾向(「優勢反応」)が引き起こされやすくなる、という理論です。
そうなると、もともと簡単な作業や作業者が十分に熟達しているような作業においては、効率よくスムーズに行動することが支配的な反応傾向(優勢反応)なので、他者がいる時にはますます効率よくスムーズに行動できるようになり、その結果、作業成績が上昇する・・・というわけです。
逆に、もともと複雑な作業や作業者が未熟だったりする作業においては、非効率的でぎこちなく行動することが支配的な反応傾向(優勢反応)なので、他者がいる時にはますます非効率的でぎこちなく行動するようになります。その結果、作業成績は低下します。
これが「社会的抑制」です。
めちゃくちゃ簡単に言っちゃいますと、人が見ている場合にはそれを意識する訳ですが、その意識により精神的に敏感な状態になり、課題の性質や、その人の特性がモロに出てしまい(優勢反応)、簡単な事や自分の得意なことなどはバリバリやれる!
逆に、複雑なことや自分が不慣れなことは、ドギマギしてしまい、全然できないようになる。
といった感じでしょうか。
そう考えれば、作業効率が上がる優勢反応が出るように、普段からの訓練が非常に重要になるわけです。
言っちゃえば当然で、至極簡単な話なのですが、この理論づけを発見したところにザイアンスの大手柄がある、ということなのです。
ちなみに、ザイアンス以降の研究として、例えばコットレルの研究が挙げられます。
ザイアンスは、他者がいるだけで覚醒水準が高まる(難しい書き方をすると「他者存在ー覚醒水準上昇」という、S-R)と考えたのですが、コットレルは、他者に見られることによる「評価懸念」の発生が覚醒水準が上昇する原因(これまた難しいことを言えば「他者存在ー評価懸念ー覚醒水準上昇」という、S-O-Rという図式)だと考えました。
従って、観察者や共行動者がいても、その人たちによって自分の成績が評価されてしまうという懸念を持たない場合、社会的促進も社会的抑制も起こらないということになります。
これをコットレルは実験によって証明しました。
これも考えたら当たり前のように思えますが、これを実験によって証明したことが、コットレルの重要な業績なのです。
簡単にまとめちゃいますと、普段からしっかり訓練し、他人の目を気にしなければ、効率よく仕事ができる、というところでしょうか(当たり前だし、端折りすぎ・・・)。
ということで、今回はこの辺で。
心理学に関することも、また書いていこうと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。
それでは一旦!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?