遺伝か環境か?~心理学的「発達」の要因~
そもそも「発達」とは何だろうか?
心理学でいう「発達」とは、質的変化であり、心身の成熟や経験に基づく学習によって生じる「変化」として現れるもの、と定義されます。
それに似た概念として「成長」があります。
心理学でいう「成長」とは、量的な変化であり、時間の経過に伴って大きさや構造的な複雑性の増大という形で観察されるもの、と定義されます。
今回は「発達」について考えてみます。
人間が持つ諸特徴の発達は「遺伝か環境か?」という問題点があります。「氏か育ちか」といわれる論点です。
この点、ジェンセンは「環境閾値説」という概念を提出しました。
「環境閾値説」とは「発達は、特性によって環境条件の働き方が異なり、遺伝的な特性が発現するかどうかは、環境条件が、特性ごとに決まっている閾値(一定の水準)を超えるかどうかによる」という考え方です。
例えば、「身長」は、よほど劣悪な環境に置かれない限り、遺伝的に規定された一定レベルまでは発達しうる特性だと考えられます。
他方で、「絶対音感」のように、早期に適切な音楽教育を受けなければ、いくら遺伝的素質があったとしても、発達しない特性もあります。
つまり、「身長」を規定する遺伝子は、わずかな環境刺激に敏感に反応して素質を十分に発揮する遺伝子ですが、「絶対音感」を規定する遺伝子は、豊富な環境刺激が与えられなければ反応しない遺伝子である、ということがいえるのです。
これは、「身長」の閾値は低く、「絶対音感」の閾値は高い、ということになるのです。
ジェンセンによって提唱されたこの説は、遺伝と環境は単純加算的に発達に影響を与えるのではなく、遺伝的要因は環境要因という刺激によって触発される(各遺伝的要因が発現するかは、その遺伝子が持つ閾値の高低と、それに応じた環境刺激の質・量の関係により異なる)ということを明らかにしたのです。
ということですので、個々の特性について、その発達における閾値を確認したうえで、適切な環境的要因を設定することが非常に大切になってくるのです。
また、幼少期に色々と「習い事」をしてみるのは、発達という観点からは大切なことだといえるかもしれません。勿論、子どもがやりたいということを、実際に可能な範囲内で行う、ということが大前提ではありますが。
ここら辺の問題に関連して、一卵性双生児を用いた、ゲゼルの「階段のぼりの実験」というものがあるのですが、これについてもまた書いてみようと思います。
キーワードは「レディネス」と「成熟優位説」です。
ということで、今回は「発達」をテーマに書いてみました。また心理学についての記事を書こうと思いますので、その際もどうぞ宜しくお願い致します。
それではいったんこの辺で!