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一般に流布する「マズローの欲求階層説」から抜き取られた本質部分。

最近、Twitterのタイムライン上に「承認欲求」についてのツイートを見かけることが多くありました。また、それに関連して、「マズローの欲求階層説」についてのツイートも見かけました。

この点、この学説の正確な理解が一般的にはなされていないのではないかと思うのです。ですので、多分に概略的ではありますが、この説についてポイントだけでも述べてみたいと思います。

「マズローの欲求階層説」とは、人間性心理学者のマズローが唱えた学説で、人間の欲求を低次のものから高次のものへと順位付けし、分類を試みたものです。

マズローは、「人間は自己実現に向けて成長を続ける生き物である」という人間観に立ち、「自己実現の欲求」を最上位とする欲求の階層説を唱えました。

では、欲求階層説の内容を見てみましょう。

欲求階層は、5段階に分かれます。

一番下の階層は、①「生理的欲求」です。
これは、自己の生命維持の食・水・睡眠などの欲求です。食べなければ死んでしまいますし、寝ないと生きていけません。

これが十分に満たされたら、次は、②「安全の欲求」がやってきます。
これは、自己を危険から遠ざけることへの欲求です。周りが危険だらけだと、それから身を守ることに専念せねばならず、自分のやりたいことをやる暇などありません。

これが十分に満たされたら、次は、③「愛情・所属の欲求」がやってきます。
これは、他者と交流することへの欲求です。
ここら辺から徐々に余裕が出てきた感がありますね。人はひとりでは生きていけないですからね。

これが十分に満たされたら、次は、④「自尊の欲求」がやってきます。
これは、他者から自己の価値を承認してもらうことへの欲求です。いわゆる「承認欲求」といわれる欲求です。人から認められてはじめて自分のことを一人前の人間だと感じることができます。
しかし、承認欲求が強すぎると逆に不健康になり、様々な精神症状として現れたりもします。

これが十分に満たされたら、次は最終段階!⑤「自己実現の欲求」に到達します!
これは、自分の可能性を追求し、純粋に成長することへの欲求です。これが最終段階になります。

マズローの欲求階層説は、ビジネス書などにも多く登場するようですので、ご存じだった方も多いかもしれません。しかしそこには、この学説について根本的な誤解がある危険性が存在しています。

ビジネス書などに書かれていることと違い、マズローが言う「自己実現の欲求」は、生半可なものではなく、めちゃくちゃに選抜された人間に限定して認められる欲求と考えられているのです。

例えば、「脱サラして起業する!」とか、「将来の大作家を夢見て、大好きだった小説を書き始める!」などという程度では、到底、「自己実現の欲求」とは言えないのです。

この点、マズローは「自己実現の欲求」について、単なる「夢の追求」を提唱している訳ではないことに注意が必要です。
マズローは、自身がその理論の最高位に位置付けた「自己実現の欲求」について、ごく一部の社会的成功者に限った話として、これを語っているのです。

①~④の欲求が十分以上に満たされた、ごくごく一部の人間だけが、自己実現の欲求にたどり着くことができるとしているのです。

言ってしまえば、富も名声も地位も名誉もほしいままにした人間だけが、到達できる高みなのです。
パッと考えて思いつくのは、イチローの今後の人生ぐらいでしょうか。
ですので、本来的には、ビジネス書に載せるような概念ではないのです。

この点、一般的にかなり誤解されているような気がしますが、実際はこのような理論なのです。

一般的にマズローのこの学説を知るのは、ビジネス書や啓発本が切っ掛けになることが多いのかもしれませんが、そこにはこの本質が抜け落ちている可能性が高いので、気を付けて頂きたく思います。

単純に考えても、⑤の「自己実現の欲求」に至るまでの①〜④の欲求を完全に満たした人間など、そうそうお目にかかる機会などないことは実感として理解できるはずですよね。

ということで、今回は「マズローの欲求階層説」について書いてみました。
ざっくりとしか書けませんでしたので、関心のある方は、それなりの心理学のテキストに目を通してみてください。僕もまた勉強してみます。

それでは、一旦この辺で!


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