ジジの起こした小さな奇跡
22021年7月22日(木)は、オリンピックのせいでうち中のカレンダーは黒い日なのに、祝日でした。
来る8月1日の墓参の日に備え、我が寺では除草が間に合いません。檀家総代のおじさんたちにお願いするか、と副住職のお尻をたたき、草刈りのお手伝いをお願いしたら、22日の朝7時から開始、ということになりました。
前の晩、明日は早いからさあ寝るぞ、と気合を入れて歯を磨いていると食卓の上に見慣れぬ瓶が置いてあります。
「グリホサート」
と書かれていました。ホームセンターの除草剤コーナーでは見かけたことがありましたが、食卓の上に乗っているとその違和感から存在感たっぷりです。
老人にも読める太字のゴシックで、発がん性はありません、奇形性もありません、安全です、と書いてあります。
本当に書いてあるんだ・・・・。すごい。
日本以外の先進国ではたいてい使用が認められていません、とは書いてありません。モチロンですね。
これを誰が買ってきたのか。
弟がジジに買ってこさせたのか?と思うと胸が苦しくなりました。何もできない死刑囚に自分の首を絞める縄を買いに行かせるような所業です。
ジジは、何台も刈払い機をダメにしながら、何枚ものガラス窓に穴をあけながら、ミイラのような身体で草を刈り続けているのは何のためなのか。
ズバリ、除草剤を使わせないためです。
私はその瓶の処置に困り、とっさに隠してしまいました。明日になったらその時はやってくるのでしょうが、少しでも・・・、という淡い期待を胸に。。。
そして、朝です。
弟が私を起こします。
「ねーちゃん、昨日除草剤がテーブルに置いてあったと思うんだけど、知らない?」
ーええ、知っていますとも。この悪魔な息子め!ー
断末魔のあがきとして、この除草剤の恐ろしさを念仏よろしく弟の背中に説いて聞かせながら、とてーも大げさに隠し場所から取り出しました。
結構ビビる弟・・・。へへへ。
「だって○○さんが草刈ったら撒けばいいって・・・」
総代のおじさんのせいにする弟。
そして草刈りがスタートです。
そして、起きたのです。奇跡が。
しばらくすると、お寺の電話が鳴りました。
取ると前述の○○さんです。なんと、欠席連絡!!!!
前の日にコロナの注射を打って、腕が上がらず微熱が出たとのこと。
コロナワクチン、ばんざーーーーい!
私がコロナのワクチン注射に感謝した初めての瞬間です。
最後まで○○さんは姿を見せなかったので、除草剤散布は行われず、刈払い機でザックリ草を刈るところで終了です。
一命をとりとめたジジ(笑)。
ジジにとって、目の前にある草や木が健康であることは自分の命と同じ重さを持っています。それが植物学者。
ジジは、今でこそそのパワーは弱まりましたが、どんな草木も生き返らせる不思議な力を持っています。草木と会話ができるのです。そういう人を英国では緑の指を持っている、と表するらしいです。ジジの緑の指は、すんでのところでつながりました。これまでも、何度か除草剤クライシスはこのお寺の境内を襲ったのですが、ジジの御代には不思議と守られてきています。ジジの力です。
私はホッとしました。そして、その辺のことを理解してあげない弟に不安を覚えました。
まあ、このあたりのことが、私の介護生活を複雑にしていることはわかっているのですが、自分がその立場に置かれた時のことを思うとかわいそうでなりません。
ということで、今日も境内の草はのびのびと元気です。そろそろ夏の装いから秋の装いに移ろうとしています。
来週、8月4日は土用の中休みで、毎年頼んでいるおばちゃんお手伝いさんにお願いしました。安心してお願いできます。これが何より大事。