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#エッセイ

舟を漕ぐならば

舟を漕ぐならば

僕たちはどこへ行くのか

帆は小さく
波は高い

床板は軋み
霧が霞む

オールもエンジンも
とうの昔に捨ててきてしまった

ここにあるのは果てのない線と
白く獰猛な起伏

でも僕たちは
漕がねばなるまい

つきまとうものを振り払うすべは

カモメを眺めて泣くことか
魚にキスをすることか
太陽を口一杯に頬張ることか

僕はまだ知らない
そして、知っている

世界には尻尾があるらしい
ここはまだ水槽

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家

未だ他人のうちの匂いがして

お邪魔します
の気持ち

ただい


自分の声色に少しの羞恥
思いのほか響いて狼狽

夜は電気を消して
手元だけ橙を灯し
良い酒を、ほんの少し飲む

窓を開け放てば風達の往来

今夜は
キッチンの床や
狭い廊下に横になって眠りたい

(いるならば)ゴキブリや蜘蛛や幽霊が
私の傍らを駆けていくだろう
孤独が散るなら
それはそれで構わない

私はこの家を早く
私の住処に

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べきこと

べきこと

誰かから溢れる
べき

耳を塞いでも目から
目を閉じても記憶から

腰の中に
あるいは
肋骨の隙間に
重石を積まれたように
窮屈で仕方がなくて
身をよじらせる

ちがう
あたしには
そんなものは
いらない

若いうちに。
独身のうちに。
元気なうちに。
生きているうちに。

べき
ことなんて
ひとつだって、ない

産声をあげたそのときに
死の香りを

等しく
限りがあることを

匂ってしまった

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