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#詩

空振りフルスイング心地良い音

空振りフルスイング心地良い音

適当なことが大好き

“棒にふる”が大好き

たとえば、
ものすごく高いジェンガがあって
「あと一段積み上げたら1億円もらえます」
があったら

30メートルぐらい助走をつけて
笑顔で体当たりして
一段残らず崩したい

きっと1億円よりも面白くて
豊かな味がすると思う

渡部有希

舟を漕ぐならば

舟を漕ぐならば

僕たちはどこへ行くのか

帆は小さく
波は高い

床板は軋み
霧が霞む

オールもエンジンも
とうの昔に捨ててきてしまった

ここにあるのは果てのない線と
白く獰猛な起伏

でも僕たちは
漕がねばなるまい

つきまとうものを振り払うすべは

カモメを眺めて泣くことか
魚にキスをすることか
太陽を口一杯に頬張ることか

僕はまだ知らない
そして、知っている

世界には尻尾があるらしい
ここはまだ水槽

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家

未だ他人のうちの匂いがして

お邪魔します
の気持ち

ただい


自分の声色に少しの羞恥
思いのほか響いて狼狽

夜は電気を消して
手元だけ橙を灯し
良い酒を、ほんの少し飲む

窓を開け放てば風達の往来

今夜は
キッチンの床や
狭い廊下に横になって眠りたい

(いるならば)ゴキブリや蜘蛛や幽霊が
私の傍らを駆けていくだろう
孤独が散るなら
それはそれで構わない

私はこの家を早く
私の住処に

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黒猫

黒猫

街路樹の影が
真っ黒で
ニァアと聞こえた

ああ、
誰かいて
私を呼んでいるのね


耳を塞いでいた
真っ白いイヤホンを外して
影へ歩み寄る

そこには
枯れた葉が2枚
ちらりと落ちているだけで

ニャアも
なにも
なかった

それが
とてもとても
悲しかった

ひとりのかえり

ひとりのうちへの

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詩人ってすごい職業だと思います。

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べきこと

べきこと

誰かから溢れる
べき

耳を塞いでも目から
目を閉じても記憶から

腰の中に
あるいは
肋骨の隙間に
重石を積まれたように
窮屈で仕方がなくて
身をよじらせる

ちがう
あたしには
そんなものは
いらない

若いうちに。
独身のうちに。
元気なうちに。
生きているうちに。

べき
ことなんて
ひとつだって、ない

産声をあげたそのときに
死の香りを

等しく
限りがあることを

匂ってしまった

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