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短編

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書いた短編をまとめていきます。
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#記録

耳心

耳心

恥の多い人生でしたって太宰は書いてるけど、私だって現在進行形で恥じながら生きてる。

人間失格、だって。
ねえ、そんなのあんただけじゃないんだけど。
と思いながらショッキングピンクのカバーの文庫を閉じた。でも私は、太宰のそういう、普遍性を自分だけのものみたいにしちゃうところとかが、やっぱり好き。
私のピカピカの長い爪も、カバーと同じショッキングピンク。でもそれは、私がただピンクが好きってだけ。

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意識の旅

意識の旅

東京駅だった。

周りの人達は行き先があるようで、ある人は早足に、またある人は浮かれ気味に、またある人は疲れた様子で、私の横を通り過ぎていく。

皆、私のことなど見えていないのだった。

1番近くにある電光掲示板をみると
仙台•山形、郡山、青森、新潟、金沢
と、天気予報でしか見ない地名が当たり前の顔をして羅列されていて、むず痒い気持ちになる。

手のなかにある切符には、東京⇔新青森、とある。

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