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[英國暮らし]オックスフォード植物園で作るクリスマス・リース

 11月なかばごろから少しずつ、街は本格的にクリスマスムードに。イギリスにいるなら一度は行きたかった園芸関係のイベント。数ヶ月か前から楽しみにしていたリース作りに行ってきました。会場はなんと、オックスフォード大学附属植物園


オックスフォード植物園とは

 オックスフォード中心部、モードレンカレッジと向かいあうように建っているオックスフォード大学附属植物園は、 創立400年を超えるイギリスで一番古い植物園。あのC.S.ルイスやルイス・キャロルも訪れたという由緒正しいところです。オックスフォードに引っ越してきて真っ先にやったのが、ここの年間パスを買うことでした。それ以来、春は薔薇、夏は温室にお友だちをと訪れ、秋は紅葉……と何度も訪れている大好きな場所です。

薔薇のころのボタニック・ガーデン

 大学附属機関なので、さまざまな植物について学べるレクチャーや、子ども向けのアクティビティーなどが年間を通して行われています。目の前のハイストリートからX40のバスでイフリー・ロードを南へ20分ほどの樹木園(Harcourt Arboretum)のほうでは、10月末にフェアも行われていて、ロバや小ヤギなど動物とのふれあいコーナーがあったり、園内で飼われてるクジャクとお散歩できたり、植物園で作られたハーブを使ったオリジナルジンが試飲できたり(香り高くておいしかった!)。まさに森という感じのくつろげる場所なんです。

アーボリータムのクジャク 放し飼いです

リース作りは大人気


 今回のリース作り、朝・昼の2部制でそれぞれ8人ずつが定員だったそうなのですが、なんとその3倍近くのウェイティングリストがあったとか……。メールマガジンを購読しているので、企画を知ってすぐ予約したのが8月中ごろ。なかなかのお値段を先払い(£50。ただし教育の一環なので利益は出ていないとのこと。VATもありますしね)だったのに、ドタキャンの人がけっこういてもったいないねーと話題になってしまいました。キャンセルの連絡、大事ですね。

 さて植物園はシティ・センターのど真ん中にあるので、それほど規模は大きくありません。常連ぶって「きっと会場はあそこだな」と目星をつけていたら、やっぱり! 入口近くのいつもはゼラニウムなどが育てられている温室が会場でした。(ちなみに温室は他に2棟あって、こちらはコウモリランからサボテン、睡蓮までさまざまな熱帯植物が見られます。観葉植物好きにおすすめ)

温室はあたたかい

会場の温室。後ろに見えるのはモードリン・カレッジ

 事前のお知らせで「暖房がないのでアウトドアのあたたかい格好できてください」「あたたかい飲み物持参してください。園内にコーヒー屋台もあるよ」「靴はハイキングシューズかスニーカー、エプロンとガーデニンググローブもあるといいよ」などと丁寧な説明があったので、ダウンを着込んで重装備で行ったのですが、たまたま天気のいい日だったので、温室のなかはとってもあたたかい! コートを脱いでマフラーを外してもぽかぽかでした。

リースは土台作りから

テーブルの上


 さて、長テーブルについて置いてあるグッズを見ると、あれ、土台がワイヤーだけだ! 巻くのに使うのも金属のワイヤーです。これまで2回ほど日本でリースを作ったことがあるのですが、その時は枝で作った土台に、ワックスを塗ってある緑色の糸で巻きつけていきました。これは、土台どうなるんだろう?

運びたての苔

 そう思っていると、目の前に手押し車とその中にこんもり盛られた明るいベージュ色のふわふわの苔が見えます。なんと、この苔を使ってベースを作っていくとのこと。まずはスポンジみたいに手でギューっと絞って水分をしぼり、ざっくりひとつかみ円形の土台にに押しつけ、細いワイヤーでぐるぐる巻きつけていく。けっこう、ワイルドな感じ!

材料はすべて植物園・樹木園から


 そんなこんなで苔のベースができあがりました。水分をたっぷり含んでいるので、これがオアシス(スポンジ)代わりになるんですね。飾り終わったリースはほとんどの人が捨ててしまうけれど、もしやりたければ苔で作ったベースは乾かして保存すれば来年も使えるとのこと。サステナブルですね!

よく見ると花の蕾などもまじっています

 さて、お待ちかねの資材選び。すべてこの植物園や樹木園から集めてきたとのこと。いつも訪れている大好きなこの場所で育った葉っぱや木の実を使えるなんて、胸が高まります。説明のなかで植物の長くて複雑な名前がぱぱっと出るところは、さすが研究員のみなさんという感じです。

 ベースに使うのは2種類の針葉樹。そこに別の葉っぱやら、実やら、ヒイラギ、オリーブ、ユーカリなどなどを束ねてワイヤーでとめ、まずは手のひらサイズの小さな束をつくります。それを20個ほど作ったら、ベースに巻きつけていく。この過程は日本でやったのと同じです。ポイントは暗い緑か明るい緑か、ベースを決めること(葉っぱを裏にして使うのもあり)。苔のベースを隠せるよう、ボリュームをもたせた束をつくること。

イギリスのリースは色とりどり

 ひととおりの説明が終わると、あとはおのおの思い思いのリースを目指して作業に没頭していきます。クリスマスソングもかけてくださって、雰囲気たっぷりのなか手を動かします。さすがイギリス、半分のかたがはじめてとおっしゃってましたが、手際がよい……ぜったい編み物とかできる方たちですよね。

さまざまな種類の葉っぱたち


 こういう手作業にチャレンジするのが好きなわりには手先がめちゃくちゃ不器用なので、ワークショップではだいたい先生にお手伝いしてもらうことになってしまいます(給食が食べきれず掃除時間になってしまった小学生の気分)。しかも、目の前にはいつもは触れあえない植物園の「中の人」がいらっしゃるとあっては、ついつい園芸トークに花を咲かせてしまいます。ヤドリギがあったので、イギリスに来てヤドリギがクリスマスモチーフになる理由がわかった(秋になって葉っぱが落ちると街のあちこちの木についているのが見える)なんて話を聞いてもらいながら作っていきます。

 形がまとまったら、さまざまなオーナメントを追加。赤い実とか、松ぼっくりとか、オレンジを乾燥させたものとシナモンスティック(いい匂いのするこの2つはクリスマスの定番みたいです)など。ほかのかたのものを見る余裕があまりなかったのですが、色とりどりに仕上げるのがイギリス風なんだなと思いました。あとみなさんボリュームがかなり大きい! おうちも大きいからかな?

出来上がったリースは「エレガント」


 個人的にはお花は派手な原色やパステルよりも、自然な緑っぽいものや、よく言えばニュアンスカラーっぽい中間色や落ち着いたトーンのものが好きなので、赤やオレンジを入れずに、緑ばっかりで作っていたら「エレガントだね」とコメントいただきました。最後の組だったのでゆっくりやっていいよとは言っていただきつつも、けっこう焦ってしあげてしまったので、オーナメント少なめ。でも見たことのない感じの木の実を最後に見つけてくっつけたところ、なんとヘーゼルナッツだそうです。

 時間は2時間くらい。大好きな場所で、特別なリースを作ることができました。植物園の一部を家に持ち帰られる、めったにない機会になりました。

できあがったリース。リボンも一番落ち着いた色にしました

今日のひとこと

 オックスフォードシャーはこの秋、かなり長期間にわたって洪水がつづいていたのですが(街の中心部ではそれほど影響はないものの、パントが長いこと中止になっていました)、それにつづけてStorm Bertが襲来。植物園わきのチャーウェル川も増水して流れがかなり速くなり、植物園も広範囲にわたって閉鎖されていました。

増水したチャーウェル川 奥のラグビー場も水没しています



 

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