[英國旅]エリザベス女王の愛したバルモラル城に行ってきた
8月なって観光客とサマースクール生で溢れかえるオックスフォードから、一週間ほどスコットランドへ旅行してきました。奇しくも、第一、第二、第三の都市をめぐる旅になりました。日程の中心になったのは、200年の歴史上初めてその内部が一般公開される、バルモラル城を訪問すること!
王室の避暑地、バルモラル城
きっかけはコロナ禍の暇を持てあましてNetflixで『ザ・クラウン』という英国王室を描いたドラマを見たこと(まさか当時はのちにイギリスで暮らすことになるとは夢にも思いませんでした)。そこで印象的だったのが、英国王室が所有するスコットランドのバルモラル城。避暑など、ことあるごとに出かけていくエリザベス女王のお気に入りの場所として印象的に描かれました(ダイアナ妃の訃報を知ったのもこの場所)。
バルモラル城を最初に気に入ったのは、ヴィクトリア女王。もともとは狩猟のためのロッジだったこの場所にあった15世紀のお城を含む一帯を、夫であるアルバート公が1852年に彼女へのプレゼントとして購入。それ以来、王室の私有財産になっているようです。スコットランド北東部アバディーンシャーにあるディー川を臨む、ロイヤル・ディーサイドと呼ばれる豊かな自然のなかにある、260平方キロメートルにわたる広大な土地にあります。
約200年の史上初!内部一般公開
そしてなんとこの夏、200年ほどの歴史のなかではじめて城の内部が一般公開される「Castle Internal Guided Tour」の開催と知ったのは5月はじめ。ただし、期間は2024/7/1〜8/4の約1ヶ月、1回の定員は10人、というかなり限られた機会。もちろん気づいたときにはソールドアウトだったんですが、よく見ると「追加販売の予定」の文字が。なんとかそこで確保できたのが、最終日の8/4でした。
ちなみにチケット代は1人100ポンド……! これが王室価格か!! アフタヌーンティー付きのツアーもあったようですが、Tripadvisorなどの口コミで「カフェはたいしたことない」と読んだのでまあいいかなと思いました(ただ、後述しますが今はすごくきれいなカフェにリニューアルしていました!)。
訪問までの高いハードル
とはいえイギリス全体で300人ほどしか経験できない貴重なガイド付きツアーに参加できるとあって、とても楽しみに旅行計画を立てました。もともと予定していたエディンバラのミリタリー・タトゥーの日程(座席位置を悩みに悩んで買ったもの)を、わざわざ事務所に電話して変更(とても親切で、座席の差額のみで変更してくれました)、幸い飛行機などはまだ押さえていなかったので、この予定を中心に組み直しました。バルモラル城に一番近いのは、スコットランド第三の都市アバディーン。そこからバスを乗り継いで3時間ちょっと……なかなか大変そうですが、これで行こうと決めました。
すると、出発2、3日前になって「朝9:40に絶対来てね、遅れると見学は保証できません」というメールが……。いやいや、予約サイトには12:00〜って書いてたよね? そんな早く着くバスなんてないんだけど……と慌てて問い合わせますが、「もとから10:00スタートのつもりだった。ウェブサイトにそのような表記がされる予定ではなかった」という回答が……(その後もサイトの修正はなし)。絶対に間違っていたとは言わない強い意志を感じました。
これは車で行くしかない。街中心部からは1時間15分ほどだといいますが、いちおう車の免許も国際免許証はあるものの運転経験に乏しく……。しかも、日曜日だったのでアバディーン中心部のレンタカー屋は軒並み9時や10時オープンで間に合わない。閉店も16時とかで早い。タクシーも調べましたが料金は片道100ポンドほど、しかもタクシー会社の口コミが悪すぎて、空港のタクシー乗り場にすら約束通りには来ないとかで不安しかありません。他のツアー客に迷惑をかけるわけにもいかない。これは前日に到着して空港でレンタカーを借り、ホテルに駐車して、当日早朝に出発するしかありません。なかなか大掛かりになってきたぞ……。
森のなかのお城
なんとか空港のHertzで車を借り、朝8時すぎに海辺のホテルを出発。併設のバーが深夜までめちゃくちゃ騒がしかったのであまり眠れませんでしたが、昨日の夕飯時にレストランから眺めた海にかかっていた虹を信じて、なんとか発進します。街の中心から少し走ると、だんだん田舎道に。牛、羊、野原、森、ラウンドアバウトにつぐラウンドアバウト。ときどき小さい町があって「アンティーク」の看板が気になりますが、道に転がるお亡くなりになった野生動物たちから目を背けつつ、先を急ぎます。
そして1時間30分ほどで、お城に到着。城につづく橋の手前の駐車場に停めて門に向かうと、ガイド付きツアーの参加者は場内に駐車スペースがあるとのことで、オーディオガイド、地図、記念チケット(厚紙)を次々と手渡されつつ、あらためて車に乗って敷地内へ! 8月半ばに王室メンバーが避暑にやってくるまでのあいだは城は一般公開されているので、たくさんの人がハイキングスタイルで歩いています。その横を車で通り抜けつつ、ギフトショップ近くに駐車。余裕を見て出てきたものの、けっこうぎりぎりになったので集合場所まで森のなかを走ります。
いざ城の内部へ!
集合場所に着くと、守衛さんとその日のツアー仲間が待っていました。最後ではなかったようで一安心。残念ながら城内部はお写真禁止、また陶磁器などもあるのでハンドバッグは肩にかけるのではなく手で持つようにと言われました。お城に入ると、まずは玄関前のmudroom(靴脱ぎ室)で椅子に腰かけて靴にビニールカバーをかぶせつつ、ガイドの若い女性2人にバトンタッチ。長靴や釣り道具、おそらくドアストッパー代わりのカーリング・ストーンなど、さっそく生活感溢れる感じにわくわくします。もともと狩猟のための場所だっただけあって、鹿の首の剥製が壁からにょきにょき生えています。
実際に見せてもらったのはリビング、ダイニング、ライブラリーなどをはじめとした5部屋ほど。ヴィクトリア女王がウィリアム・モリスにデザインさせたという壁紙から、彫像、絵画、食器類や家具など、それぞれの由来なども丁寧に説明していただきました。ヴィクトリア女王とアルバートの有名な肖像画もあり、ふたりは当時の流行とは違って明るいパイン材の家具を好んだとかで、ピンクや水色をベースとした明るいタータンのカーテンやラグなどとあわせて、軽快な印象のお部屋もありました。最後は、2022年9月8日にエリザベス女王が亡くなったお部屋も(参考:25ans「スコットランド・バルモラル城で初のガイドツアー、チケットは即完売!?」)。とにかく、居心地の良さそうな雰囲気が伝わってきました。
新しいカフェとショップ
ツアーは約1時間。この日はツアー最終日ということで、来年もまたこういう機会があるかは未定とのことでした。あまりの寒さ(風が強い)にいったん車に戻って服を着込み、その後、一般向けに唯一公開されているボールルームも見学。そのままカフェでひとやすみします。あれ、口コミと違ってきれいでいい感じのカフェとお土産屋さんがあるじゃないか……なんと、リニューアルオープンしたばかりとのことです。アフタヌーンティーは高級感のある別室が用意されているようでした。寒かったので魚のスープと、女王を偲んでヴィクトリアケーキをいただきました。おいしかった!
その後、こちらも新装開店というギフトショップへ。革製品やタータンのストール、関連書籍やおなじみコーギーのぬいぐるみ、ジンにウィスキーなど、充実のショップでしたが、なかなかの王室価格でした……。オックスフォードにあるブレナム宮殿もそうでしたが、こういうところってけっこう高級路線なんですね……。
まとめ
行く前は「写真が撮れない」「部屋5つで100ポンドなんて高い!」って口コミを見て不安になったりもしたんですが、結果としては、本当に行けてよかったです。まさに人が生活しているお城を垣間見られるなんてめったにない機会ですし、ガイドさんの解説も歴史に明るくないわたしにもわかる内容で、少人数ならではのアットホームな雰囲気のなか質問にも快く答えてくださったし、王室の方々がいかにこの城を愛しているかが伝わりました。ボールルームやカフェやギフトショップに飾ってあるさまざまな絵を見るたび「これのオリジナル、さっき見た……!」と何度も衝撃を受け、このツアーの貴重さを噛みしめました。
レンタカーの返却時間が迫っていたので駆け足ながら、敷地内を少し散策。温室や庭園、菜園がものすごく充実していて見応えがありました。お庭の改革にはチャールズ国王がかなり力を入れているとかで、地産地消というか、お部屋に飾るお花も、食べる野菜やハーブもここで育てたものを多く使っているのでしょう(とれたてのルバーブやミント、シュガーピーやスイトピーなどはショップ前で販売もされていました)。今回のお城の内部公開もエリザベス女王が亡くなって、チャールズ国王になったからこそはじまったもの。小さい子連れのお客さんも多く、カフェやギフトショップの商売上手っぷりにもうなりました。
毎年3〜8月と10〜11月に一般公開されているバルモラル城。ハイキングがてら一日かけて訪問するのもいいと思います。ウィンドブレイカーなど暖かい服装をお忘れなく!
*今日のひとこと
イギリスの運転、右ハンドル左側通行なのはいいんですが、ラウンドアバウトがやっぱり難しかったです。もっと練習しないと……!
🏴スコットランド旅 (その1:バルモラル城/その2:ミリタリー・タトゥー/その3:ハイランド/その4:グラスゴー)