基本全ては上司次第
最近の人事・組織界隈のバズワードでもある「心理的安全性」。日経COMEMOで、心理的安全性を確保するにはどうしたらいいかというお題が出ていましたので、少し書いてみることにします。
心理的安全性の確保された状態とは?
ここ数年やたら聞くようになったし、私もちょっとした文章を書いたりコメントしたりするときに良く使うこの言葉。私見ですが、こんな状態を指して使っています:
どんな発言でも、とかどんな行動でも、という表現を使いましたが、そこにはもちろん誹謗中傷する発言だとか犯罪行為につながりかねない行動だとかは含んでいません。そして、そのような組織はどうなっているのかという意味では矢印の右側がそのサインだといえると思います。
よく、会議などでみんなが発言してくれないとか、積極性に欠けるとかいうマネジャーやリーダーがいます。もちろん、そういう行動をするのは部下であり参加者であるわけですから、その人達の資質や態度による部分はゼロとはいいませんが、私は「心理的安全性の確保された状態」という場の雰囲気を作るのは、むしろマネジャーやリーダーの責任が大きいのではないかと思っています。
つまり、心理的安全性を確保すべき人は、マネジャーやリーダーの側だということです。
心理的安全性が確保されているとどうしてパフォーマンスがあがるのか
では何をすべきかの話に行く前に、そもそもどうしてみんな「心理的安全性」を求めるのか、のところについて整理しておきたいと思います。もう一度冒頭のところに戻って、矢印の右のところが大事です。
色んな意見が出てくることはすなわち多様性の確保につながります。多くの視点から物事を検討することで、よりよいアイデアにつながるということは理屈としては分かっている人が多いと思いますが、感覚的には必ずしも腹落ちしていない人も多いように見えます。なぜなら「多様性」って往々にして効率が悪いから。似たような意見の人で物事を決めていると一見議論はスムーズに進みます。そしてスピード感という指標でいうと効率が良いようにも見えます。けれども、希少な少数派の意見を聞くことから得られる思いがけない発見や大事な視点を見逃しているかもしれないというマイナスの可能性には気付いているでしょうか。
逆に心理的安全性が確保されていないとどうなるのでしょう? 分かりやすくいえば、「こんなことを言ったら折角まとまりかけた議論を紛糾させてしまうのではないか」と忖度して発言を控える、とか「自分なんかの発言は価値がない」と思いこんでしまったり、「もし否定されたら」カッコ悪いとか評価が下がると思って黙ってしまう、という結果につながります。
次に行動についてはどうでしょうか? 心理的安全性が確保されているのなら、安心して失敗できます。言い換えれば、失敗してもいいんだから、良い結果につながる可能性のあることに挑戦できます。
一方、失敗すると責められたり、次のチャンスが遠のくという状況の中では、誰しもリスクを取りたがらないでしょう。もちろんうまく行けば認められたり褒められたりするかもしれません、でも失敗することのリスクが大きければ、何もしないという選択をする人が多いだろうということは想像に難くありません。
心理的安全性のためにあなたができること
発言するのは、行動するのは、その人自身の問題でありながらも、私がそういった場づくりの責任はむしろマネジャーやリーダー側にあると強く思うのは、上記の理由からです。では、マネジャーやリーダー側ができることは具体的に何なのでしょうか?
まず自分が率先してそういう姿勢を示すことです。全ての場面で自分が一番優れていたり物事を知っているという状態は少ないはずです。どこか他人の知恵や見解が優れているところがあると思います。そういうところに、あえて初歩的な質問をしてみたり誰かの教えを請うてみる。そして、もう一つは、そういう行動をとった人をみんなの前で明示的に認める。ちょっとズレた質問や意見を言ってしまった人でも受け止める・讃える、みんなの理解を助けてくれたわけだから。そして可能であれば上手に拾って議論を進行させてあげる。上席の人のそういう態度を見れば、それに追随する人は出てきます。
行動についても同じです。やってみよう、うまく行かなかったら軌道修正してまた新たにチャレンジしてみよう、という姿勢をちょっとしたことでいいから示すこと。そして、そういう行動をとった人をきちんと評価することが大事です。リスクをとって新しいことにチャレンジした人を結果はどうあれ評価するという姿勢がなければ、誰もチャレンジしなくなります。だって、挑戦しなければ失敗しないんだもの。何もしない方が得、と思ってしまっても不思議はないですよね。まとめると:
最後にウェルビーイングの観点から
心理的安全性の確保された組織、ってウェルビーイングの観点からも非常に重要なのではないかと思っています。ここでいうウェルビーイングとは、心や体がポジティブな状態。心の面でいうと「満足」とか「幸福」といったような感情に満たされた状態をいいます。そういう「良き」状態のもとでは、多少のネガティブな事象や感情は乗り越えることができるでしょう。また、そういうノッている時には良いパフォーマンスが発揮できる経験は多くの人が持っていると思います。
マズローの欲求5段階説でも安全の欲求って実は基本的な方から数えて2番目に来ているほど基本的な欲求。身体の安全の方に目が向きがちだけど、精神的に、こういう自分のとった行動への反応としての安全性が確保された状態というのは、思っている以上に基本的なことなのかもしれません。だから、ここが満たされていることはとても大切。
心理的安全性の確保されている状況って、所属員にとってウェルビーイングな状態にいることをサポートしてくれます。そして、ウェルビーイングな状態にあることで、自分らしさが発揮できてパフォーマンスがあがることにもつながる。ひいてはそれが承認欲求や自己実現欲求を満たすことにもつながるわけです。
こうして考えてみると、こんな組織の雰囲気を作りだすことって、もうマネジャー・リーダーにとって最も重要な仕事なんじゃないだろうかと思えて仕方がないのです。
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