水害も乗り越え、肥沃な土壌で育った野菜を味わう田園ダイニング
誰も知らない魅力的な場所が、福島にはある。フードカートと行く「Food Camp!ツアー」の2020年11月29日は、いわき市のファーム白石を訪ね、一日限りの「田園ダイニング」を楽しむツアーでした。
昨年に続いて2度目のツアー。昨年は「危機的状況」でした。
台風19号で、いわき市や「孫の手トラベル」がある郡山市など福島県は甚大な被害に遭いました。台風のすぐ後だったツアーは、中止もやむを得ない状況でした。しかし白石長利さんの「ぜひやりたい」との強い思いから、決行。会場も内容も変更しながら無事開催し、印象的なツアーになりました。1年後となった今回、本来の姿を取り戻し、野菜たちが元気に育つ畑を見られることになりそうです。
今日は、快晴。開放感あふれる、稲刈り後の「田んぼ」がツアー会場です。
白石長利さんは、いわき市小川町で江戸時代から農業を営む白石家の8代目。
2011年の東日本大震災では、福島第一原発からの放射能汚染は免れたものの風評被害に苦しみます。去年の台風では、畑のすぐ先の川から水があふれ、農作物が全滅に近い被害に。
ただし、里芋だけは違いました。代々種継ぎをしてきた、祖父の名前をとった「長兵衛」。震災のときは種芋を土深く埋めていて被害を免れ、水害時は川の水につかりながら、土の中で生き残っていました。昨年は里芋だけで料理を仕立てるしかありませんでした。今年は、自然農法で育てる別の野菜も加わって、また違ったいわきの味わいを体験できそうです。
2グループに分かれて、まずは畑の見学。
同じいわき市小川町で農業を営む、助川智洋さんが説明します。
昨年は、すぐ先に見える夏井川から水があふれてきて30センチも土砂がたまり、キャベツやブロッコリーが全滅したといいます。今年は「土砂の栄養が畑の土に入り、例年より野菜の出来がいい」とのこと。
白石さんの畑はもともと、農薬や化学肥料を使わない「自然農法」にこだわって作っています。このブロッコリーも、土の栄養だけで育つ、みごとな出来です!
助川さんは、今年就農したばかり。親は農家ではなく、実は公務員。農業に興味を持ち、また白石さんの里芋を食べて「おいしくてショックだった」とのきっかけもあり、「TOMOfarm」を立ち上げました。
ここで、「ブロッコリーの葉を取ってきてください」とのミッション…
次の場所へ。ダイニング会場近くで、白石さんと里芋掘り体験です。
どうやって収穫するかというと…
「どん、と落としてください」。
ちょっと荒っぽい…
掘りおこした里芋のかたまりを地面にたたきつけて、たくさんついている子芋を親芋から切り離します。おもしろいように芋が分かれていきます。土と根っこを落とし、袋いっぱいのお土産に。
東日本大震災も経験した白石さんは、力を込めてみなさんに伝えます。「新鮮で安全でおいしいものをつくって、届けられるよう気をつけています」。
「田園ダイニング」の会場に戻ってきました。稲刈り後の時期だからできる、期間限定のぜいたくな場所です。そして昨年は水害で叶わなかった念願の場所…
今までのツアーにはない形のテーブルです。
通常はクロスをひいたテーブルに座るスタイルですが、今回は12月近い時期の寒さも考えて、火を囲んで今までと違った雰囲気になりそうです。
里芋リースを飾って、クリスマスの演出でお出迎え。
今回のシェフは、いわき市植田町の「ダイニングキッチン月海-Ruu-」の今野詠史さん。料理は、食材と対話しながら調理する独自の感性と繊細さが魅力です。黒基調の自前のキッチンカーで登場し、2つの「キッチンカー」を並べての料理作りとなりました。
いよいよランチ開始!
前菜は「味噌漬け長兵衛の窯焼き」
ここで、ブロッコリー畑でとった葉を皿に、食材をのせていきます。
次の肉料理は「麓山高原豚のスモークグリル 冬野菜の走りを添えて 長兵衛のソース」
「目光と長兵衛団子のスープ」
目光は、いわき市の魚に選定されているソウルフード。スープを熱々のまま味わるよう、ポットでサービス。
料理にあわせて、ご当地いわきのドリンクも用意。ワインは「いわきワイナリー」の「甲州オレンジ2018」と「フジノユメ2019」の2種類。特にスモークした肉料理には「フジノユメ2019」があいます。
日本酒では、太平桜酒造の「いわきろまん」がフルーティーで、どのメニューにもあわせやすく、今回の一番人気でした。トマト栽培のワンダーファームのジュースやカクテルも。
「長兵衛といわき葉ネギみそのピッツア」
自分たちで収穫した里芋をシェフが蒸し、最後に自分であぶって食べました。直前に採った野菜をその場で調理して食べる味は新鮮で格別です!ねっとりした食感と甘みが強くて、食べ応えもたっぷり!!
デザートは「長兵衛のシフォンケーキ 長兵衛プリン」。
シェフとのじゃんけん大会で買った人には、マシュマロの特別サービスも。
マシュマロを焼くと、童心に帰ります。
今野シェフは、メニューごとに材料やストーリー、食べ方などをツアー客に伝えます。そして客も、食材に火を入れるなど「参加型」で楽しむ、ライブ感満載の体験になりました。
最後は「軽トラマルシェ」。
トレードカラーの赤が映えます。トラック荷台に積まれた、洪水後の肥沃な土壌で作られたおいしい野菜を、みなさん続々と購入していきました。
田んぼの隣には、新しい大きな農業施設が建設中。来春オープン予定です。野菜の生産だけでなく、多くの人がいわき市小川町に集うべく、考えているとのことです。
今回で10回目を数えた2020年のフードキャンプも、これで終了です。
今回参加の皆様、そして一年これまでご参加くださった皆様、ありがとうございました!
「ファーム白石」と「ダイニングキッチン月海-Ruu-」のサイト:
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