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人間国宝の競演 山本東次郎・友枝昭世 〜粟田口/殺生石女体〜  

2023年5月3日 川崎氏麻生市民会館大ホール

山本東次郎さんの狂言 粟田口。友枝昭世さんのお能 殺生石 女体。馬場あき子さんの解説とお三方のアフタートークもあって毎回贅沢極まりない毎年この季節に開かれる公演。コロナ禍中はご無沙汰してしまったので2019年以来、久しぶりに参りました。

東次郎さんの粟田口

大名を馬鹿にしつつの狂言。能舞台に演者が1人から3人のる。狂言は勿論面白かったんだけれど、空間が面白かった。

粟田口が大名の前に通された時の3人の位置が、これしかないよな!という場所と関係性で、うんうんうん!となる。こういう空間の使い方好き。

最後だまされたと知って初めて舞台上に1人だけになった途端、東次郎さんの空間が大きくなる。舞台中央からは少し手前、上手よりから橋掛かりを振り返った空間ににじむ様々な思い。
驚き、やっぱり?!腹立たしさ、自分にがっかりする気持ち、諦念。そこからいやいや!と粟田口を追いかける姿。

アフタートークでは追いかけるまでの時間配分は演じる時々によるとのこと。今回はそこに至るまでの演じる時間が長くて、やっぱり騙された!と気付いた大名の自分への諦念が前面に出ているように見えた。
太平の世の大名は漢字も読めず、少し自信もなくて、騙されてしまう愛すべき人物像が魅力的。

鎌倉時代から室町時代にかけて武士の文化として発展した能は、江戸時代には武士階級から一般庶民にも愛されるようになって演劇的、エンターテイメントとなっていく。(chatGPT情報。ホント?)

武士の文化で育まれたのに、武士のアイデンティティクライシスとなった江戸時代、大名を滑稽に描く粟田口。シニカルである。

友枝昭世さんの殺生石女体


喜多流の殺生石は女体で居曲のところを舞うとネットで見ていたけれど、昨日は前シテの里の女で居曲でして、まずそこで大喜びです。舞もいいんですが、居曲、大好きなので。

前シテで居曲、後シテで九尾の狐動きと、まぁ贅沢で見応えがあって堪能いたしました。大変楽しゅうございました。大満足です。

玉藻の前がまぁ美しい。ピカーっと発光して、すぅっと背骨から頭の上に抜けて光が上っていくようでした。その時、膝の脇にのせていた手先がすこーし、膝を離れて広げられただけ。
後シテの野干ではフーッ!!!!シャーッッ!!!!と威嚇する猫のよう。こんな動きというよりエネルギーが現れるとは!

あと、こういうお能の演目は初めて観まして。情緒や心情をじっくり描くというよりは、インパクトのある情景が絵画的で、インド、中国、日本と国を乱していたずらする狐といい、大陸的な演目だなぁ、と思いました。こういうジャンルのお能もあるんですね?!知らなかった!

アフタートーク


馬場さんにお年の事は何も言わせませんよ(といった内容だった?)と人間国宝お二人を制する馬場あき子さんあっぱれ。

何せ山本東次郎さんは86歳、友枝昭世さんは83歳、馬場あき子さん95歳!お三方とも軽やか驚きしかない。

開場からのQ&Aで会場によって演じる方は何か違う?と。東次郎さんは、広さや人数も違うので100名いらっしゃれば、100名の方に届くようにと。昭世さんは、演目は考えると。例えばこういう所で井筒はちょっと(会場は納得したような笑も)と。私は井筒は知らないけれど、なるほど、そうなのかと思いました。

来年も観られますように。
あと、今年はありましたが会場で謡本の販売もお願いします。あれがないと、どの場面かわからなくて初心者は楽しみ激減するのです。

関連情報


東次郎さんの本も読みたいです。文庫もあるようです。「新編 狂言のことだまー日本の心 再発見ー」



馬場さんの映画もみたい。

公演概要


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